ユーロMANGAレポート(3)
 
 
EJC 西山健二  
 
1.欧州におけるマンガ関連情報、ブームの流れの変化
 日本発マンガ・アニメ・ゲームの欧州での浸透は15年前の第一次ブーム当時からかなり変わった。以前は、アニメのT/V放映があり、そのアニメ関連の商品に市場が広がっていた。当時はDVDも無く、ビデオゲームも現在のような高度な内容ではなく、コミックは日本語のオリジナル本しか販売されておらず、インターネットを使った情報収集も難しかった。
 現在ブームの発端となっているのはマンガ・アニメの専門誌で、その編集については日本在住の契約記者からの情報を元にインターネットを使い、より正確な情報に洗い直し内容も深めて販売を行っている。その内容は、日本の若者生態・マンガ・ジャパンポップス・アニメ・ゲーム・古典文化と幅広くそれらの新規ブームの紹介を行っている。同時に、コミック出版社も仏・独・伊など各国大小取り混ぜて凡そ20社ほどが日本コミックの各国語版を出版している。
又、首都圏・地方都市では第一次ブームのコアのファンが各種の同好会を作り、未熟ながらもインターネットなどで日本からの情報を直接入手し始めている。現在T/V放映は日本のアニメ仕入額の高騰化もあり、かつ初期投資が大きいため専門誌、コミック出版の流れの後に追従して、ヒットしている作品を放映する形となりつつある。 
 
2.フランス専門誌の在日契約記者の実態
 マンガ・アニメ専門誌の日本在住の契約記者は、殆どがフランス人かベルギー人である。
 又、それらの契約記者はかなり流暢に日本語を喋れるようだ(日本語を読める者は全体の40%ほど、書ける者は全体の5%ほど。各専門誌からの聴き取り平均)。
 契約記者の職業は、学生や欧州企業の日本駐在員で、在欧州の時期に日本の何か(文化・武道・ビジネスなど)に興味を抱いて日本語を学んだ後、渡日し趣味と実益を兼ねた業務として契約をしている。職業がアニメ・ゲーム関連の場合は、質の高い情報元になるが、ほとんどはアニメ・ゲーム・マンガとは縁の無い異業種の場合が多い。また、このところ増えてきつつあるのが、在日の国際結婚したフランス人が、旧交関係から契約記者になっている例とのこと。
 フランスの専門誌の内容も単なる情報の羅列ではなく、内容の幅と深さが販売に直接響くほど読者自体も詳しくなっているし、また写真やキャラクターなどの掲載使用許可などの連絡業務も増えている。契約記者情報は、各社の情報ソースの重要な要素であるため、詳細は紹介してもらえないが、日本からの公式な情報ルートがあればそれを基幹に契約記者情報と摺り合わせることによって、誤解のない記事記載が行われるものと考えられる。
フランス人の日本語学習状況について、余談ながらご紹介する。
 欧州の日本語教育機関で規模・内容ともに最高位にあると言われているのが、パリのINALCO国立語学学校である。1793年の産業革命の中、海外への進出戦略を背景に「帝国図書館附属東洋語学校」として創立され、多くの外交官・文化人を輩出した。同校では、西洋以外の地区のロシア・ポーランドなどの東欧・中近東・インド・東南アジア・中国・日本、アフリカ・南米・北極圏言語など殆どの言語をカバーした授業内容で、現在、10学部・80言語の教育が行われている。その中で学生数が圧倒的に多く1言語で1学部を形成しているのは、日本語・中国語・アラブ語・ロシア語の4言語である。
 日本語学部の学生数の推移は、東京オリンピック開催年の1964年までは約100名の学生で、1965年以降の高度経済成長期第二期から500名ほどと急激に増え始め、現在は900名ほどの登録者となっている。登録者の就学傾向は、日本の古典・歴史への興味から就職の有利さや日本でのダイナミックなビジネス興味へ移行し、現在は現代芸術(映画、イラスト、音楽など)への傾倒とマンガ・アニメ・ゲーム等への趣味とビジネスに対する興味が段々と増え、入学の動機は多様化しているようだ。但し、どの時代の入学動機にも底流には欧州文化とは著しく異なる高質な日本古典文化への好奇心・向学心が流れている。
 INALCOの卒業・学士号取得者は毎年100人前後である。同校以外の日本語教育機関は現在、公的機関で宗教関係や大学の言語学部などパリで8箇所ほどある。就学動機はINALCOとほぼ同じような内容と聞く。日仏家族など個人的な学習者を除くと、フランス人で日本語を話す、理解する者はほとんどが上記の教育機関で就学した者達である。学内の、掲示板等もマンガ・アニメなどに関する同好会やアルバイトなども増えている。
 将来の日本との架け橋を担うフランス人がこれらの教育機関に集まっている。この機関を注視し、友好関係を結べば将来的に日本文化のフランスに対する有効な活動基盤の一つが出来るのではと考えられる。
 
3.アングレーム国際BD(マンガ)フェスティバル
  (BD:バンド・デシネ、コミックの総称、特に欧州、アメリカのコミックを意味する)

アングレームの全景
アングレーム市内 アングレーム市内看板
日  程 2004年1月22・23・24・25日(4日間開催)
場  所 アングレーム(フランス西部の街。パリから450km)
入場料 1日9.5ユーロ、3日間パスポート19ユーロ
出展数 200社以上(販売店、出版社、関連業者85%、個人サークル15%)
来場者数 12万人。ドイツ、ベルギー、スペイン、イタリアからも多数来場
概  要 アングレーム市で毎年1月に開催されるマンガフェスティバル。市が主催で1974年以来行われているフランスで最も古いマンガイベント。出展はほぼB.D.(バンド・デシネ仏語圏のマンガ)関連
B.D.フェスティバル会場内
 パリからTGV(フランスの新幹線)で約2時間半、フランス西部に位置するこの街は、小高い丘の上にあり、古い街並みを残した昔ながらの城砦都市である。街の周囲約3.5km、人口約4万6千人。今からちょうど30年前、1974年から始まり、今年で31回目を数えるこのイベントは、アングレーム市が主催し、日本で言えば夏祭りや秋祭りのような形で行われている。
アングレームの駅で降りると、そこから既にお祭りの雰囲気が漂い、街中に入ると、商店街、店のウィンドー、街頭広告など、至る所にフェスティバルのポスターが飾られ、カフェやアトリエはイラストやマンガのギャラリーに早変わりする。街の主だった広場にはブース会場のための仮設テントが設置され、劇場や図書館、市民会館など、街のありとあらゆる建物を使って招待作家の講演会やコンクール、展示会など様々なイベントが行われる。
 出展者は本、フィギュア、ポスター、キャラクターグッズなどの関連商品販売を中心に、個人のイラスト・同人誌サークルから出版社の版権取引ブースまで幅広く、フランスの近隣国からもたくさんの人たちが「マンガ」という一つのテーマの下に集まってくる。
 ただ、このアングレームのフェスティバルで言う「マンガ」は、あくまでもB.D.(バンド・デシネ)が主流で、日本マンガ・アニメはまだ脇役に留まっている。出展者全体の内、日本マンガを扱うのは20〜30%で、半数以上はB.D.関連の業者や店舗、イラストレーターである。パリと比べると、地方では情報量が少なく、参加者も日本マンガに対する知識がそれほど広まっていないのが現状だ。このような状況のため、「コスプレ」や「カラオケ」といったものは行われていない。
 しかし、主要ブースでは大手出版社のいくつもが日本マンガの看板を掲げ、日本マンガ・アニメ専門店も多数出展していた。「去年(2003年)よりも、確実に日本マンガの占める割合は増えてきている」とは実行委員会のスタッフの意見。速度はゆっくりだが、当フェスティバルでも日本マンガの浸透が徐々に始まっているようだ。
 フランス最古の30年の歴史を持つだけあって、単なるマンガイベントとは違い、このフェスティバルにはたくさんの関係者が集まっている。出版物の版権の売買関係者、店舗を探している人、商品を探している人、自分の作品を売り込みたい人、そして、新しい才能を発掘したい人、等々。日本からもマンガ・デザイン学校が視察と作品発表を兼ねて参加するなど、着実に日本マンガの足場を固める活動が徐々にではあるが、始まっているようだ。
 
4.EURO JAPAN COMIC主催の第一回日本行きマンガツアー
 2月20日パリ発、27日東京より戻りの6泊7日ツアーを主催した。参加人数は、女性6名と男性17名の計23名(21〜26歳)。往復航空券と宿泊費のみのツアー内容で、990 EURO(約13万円)の参加費(JAL便・品川プリンスホテル使用)。
 ツアー日程は、自由行動を基本に半日のオプショナルツアーを企画。EJCから仏語を話す日本人を添乗員で同行させ、ホテルにて毎朝1時間のインフォメーションとオプション案内を行った。
21日 13時、成田着。
22日 (オプション)東京ビックサイトの同人誌即売会、ワンダーフェステバル(海洋堂などのフィギュア展示会)、蒲田産業会館でのコスプレフェステバル。
23日 (オプション)原宿(竹下通り、100円ショップ、東郷神社、BOOK OFF)、表参道(キディランド)、渋谷
24日 (オプション)共信印刷(同人誌印刷所)、浅草
25日 (オプション)バンダイミュージアム、秋葉原
26日 自由行動
27日 成田発(パリ行き)
 23名のツアー参加者のうち1名が4度目、1名が1度目で他の21名は初めての日本旅行。
 毎朝のインフォメーションへの問合せは、ショッピングに関する問合せが殆どだったが、鎌倉への行き方・銭湯を紹介してくれとの問合せも多々あった。ただ出発前にかなり調べているらしく、独自に新宿・中野・六本木などのディスコやナイトスポットに行っていた。パリ発の一日前にパスポートの期限切れがわかった者が1名いたりしたが全体としては全員満足な旅行との感想をもらった。
 当方からのアンケートへの平均的回答は
次回に行きたい場所は:
ジブリミュージアム、東京ドーム、X JAPANミュージアム、皇居、京都、奈良、富士山など。
渡日前の日本のイメージと滞在しての違いは:
情報を取っていたのであまり変わらない。東京は小さいと思っていたが、大都市だった。和服を着た人が多いと思っていたが、パリと同じだった。アグレシブで物価は高いと思っていたが、落ち着きがあって物価も高くない等。
日本の良い点は:
日本人は親切で優しく、街や建物が清潔。交通機関が発達している。店が遅くまで営業しているなど。
日本の悪い点は:
英語が通じない。英/仏語表示が少ない。人が多すぎ。交通機関の切符の買い方が難しい。建物の中の暖房が暑すぎなど。
日本食ではどんな物を食べましたか:
寿司、てんぷら、すき焼き、懐石料理など。
パリと比べて東京の物価は:
4名が高い・19名が安いと回答。
東京で幾らぐらい使いましたか:
平均 13万円。(食費+ショッピングを含む)
どんな物を買いましたか:
T-シャツ、服、靴、コミック本、フィギュアー、ぬいぐるみ、DVD、CDミュージック、ゲームソフト、浴衣、袴など
 以上、フランス人の日本と日本マンガ(アニメ)を好きな若者23名の回答。
 日本人は親切で、優しく、街が清潔(特に公共スペースは欧州とは比較にならない)と、言葉が通じなくローマ字表記が少ない。この良悪2点は常に指摘される点で海外から旅行者誘致の際の留意点であると思う。
蒲田コスプレ会場 原宿、竹下通り近く バンダイミュージアム見学入口