| 「大学におけるテレビゲーム教育」 |
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| CMU ETC 伊是名宥樹 |
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| 大学でゲーム教育? |
日本ではここ最近、テレビゲームが大学教育の一つとして認識され始めている。昨年、大阪電気通信大学にデジタルゲーム学科が設立されたのを皮切りに、東京大学ではコンテンツ産業の人材育成を目的とした学科が開設される。さらに大学の研究室のプロジェクト単位では、立命館大学のゲームアーカイブプロジェクト、東京大学のゲーム研究プロジェクトが始まり、30年以上の歴史の中で大衆文化として定着してきたテレビゲームが、ようやく学問としての価値を認められ大学教育の一つとして地位を確保し始めたようだ。
一方、米国では一足早くテレビゲーム教育が大学のプログラムとして行われている。ゲーム技術開発・研究はもちろん、3Dモデリングやアニメーション、ゲームデザインやゲームプログラミング等の技術指導、さらに教育・社会・心理学部等ではメディア研究、メディアリテラシー教育と共に社会的・心理的影響を研究している。さらにテレビゲームの社会に対する影響力の強さに着目し、テレビゲームの有効利用を考えるシリアスゲーム(エデュティメントもこの一部に含まれる)という団体も出現し、大学の医療・教育研究機関などと協力し娯楽目的でないゲームの研究・開発も進んでいる。
こうした大学は、ハリウッド映画業界とも関係をもつ米国でゲームソフトウェア売上No1のエレクトロニック・アーツ(EA)やXBOXのマイクロソフトのような大手ゲーム企業の本社が近くにあり、日本のゲーム企業の米国支社が集中する西海岸をはじめとする米国全土に点在している。有名なところでは、西海岸では南カリフォルニア大学(USC)、ワシントン大学、内陸部ではカーネギーメロン大学(CMU)、ジョージア工科大学、ミシガン州立大学、東海岸ではマサチューセッツ工科大学(MIT)、ニューヨーク大学(NYU)があり、ゲーム学科として学位が取得できたり、情報工学部、芸術学部、コンピュータサイエンス学部などのカリキュラムの一つとしてゲーム関連の科目を履修することができる。
(米国のゲームの学べる大学・学校情報は、「ゲーム開発者会議Game Developers Conference(GDC)」を主催しているCMP Game Group が運営している米国最大のテレビゲーム情報サイトGamasutraで「ゲーム・キャリア・ガイド」として大学リストと共に学費、期間が紹介されている。) |
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| 大学で何を学ぶのか |
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| 私の学ぶETCの校舎 |
米国のゲーム学科やデジタルメディア学科等は(他の学部でもそうだが)、学生を呼び込むために講師陣やカリキュラムに趣向を凝らしている。そのため学べる内容は大学によって多種多様で、学生にとって事前に「どんな講師がいるか」「何が学べるか」「どんな設備があるか」等を把握しておくことは大学選択をする上で重要である。
多くの大学で、ゲームデザイン・プログラミングではゲーム業界関係者や大学の研究者、3Dアニメーション等のグラフィックス関係はゲーム・映画業界や大学のコンピューターグラフィックスの研究者などを講師として招いており、最先端の理論や技術とあわせて本場の制作現場の様子も同時に学ぶことができる。大学によっては、各学期終了後に学生が各講師の評価を行いその評価を大学内部のウェブサイトで確認できるので、学生に評判の良い講師を簡単に探すことができる。
カリキュラムに関してもまた大学によって特色がある。詳しい紹介は私の大学を例にとって後ほど紹介することにするとして、ここでは米国のどこの大学でも見られる代表的なカリキュラムであるインターンシップ制度について紹介したい。
インターンシップとは、夏期休暇、あるいは学期中に企業等で勤務して単位取得できる制度で、これを利用して学生は3、4ヶ月間集中してゲーム会社で働くことができる。企業の側でもインターンを受け入れる体制がきちんと整っており、プログラマー志望ならプログラミングを、アーティストならキャラクターデザインやコンセプトデザイン、3Dモデラー・アニメーターならモデリングやアニメーション担当というように、プロジェクトメンバーの一人として企業のインターン担当者の指導の下で責任のある仕事を任されるのである。
こうしたインターン受け入れ先となる米国のゲーム企業は、人材育成に対しても積極的である。もちろん関わったプロジェクトや担当者にもよって対応は様々であるが、大抵の場合、学生一人一人に評価を与え、競争意識を与えてモチベーションを高めるよう努めている。こうした努力は企業に対する評判を高めるだけではなく、情熱のある学生を惹き付けるという効果もある。インターン中に指導した優秀な学生が卒業後戻ってくることにも期待を込めて、人材確保を熱心に行っている。
米国の大学での最もよい点は、やはりインターンシップ制度がしっかりしている点だが、それができるのも大学の授業でしっかり基礎と応用を教え込まれているためである。さらに、カリキュラムの中で学生同士でチームを構成して、学期中にゲームを作成するチームプロジェクトを行う大学もあり、まさに現場で働く場合に最も重要なチームワークを身につける訓練を受けている。このようにインターンシップで実際の現場を体験しつつ、必要な技術を系統立てて基礎から学べることが、大学でゲーム開発の学ぶ良さと言えるのだろう。 |
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| 反対意見と環境の変化 |
テレビゲームを大学のプログラムとして設置することは、ゲーム業界の現場やゲーム開発を学んで大学学位を取得したい学生にとっても、高度な知識と技術をもった優秀な人材を厳選したい企業にとっても、非常にメリットがあるということが、これまでの経緯の中で理解できた。しかし他方で、米国国内でも、ゲーム学科を大学教育として認可させるどころか論争を引き起こすきっかけになることもある。
今から4年前、大学の副専攻課程にコンピュータゲームを取り入れたいと提案したカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)のロバート・ナイデファー助教授は、大学側から激しい反対を受けた。「ゲームやゲームをするという行為は、学術界ではいまだに軽んじられる傾向が強い。いわゆる『高尚な文化vs. 低俗な文化』という論争に陥るのが常で、拒絶されてしまうのだ」(HotWired Japan,2001.1.15)とナディファー助教授はコメントしている。
たしかにテレビゲームと言えば、日本でも米国でも必ず「暴力」「性的描写」などによる青少年への悪影響が取り上げられ、常に「少年犯罪」との関連づけたネガティブな意見が付きまとっている。ナイデファー助教授の提案に対しても、大学側は「ゲームの研究などというものを正式な大学のカリキュラムに加えてしまうと、不純な動機を持つ人々の関心を惹いてしまう危険が高いと思われる。当校が最高レベルの研究を行う大学でありたいと望むなら、この種のカリキュラムは設置すべきではない」という予想通りの回答を出しあっさり却下した。
これに対しナイデファー助教授は、文化の探求及びコミュニケーションの新たな方法を創造したいのであれば、ゲーム独特の芸術性と技術、そしてその普及と消費に対して、より包括的かつ論理的なアプローチをしなくてはいけないと主張を続けた。最終的にはナイデファー助教授の提案は棄却されたが、ゲーム業界からは賛同を得て200万ドル以上(約2億円)もの援助を受けることになった。(HotWired Japan, 2001.1.18)
大衆娯楽であるテレビゲームを、学術的な分野として大学教育に取り入れることは、大学教育が本来もつ目的や理念を考えるとやはり非常に難しい。だが、一昔前まで「おたく文化」だったテレビゲームが驚異的に成長し、米国では映画業界をしのぐ売上を記録し、テレビゲームの持つ文化的魅力は映画同様にあると認めざる得なくなった。
今はすでに、大学に映画学科と並んでゲーム学科があってもおかしくない時代なのだ。そのようなテレビゲームの技術力の高さ、芸術的なすばらしさ、社会的影響力という側面からテレビゲームを捉え研究することは、これから先大学・企業にとっても価値のある内容になるのではないかと思う。 |
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| 今後の課題 |
しかし、ゲームの社会的影響力の強さ、さらにゲーム開発が関わる分野(情報工学、芸術学、社会学、心理学、教育学、文学等)の広さを考えると、学問として体系化することは複雑を極め、一筋縄ではない。だが、基盤整備を目標として各領域の専門家が集結し、すでに各分野で行われたテレビゲームに関する研究をシェアし、情報を交換し合うことでその拡散した情報がまとまり、明確な研究の方向性が得られることは十分に期待できる。実は、ヨーロッパにはすでにそのような情報交換の機会があるうえ、博士課程レベルのゲーム研究を行う大学もあり、ゲーム研究はかなり進んでいるようである。
「デジタルゲーム研究協会Digital Games Research Association(DIGRA)」や「コンピュータゲーム研究国際学会The
International Journal of Computer Games Research」が主催する学会で、研究論文が発表され、異分野の研究者やゲーム業界人の間で活発な交流が行えるような環境が整備されている。
日本では、「東京ゲームショー」や日本国内最大の「CESA Developers Conference(CEDEC)」が行われ、ゲーム開発に関する最新の技術やビジネス情報の交換が活発に行われているが、今年のCEDECには「IGDAアカデミック」と題して、ゲームの学問化の可能性や大学での人材育成の取組みについて議論するセッションが設けられた。さらに、2年前にゲーム学会が設立されたが、日本語のみの国内向けであり、論文発表はまだ行われていないようである。技術研究の発表は、米国と同様に「シミュレーション&ゲーム学会」、「エンターテイメントコンピューティング」というような他分野と結合して行われており、まだまだこれからの分野といえる。
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| GDC2004の様子 |
米国では、研究方面では大学にゲーム学科があるとはいえ、学部レベルであるところがほとんどで、職業訓練中心になる傾向が強く、学術研究を行っている大学は決して多くはない。だが、毎年、世界最大規模の「ゲーム開発者会議Game
Developers Conference(GDC)」や世界最大の見本市「The Electronic Entertainment
Expo(E3)」等が開催され、技術開発に関する情報交換やビジネスの場として、全世界から関連する企業が一堂に集まる機会がある。これらの会合には企業だけでなく大学からの参加者も多く、会議プログラムには大学からの研究者を招待して行われるセッションもあり、ヨーロッパとは違うアプローチで交流が盛んに行われるようになって来ている。 |
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| 終わりに:大学でゲーム教育?−Yes! |
米国では、すでに人材育成としてのテレビゲームに関する教育が、大学教育の一部として、さらに企業の協力を得て熱心に行われている。大学側も、講師陣やカリキュラムに独自の工夫を入れ、学生にとってベストな学習環境を提供し、学生もまた希望のゲーム企業に就職をかけて必死に勉強している。
しかし、それを単なる職業訓練であり学問として扱うには学術の品位に関わると非難する学識者もおり、UCIのナイデファー助教授のような問題は常に起こり続けるであろう。しかし、現代の新たなメディア、文化を分析・理解し、次世代に教え伝えるのであれば、時代を代表する文化となったテレビゲームは最も重要なキーとなるのではないか。
米国で初めてゲーム開発を学んで学位が取得できる大学「デジペン工科大学DigiPen Institute of Technology」が任天堂の協力を得て10年前に設立された。特に宣伝を行わなかったにも関わらず、当初80人の定員に対してなんと12,000人もの応募があった。ちなみに、去年、大阪電気通信大の日本初のデジタルゲーム学科の募集定員48名に対する応募者数は853人であった。
大学でゲーム開発が学べるようになって10年、この人気は現在も継続している。ゲーム学科が設立される大学の数は増加する一方であり、時は熟しているのである。今まさに、大学教育でテレビゲームの技術指導・開発のみでなく、「ゲーム研究」という学術的アプローチで、
30年以上にわたり蓄積された膨大なゲームに関する情報とデータの基盤をつくる時なのである。 |
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| ●レファレンスサイト(2004年9月現在) |
| HotWired Japan (http://hotwired.goo.ne.jp/) 日本語 |
Game Developers Conference(GDC)
(http://www.gdconf.com/index-japan.htm ) 日本語 |
| CMP Game Group (http://www.cmpgame.com/ ) 英語 |
| Gamasutra (http://www.gamasutra.com/ ) 英語 |
| Entertainment Technology Center (http://www.etc.cmu.edu/ ) 英語 |
Digital Games Research Association(DIGRA)
( http://www.digra.org/ ) 英語 |
The International Journal of Computer Games Research
(http://www.gamestudies.org/) 英語 |
Video Game University
(http://www.teachingtools.com/GoFigure/VideoUniversity.htm) 英語 |
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