「法」と「市場戦略」の専門家が、コンテンツビジネスの未来を展望。

 3月4日(木)、東京青山の機械産業記念館「TEPIA」にて“コンテンツベンチャープラザセミナー2004[春]”が開催されました。
 国内ブロードバンドネットワークの急速な普及にともない、今また新たな局面を迎えたコンテンツビジネス。本セミナーでは「知的財産権」「マーケティング」それぞれに精通した第一線の専門家が招かれ、「法」と「市場戦略」の視点からコンテンツビジネスの今後が模索されました。

◇講演:1
「ブロードバンド時代の発想力」
〜マーケティングの視点からみたコンテンツ市場の行方〜
■ブロードバンド時代ならではのニーズ
村山 涼一氏
(マーケティングプランナー)
 これまで出版、通信、広告、教育などさまざまな分野の商品企画、マーケティングに携わってきた村山涼一氏(マーケティングプランナー)は、独自の市場戦略的観点から、ブロードバンドネットワークのもたらす未来の社会像を次のように展望しました。
「アニメーション『攻殻機動隊』の主人公は自分の頭の後ろに端子を差し込み、身体自体をネットに接続しています。荒唐無稽なようですが、ここ10年ほどの通信環境の変化を見ていると決してあり得ない話ではない。たとえばそういうことを前提に今後のコンテンツビジネスを考えることも必要ではないでしょうか」
 こう前置きしたうえで村山氏は、「あらゆるデータベースはスタンドアローンで存在する必然性がなくなりつつある」と述べ、ブロードバンド時代のコンテンツを考えるには、時間にも場所にも拘束されないストレスフリーの視点が欠かせないと強調。同時に情報の流通量が増せば増すほど、人体でいうところの肝臓機能、すなわち情報のカオスを制御する機能へのニーズが高まるだろうと指摘しました。

■コード変換という発想力
 有象無象のコンテンツがひしめくブロードバンド環境下において、コンテンツ企画にはどういった発想力が求められるのか。村山氏は「主流傍流法」「気づき法」「レトリック発想法」などいくつかの方法論を、具体的事例に基づきながら解説。優れた商品企画には見た目だけでなく必ず意味(消費者にとってのベネフィット)があるということ、また既知的な日常に飽きた現代人の心を揺さぶるにはズレの創出やメタファー(隠喩)といったコード変換が欠かせないなど、時代の気分に応じた柔軟な視点を持つことの重要性を強調しました。
 加えて氏は、「仮想敵を定めてそこからシェアを奪い取ろうという考え方では、流動的な市場を捉えることはできない」としたうえで、特定の競争者を設定せず新たな価値を生み出そうという「新価値創造戦略」について言及。その一例としてカシオやユニクロの展開したブランド戦略を挙げ、「大切なのは『購買者がいったい何を比較しているのか』を考えること。価格設定ひとつにしても、高価の反対=安価ではなく“お値打ち品”だといった視点、つまり価値の差別化こそが重要だ」と述べました。


◇講演:2
「デジタル時代の知的財産権はどこに向かうのか?」
〜“知”の保護と享受をめぐる米国の選択〜
■DMCAとフェアユースをめぐって

内藤 篤氏
(青山総合法律事務所・弁護士)

 映像や音楽作品など著作物のデジタル化が進むなかで、アメリカは日本に先行して知的財産権に関する新たな課題に直面してきました。エンターテイメントおよびコミュニケーション分野の権利問題に詳しい内藤篤氏(青山総合法律事務所・弁護士)は、「『振れ』に『揺れ』がともなうように、知的財産権が保護されれば利用や享受が阻害される。ただこうしたことは善悪の問題ではなく、そのバランスをいかに見極めるかが論点となる」と述べ、アメリカにおける近年の事例、判例をもとに知的財産権の現状を解説しました。
 1998年にアメリカで制定されたDMCA(デジタル・ミレニアム・コピーライト・アクト)は昨今の著作権議論の震源地だとされています。内藤氏は、「反保護派の要旨はいわゆる表現の自由であり、米国著作権法特有の『フェアユース条項』をよりどころとするもの」と説明する一方で、「しかし裁判所は必ずしもフェアユースを文字通りには捉えていない」と述べ、DVDコピー用ソフトウェアの制作会社がハリウッドメジャースタジオに敗訴した経緯として《問題はテクノロジーそのものであって、著作物がどう使われるかではない》という判決文の一部を紹介しました。

■21世紀・知的財産権の主戦場
 また内藤氏は、RIAA(アメリカレコード協会)が音楽データの交換ソフトをネット上に流通させたとして大学生を訴えた裁判「ナップスター事件」についても触れ、「21世紀の知的財産権をめぐる争いは、こうした素人マーケットが主戦場になる。ナップスターのケースはその先駆けとして素人マーケットプレイスの管理者が叩かれたもの」と指摘。米国著作権法には日本では認められている《私的複製はOK》という条文がないことを説明したうえで、同ケースはソニーVCR判決(1984=ソニー勝訴)以来の象徴的な私的複製事件だと述べました。
 このほか講演では、韓国メーカーの販売するMP3レコーダー絡みの裁判や著作権保護期間延長法(通称ミッキーマウス保護法)など、アメリカ国内で繰り広げられる知的財産権論争がさまざまな角度から紹介されました。
 まとめとして内藤氏は、「総じて日本の、特に活字メディア系の方々は、この種の争いに対して危惧や不満を述べこそすれ、表現の担い手として堂々と意見を言う人が少ない。結果的に負けたナップスターが表現の自由を掲げて堂々とやっていたのを見ると、国内メディアも、根拠のない曖昧な規制に対しては毅然とした態度をとってもいいのではないか」と述べ、知的財産権をめぐるアメリカのダイナミズムそのものにも学ぶべきところはあるとの考えを示しました。

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