フランスでコミック(BD及び日本マンガ)の実技授業を公共教育機関で行っているのは、アングレーム市とストラスブルグ市にある芸術大学の中のコミック学科のみ。他には個人経営の専門学校があり、リヨン、レンヌなどの大型地方都市にあって、全フランスでは6校ある。パリ市内にはコミックの専門学校は無く、パリから40km程南のアントニー市にあるART EN CIEL (アルクアンシエール、「虹」の意)の現地取材を行った。
ART EN CIELの設立は1986年で、個人経営の学校(授業形態は学校と言うよりアトリエのような自由授業形態)、生徒数は600人。教室は地下が120u ほど、1階が30uほどの教室が2つ。他の専門学校も同じような内容のため、同校の詳細を類型例として紹介する。
クラスは、絵画一般(一般用)、イラスト(プロ志向)、マンガ(欧州コミックのBDと日本マンガの混合でプロ志向)の3つに分かれている。講師は全部で11人。マンガを教えているのは3人。マンガ、イラストの講師陣は、美術教師の有資格者であるが、業界で現役で仕事をしている方達に依頼しているという。
絵画クラスは、10〜50歳ぐらいまでと幅が広く、イラスト、マンガは18〜25歳がメイン。マンガクラスの男女比は凡そ半々で、イラストクラスより女性比率が多少は高い。授業は月〜土曜の週6日間、9時〜21時が基本。講師が教室に規定の時間待機しており、その時間内に生徒が適当に来て、1〜2時間自由に描くのを講師が指導し、質問等に答える形態である。
学校の授業要綱としては、(1)趣味のための絵を描く楽しみを理解してもらい、それに沿うような授業をする。(2)芸術学校等の試験やコンクール出展のための準備の授業。(3)プロ(マンガ、イラストクラス)になるための技術、情報を教える授業。以上の3点。
絵画クラスの入学動機は、絵を描くのが好きだったが生活の途中で遠ざかっていたか、描き続けていても技術的に自己不満があり進歩をしたい人などが多い。マンガ、イラストの場合は、プロを目指し、技術の向上を目的で入学する人が多い。生徒は約85%が仏人で、後は在仏の韓国、コロンビア、イタリア、英国、ドイツなど様々。また海外からの留学生はいない。
マンガの主任講師に、日本マンガとBDとの指導の仕方に違いはあるかを聞いたが、「線のタッチは異なるが、描き方の基本は同じなので生徒の希望に沿いながらイラスト描写のように教えている」とのこと。マンガの「本」としてではなく各ページの描写の仕方を教えているようだ。
通常、週2時間授業の場合では、約2年で卒業する。週1時間授業などの場合は約3年で卒業だが、もっと早い生徒もいるし遅い生徒もいる。技術や学習の段階分けは無く、従って途中の進級試験もない。入学2、3年後の卒業の時点で審査があり、卒業証明書が授与される。在学時のマンガ、イラストの作品発表の場としては、4〜5年前よりアングレーム国際BDフェステバルの会場内にブースを確保し、毎年そこで展示しているとのこと。
マンガ、イラストクラスの生徒達は、卒業後、マンガ、アニメ、イラストの業界に職を求めるが、学校としては、イラスト関連の就業市場が大きいため、そちらへの就職を薦めているとのこと。同校の卒業生で、現在BD(欧州コミック)作家として活躍しているのは、NATHALIE
BERR女史、FREDERIC VIGRAUX氏、IVAN GORNEZ MONTERO氏など。又、講師を務めていたSTEM
PATRIKIAN氏も現役で活躍している。
マンガ(BDや日本マンガ)が描けるとしても、業界規模が小さいため就職は難しく、一般の職に就き、その後も継続して描き続け5、6年で第一作品を完成させ、出版社へ作品を持ち込み、そこで出版ができれば幸運なほうで、自費出版などを3、4回繰り返しながら出版社へのアプローチを行い、多少業界で名前を認知されだしてやっと出版社との出版交渉の可能性が出てくるとのこと。
2002年フランス国内のコミック本販売状況(編集注)
SNE(Syndicat Nationale de l'Editionフランス国立出版連合)によれば、2002年フランス国内で2,204タイトルのコミックが発行され、その内の1,494タイトルが新作だった。トータルでは3,120タイトルが販売され、売上は2億3,000万ユーロ(約300億円)。
また、2003年は2,526タイトルのコミックが発行された。因みに、日本の2002年度のマンガ新刊点数は9,829、マンガ・マンガ誌の販売金額は5,230億円。(Europe Multimedia Express、全国出版協会)
階下教室の先生
階下教室掲示板
階下教室
2.Anime Manga Presse社Animeland誌編集長へのインタビュー(2004年4月7日)
欧州最大規模のマンガ・アニメ専門誌で、発行部数は月5.5〜5.8万部。
Yvan West Laurence編集長
Animeland誌
Animelandポスター
仏語版日本アニメ
専門誌の販売流通と販売市場について
フランスでは書籍(本、雑誌)の流通大手はNMPP社とNLPP社の2社あり(日本の東販・日販に近い存在)、この2社のどちらかに委託しないとフランス全土への流通はできない。Anime Manga Presse社はNMPP社と代理店契約を結んでいる。Animelandは、定期購読者に5,000冊を直送(集金も直接行う)、保管用に2、000冊取り置き、残り全部をNMPP社へ引き渡す。NMPP社は各書店やキオスクへ配送、その段階で前回号を引き取って、置いた部数から引き取り部数を差し引いた部数が販売部数としてNMPP社から各店舗へ請求され、その後Anime Manga Presse社へNMPP社の手数料を差し引いた額が支払われる。
パリ市内の日本マンガ専門店は10店舗あまりでフランス中でBD、日本マンガ混合店では約200店舗。市中の小型キオスクでは場所が狭く、専門誌の販売は段々と減っており、現在一番の売れ場所は大型キオスク(例えばRELAY)での販売が殆ど(中、大型キオスクを合わせて店舗数は33,000)。大型店の場合、展示雑誌として数冊を同時提示が可能で購買者の注意を引きやすく、立地条件も良く集客力はマンガ関連店とは比較にならない。マンガ関連店の場合まだまだ認知度が低く、店舗場所を知られてなかったり立地条件が悪い場合が多い。
出版内容の法的規制
総ての出版物は国の機関へ届ける必要がある。出版物には総て出版会社のライセンス番号と流通会社名が記されてないと違法となる。ただセックスや暴力物に対する特別の規制というのは無い。但し消費者が裁判所へ訴えた場合、出廷し対応しないといけない。Anime Manga Presse社も内容が子供に不適当であると数度訴えられたが勝訴している。