| 飯干: |
銀行におられたときは、映画への融資も扱っておられたそうですが、当時、銀行の業務としてはどのくらいの割合を占めていたのでしょうか。 |
| 山田: |
ロサンゼルスのビバリーヒルズ支店にいた頃のことですが、私がいた80年代当時で、映画産業への融資部門は約半分を占めていました。従って、融資の決定権限を持つ支店長や部門長はハリウッド業界へのコネクションが強く、また裏事情にも通じてなければなりません。当然、映画の製作過程についての知識、またヒットしそうな映画への嗅覚や判断力に長けた専門家であることも条件です。融資決定までには、キャストやクルーの実力や評判、またプロデューサーの実績なども綿密に調査するため、ハリウッド業界に関する知識、情報網の広い組織がものをいう世界でしたね。 |
| 飯干: |
融資を頼みにくるのは、やはり資金繰りの大変なインディペンデント・フィルムメーカーが多いのでしょうか。 |
| 山田: |
そうですね。スタジオとの取引もあるにはありますが、ほとんどはインディペンデントでしたね。とはいえ、先ほども言ったように、製作者のバックグラウンドから映画の内容まで、詳しい情報を調べて審査することになるので、結局は、まるきりの新人に金を出すことはほとんどありません。しかし、過去に大きな実績がなかった場合でも、その製作者が業界で後ろ盾となる大物とパイプを持っているか、または責任を負える組織が製作に参加している場合などでは例外もあります。 |
| 飯干: |
では、製作者側に完成保証(注1)を要求する場合としない場合もあるのでしょうか。 |
| 山田: |
他のリソースからの投資や融資の状況などを鑑みた結果、完成保証を要求しない場合もあるが、それはケース・バイ・ケース、半々と見ていいのではないかな。しかし、大ヒットと呼ばれる作品は10本に1〜2本ほどしか生まれないというハリウッドビジネスが、非常にリスキーであることは事実なので、それほど経済的な信頼がない場合は当然完成保証を求められる。それもすべて審査したうえで決定します。 |
| 飯干: |
では、融資開始後の資金管理や進捗管理などはどのように進められるのでしょうか。 |
| 山田: |
そういったことはすべて契約時に取り決めます。大抵の場合、最低でも2週間から4週間ごとに資金の消化状況などを逐一報告することを義務付けます。融資もはじめから全額、資金を提供するわけではありませんから、その報告が滞ったり、契約時の条件が実行されなかったりすれば、途中で融資を取り下げる場合もあります。しかし、映画の製作というのは必ずしも順調に予定通り進むものではないので、その場合は進捗報告のミーティングにおいて、相談の上進めていくのが基本です。 |
| 飯干: |
日本ではまだアメリカのように金融機関から映画産業への融資というのは一般的ではありません。したがって、当然ながらアメリカで機能しているような完成保証制度も成立していないのですが、今後、状況は変わると思われますか? |
| 山田: |
どうでしょうね。日本はいまだに土地などの不動産を担保にする融資が中心ですが、アメリカは売掛金(注2)を担保にして融資を行うのが一般的です。映画の場合も、配給権や収益分配率の優先などを条件に融資を行いますから、まったく映画がヒットしなければまるまる損失、ということだってありえます。したがって、ときには組織に損失補填を求める契約の場合もあります。ハリウッドビジネスはリスキーだとわかっているから、審査もかなり厳しく行われる。従って、不動産を担保にする融資が中心である日本では、まだしばらくは難しいだろうという印象を持っています。まあ、でもこれからは日本の銀行も少しずつ変わってくるかもしれませんけどね。 |