| 「日本のマンガ・アニメ文化を世界へ」 |
| VIZ Communications Inc. 代表取締役社長 堀淵清治氏インタビュー |
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| 飯干真奈弥 |
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今回は、サンフランシスコを拠点に世界各国へ日本のマンガやアニメを送り出してきたVIZ Communications Inc. の堀淵清治社長にお話を伺うことができた。
VIZ Communications(以下VIZ)は、1986年に小学館の100%出資会社としてスタートし、『Ranma 1/2』、『Pokemon』、『Gundam』そして『Dragon Ball Z』など、日本でも大人気の作品を次々に海外でヒットさせてきた、米国内でもトップ5に入るコミック出版社である。出版事業だけでなく、日本のアニメ・映画の海外配給事業も行っており、1998年より発売を開始した『Pokemon』のホームビデオは、米国でこれまでになんと約2000万本以上の売上を記録しているという。このほかにも『Ranma 1/2』、『銀河鉄道999 (Galaxy Express 999)』『人狼(Jin-Roh)』などの人気作品で、米国ばかりでなく、ヨーロッパ、中近東にもネットワークを広げ、各国にファンを増やし続けてきた。
さらに今年からは新たに集英社の資本も加わり、日本での発行部数350万部という少年マンガ雑誌「週刊少年ジャンプ」の英語版月刊誌「SHONEN JUMP」をいよいよ11月26日に発売開始する。月刊25万部からスタート、3年以内に月刊100万部を目指している。小学館・集英社という、日本最大手出版社2社との提携によって今後ますますの成長が期待されるVIZの堀淵社長に、会社設立当時の状況や、日本のマンガ・アニメの海外流通事情などについて伺った。 |
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| 「日本のマンガなら、きっと海外でも通用すると思った」 |
| 飯干: |
会社設立当時は、たったお二人で事業を始められたと伺っていますが。 |
| 堀淵: |
正確には、僕と今の副社長と、当時すでにグラフィックデザイナーをしていた弟の3人です。その弟を通じて、小学館の相賀社長に直接話を持ちかけたのが始まりです。当時の日本ではちょうどマンガ業界が急成長している時期でしたが、海外市場に日本の作品はまったく出回っていませんでした。僕は出版事業の経験こそありませんでしたが、当時出ていた日本のマンガはほとんど読んでいてそのクオリティの高さも知っていたので、きっと海外でも通用すると思っていました。相賀社長も我々のアイディアにすぐに賛同してくれて出資が決まったわけです。最初の1年間だけは、サンフランシスコ近郊にある出版社と提携して共同出版というかたちで始めたのですが、その間にアメリカでの出版事業のノウハウを会得して、次の年にはもう自分たちだけで事業を進めるようになっていました。 |
| 飯干: |
アメリカでの日本マンガへの反応は如何でしたか。 |
| 堀淵: |
ビギナーズラックと言うべきか、非常に幸運な滑り出しでした。というのも、こちらのコミックというのは普通カラーで印刷されるものなのですが、我々が日本から持ち込んだ日本の“マンガ”はご存知の通りモノクロです。それがアメリカ人のコミック・ファンの目には物珍しく映ったのでしょう。白土三平の『カムイ外伝』を含む3タイトルを出版したのですが、コレクターたちの注目が集まったおかげで、初版はほとんど完売の状態でした。 |
| 飯干: |
宮崎駿の伝説的なマンガ『風の谷のナウシカ』の英語版もVIZから出ていますね。 |
| 堀淵: |
そうです。あれは徳間書店の作品ですが、これもまた幸運なことに、相賀社長はこちらで取り扱う作品をとくに小学館ばかりに限定しなくてもよいといっていただいたので、我々は出版元をそれほど気にせず自由に良い作品を選んで出版することができたわけです。今年全米公開された、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し(Spirited Away)』のピクチャーブックも当社から出ています。また、今後は集英社の作品もより数多く取り扱うことになりますから、これまでにも増してどんどん優れた作品を海外市場へ送り出すとことが可能になると思います。 |
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VIZ Communications Inc.ウェブサイト
( http://www.viz.com/ ) |
| 飯干: |
振り返ってみて、会社にとって大きなブレイクスルーとなった作品はありますか。 |
| 堀淵: |
とくに大きなブレイクスルーがあったわけではなく、徐々に積み重ねてきた結果がすべて今の状況に結びついているという感じですね。日本のアニメも、ある日突然世界に認められるようになったわけじゃない。少しずつ広まり、根強いファンが増えていって、ようやく現在のような認知度まで達したのだと思います。もちろん、例の『Pokemon』ブームがあったときには、猫も杓子も『Pokemon』と名のつくものなら飛ぶように売れるという異常な状況でしたが、あんなことはそうそうないですからね。良い作品を根気強くリリースしていくことが大事なんだと思います。 |
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| 日本アニメの海外流通事情 |
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| 飯干: |
日本にいると、海外でオンエアされているアニメの半分はジャパニメーションらしい、などという不確かな情報が伝わってくることがあります。VIZはこちらのケーブル局やテレビ局などでも日本のアニメを放映されていますが、実際にはどのような感触をお持ちですか。 |
| 堀淵: |
正直なところ、僕はまだまだだと思っています。アメリカのアニメ専門チャンネルで放映される時間枠から単純に計算しても、全体の10分の1程度でしょう。もちろん、以前に比べると日本のアニメがひとつのジャンルとして認識されつつあることは確かです。しかし、量的なことを言えば、いまだに数多くあるチョイスのなかの一つになれるかどうか、という程度だと思います。確かに、宮崎駿や大友克洋、押井守など優れた作家たちの作品に注目しているファンは多いですし、とりわけ宮崎駿のように国際映画祭などで賞を獲得すれば日本でも大々的に報道されるでしょうから、日本のアニメ全体がそのような評価を得ているという印象を与えるのかもしれません。しかし、流通量の点からいえば、まだまだ発展の余地が多く残されていると言えるでしょう。 |
| 飯干: |
それでも、明らかに日本のアニメからヒントを得た、あるいはそのままアイディアを拝借したような作品が、ハリウッドなどで作られていますよね。 |
| 堀淵: |
もちろん、ハリウッドの業界関係者なんかは本当によく日本の作品をチェックしていますよ。うちの会社にも、ときどきハリウッドのプロデューサーや監督などから、作品の権利関係について問い合わせの電話が来ます。話半分な輩も大勢いるので、当社としてはそれほど深く立ち入らないケースが多いですが。でもこれは、業界関係者の間で注目されている、ということではあっても、子供たちを含む一般視聴者が皆そうかといったら違いますからね。まだそこまではいっていないと思います。でも、だからこそ、今後もっと伸びる可能性があると僕自身は感じています。 |
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| 海外でのコンテンツ権利保護にもっと力を注ぐべき |
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| 飯干: |
先ほども話に出たように、日本のコンテンツが海外に出れば、ハリウッドだけではなく、どこの国でもそれに類似した作品が作られるということもあり得ますよね。そういったコンテンツの権利を守るということについてどう思われますか。 |
| 堀淵: |
僕はかねがね、日本のマンガ・アニメ全体の権利保護にもっと力を入れるべきだと思ってきました。もちろん、違法コピーを防止することもそうですが、コンテンツ自体の潜在的な価値を守るという意味でも権利保護は重要だと思います。たとえば、日本でベストセラーになった小説「リング」は、日本の小説原作にしては結構な高額でドリームワークスが映画化権を獲得し、この秋劇場公開されましたが、各国がその諸権利を獲得しにくるようなポテンシャルの高い作品の場合、権利の所在を明確にし、管理しておくことで、その作品の価値は守られます。これと同じように、日本のマンガ・アニメも本来ならば、世界に流通させる際に明確な権利を主張できるように何らかの対策をとるべきなのだと思います。現在、とくにマンガなどはそのままストーリーボードとして別の作品にいつ流用されても不思議ではない状態です。ようやく今年、経済産業省が中心となってコンテンツ流通促進機構が組織されたと聞きましたが、非常に喜ばしいことだと思います。一刻も早く具体的な動きが活発化することを願っています。 |
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堀淵清治(ほりぶち・せいじ)氏 略歴
1952年徳島生まれ。
1975年に早稲田大学法学部卒業後、同年に渡米。
カリフォルニア州バークレイに居を構え、英語学校で勉強後、カリフォルニア州立大学ヘイワード校で文化人類学修士過程を専攻、1年半でドロップアウト。放浪の時期を経て、マーケティング会社を設立。1986年に現在のVIZ Communications, Inc.を創立、上級副社長に就任、1997年に社長就任、現在に至る。
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