「2004年秋」コンテンツビジネス活性化推進シンポジウムを開催

 
 
 2004年10月19日 東京国際フォーライムにて二つのシンポジウムを開催いたしました。
当日は立ち見も出る盛況でしたのでここに再録いたします。
このシンポジウムは日本自転車振興会の補助を受けて開催いたしました。
 
〜シンポジウム1:概略〜
「変貌するコンテンツマーケット/才能・資金はここにつぎ込め」
先達がひしめく放送・出版・パッケージなどの既存メディア。新興のコンテンツ制作者にとって作品を売る場所は狭き門です。
最初からワンソース・マルチユースを前提としたコンテンツ制作で新たなビジネスを展開してはどうか?
制作と発表のためのプラットフォームも用意してパネリストが呼びかけます。モデレーターはコンテンツベンチャー出会いのキューピッド清水計宏さんです。
 
〜シンポジウム2:概略〜
「コンテンツベンチャーに聞く/これまでいろいろありました」
コンテンツ制作者にとって制作資金の調達は重要課題です。
創りたい作品のために会社を興し、新たな資金集めスキームを作った代表取締役。
創りたい作品のために優秀なプロデューサーとコンビを組んで、おカネは全て任せてしまったクリエイター。
対照的な二人のクリエイターの生き方を、おなじみアスキーの福岡さんが楽しくひもといてくれます。
 
 
シンポジウム1
変貌するコンテンツビジネス 〜才能・資金はここにつぎ込め!〜
 
パネリスト
川上陽介(かわかみ・ようすけ) ((株)セルシス代表取締役)
1960年岡山県生まれ。1991年に株式会社セルシスを設立代表取締役に就任。
アニメ・マンガのデジタル化を推進し、国内シェア9割以上を占める業務用アニメ制作支援ソフト「RETAS!PRO」、世界初のマンガ制作ソフト「ComicStudio」を生み出す。
一方で「RETAS!PRO」の簡易版「RETAS!LITE Debut」を超低価格で発売、「ComicStudio」で制作されたマンガの投稿・閲覧サイト「COMIC ASITO」を開設するなど、新人が世に出るチャンスも提供している。
近年ではケータイビジネスにも進出し、マンガ専用閲覧ソフト「ComicSurfing」はNTT DoCoMoやauで採用されている。
 
高橋芳明(たかはし・よしあき)
((株)小学館マルチメディア局ブロードバンド編集室副編集長)
小学館入社後、週刊ポスト、GORO、テレパル、ポタで、20年以上雑誌編集の経験を積む。一貫して“柳の下のドジョウは狙わない”オリジナリティのある企画実現に情熱を注ぐ。
出版社の既存資産、キャラクターや雑誌ブランドなどのデジタル化は他セクションに任せ、ネットを中心とした新メディアで、編集者、クリエイターが次に何を創造できるのか、を模索中。
現在、15秒映像/μmovies(マイクロムービーズ)をふんだんに使用する毎日更新WEBマガジン『ネットグラフィティ』、60秒で一話完結する漫画原作の『ショートカッツ実写版』全20話などをネット、携帯端末などあらゆるディスプレイメディアで展開中。
NPO法人国際創造者連盟会員。
 
モデレーター
清水計宏(しみず かずひろ) ((有)清水メディア戦略研究所代表取締役)
1953年静岡県生まれ。大阪外国語大学卒業後、77年日本楽器製造株式会社(現ヤマハ株式会社)入社。82年同社退職後、テレコミュニケーション、コンピュータ関係の専門紙、雑誌の編集者・記者を経て、89年映像新聞社入社。90年に映像新聞編集長、92年取締役・編集長。
2001年10月映像新聞社を退社し独立。同年12月に(有)清水メディア戦略研究所を設立。同時に、ITビジネス担当者の人脈拡大と世界ネットワークを目指すITビジネス交流ネットワークを発足。月例で実施している企業交流セミナー「BUSINESSHINT!」では、ネットベンチャー、コンテンツベンチャーが相互に交流し、新事業促進の場になり、数多くのビジネスが生まれている。
海外企業約350社を訪問・取材し、国内外のネットサービス、デジタルコンテンツ関連の調査・研究、コンサルティングを続ける。国内外のデジタルコンテンツ産業の動向に詳しい。
主な著書として「マルチメディアへの挑戦」(ソフトバンク刊)、「世界のコンピュータマップ'93/'94/'95」(各年巻)がある。
 
 
清水: 今日は変貌するコンテンツビジネスということで、セルシスの川上さん、小学館の高橋さんとアーティストやクリエイターの皆さんに刺激剤になったりヒントになる情報をご提供しようと考えております。
その前にちょっと簡単に私の使命をご紹介させていただきます。
 いままでコンテンツとかユーティリティなどは企業からコンシューマーとかユーザーに向けていわばダウンストリームの形で出てきたのですけれども、アーティストやクリエイターが創るコンテンツは個人の資質・資産なのです。そういうものをアップストリームのネットワークの力で吸い上げて、例えば会社を離れていても様々な才能なり資産なり資質なりが有効活用されるようなネットワーク社会を創りたい。そこで個人が幸福の条件である自由と評価を得られなおかつそこで一定の対価を得られるようにする。というのが私の使命です。
 そんな一環で「BUSINESS HINT!」という、企業の担当者によるプレゼンテーションと交流によってビジネスチャンスを探る集まりを月例で行っております。ここからは年間億単位の驚くほどの新しいビジネスが生まれております。皆様どうぞお越しください。
 ワイヤレス・モバイル・セキュリティの3つは時代のキーワードです。こうしたものに今までのコンテンツとか才能が流れているのですが、それぞれのプラットフォームに特化した才能やコンテンツや新しいユーティリティなりアプリケーションなりが必要じゃないかと思います。
 そこでこの場には新しいプラットフォーム、新しい技術、新しい時代に合わせたコンテンツおよびコンテンツつくりをサポートしていらっしゃる方にお越しいただいたわけです。
 インターネットが爆発的に普及しYahooなどのサービスが現れて、個人が積極的にモノに関与する時代。顧客は単なるコンシューマーではなくてプロフェッショナルとあわせたようなプロシューマーになっていった。その中でコンテンツつくりの方法もちょっと変わってきたのです。今まではハードウエアとソフトウエアさえ車の両輪で儲ければよかったのですけれども、それにサービスというものが非常に重要な要素になってきた。実例をあげればiPodの成功はiPodのハードウエアとiTunesというソフトとともにiTunes Music Storeというサービスのお陰で成り立っているわけです。そういうことで今までのコンテンツ流通と違う局面が現れてきた。こうした時代にいかに対応して行くかということで、お二人に語っていただこうと思います。
 まずはAu、FOMAで新しく漫画が見られるようになりました。そのビューワーを開発なさいま
したセルシスの川上さんにその辺の経緯をお話し願います。
川上: セルシスの川上と申します。先ず簡単に弊社の紹介をさせてください。
 弊社は設立が1991年ですからもう14年ぐらい前です。一番初めに手がけた仕事というのがアニメ業界をデジタル化しようという仕事でした。我々が開発を始めた頃のアニメの制作はセルロイドにカーボン紙で鉛筆線を写し取って、その裏から絵の具を塗って、そのセル画を暗室の中で背景に重ねてフィルムで一枚ずつ撮影するというように、非常にアナログな作業をやられていました。それをコンピュータを使ってデジタル化することで効率化できるし、表現の幅も広げられるだろうということでレタスプロというソフトを開発しました。現在、テレビアニメ制作はほぼ100%デジタルに替わっています。その中で弊社のレタスプロは日本のデファクトスタンダードとしてご利用いただいております。
 今、アニメ業界のデジタル化で一生懸命やっていますのはスタイロスというソフトです。アニメ制作の工程は作画と仕上げの二つに分かれています。仕上げの工程はほぼ100%デジタル化されましたが作画の工程はまだまだアナログで鉛筆で書く作業が残っています。
 そこもコンピュータでやれるようにしようというのがこのスタイロスですが、やっぱり、コンピュータでやるとしても手でタブレットを使って書くという作業自体はそんなに効率化できる作業ではないのです。
 しかし、一旦ベクトルのデータにできることによって従来のアニメの出口であるフィルムやヴィデオ以外の新しいメディアに持って行きやすいデータになるということで使われるようになってまいりました。
 通常コンピュータの中で画像を扱う場合、細かい桝目に分けてそこに色をひとつずつ入れて桝目の色の組み合わせで絵の情報を憶えるのですが、ベクトルの情報というのはどちらかというと方程式の要領で画像の情報を憶えます。そうすることで、いろんな解像度でもクオリティを損なわないで自由に表示できるというのがベクトルの特長ですね。
 このアニメ業界のデジタル化に次いで、2001年に発売したのがコミックスタジオという漫画業界をデジタル化しようというソフトです。
 漫画業界もアニメ同様、コンテンツとしては非常に大きなマーケットですが、漫画の出口としては当然、紙。雑誌とか単行本。通常の本はたいていDTPでコンピュータを使って制作されているのですが、漫画に関しては全くアナログのままです。
 コミックスタジオの非常に大きな特長はコンピュータの中でベクトルデータで漫画を描くというやり方です。従来は紙に描かれたものをビットマップ化して取り込んで印刷していました。そうすると、例えばグレーは黒・白・黒・白という具合に桝目が並んで50%のグレーに見えるのです。ところが、サイズを変更したりして、その黒・白・黒・白という桝目の数がちょっと変わるとモアレという変な模様が出たり、ひとつずつ間引いて小さくしようとした場合、白・黒・白・黒じゃなくて黒・黒・黒・黒と並んでしまってべたっとつぶれてしまいます。コミックスタジオはそんな問題が出ないようにして、必要に応じて最適な状況でマルチユースが出来る形でデータを持つフォーマットにしています。どんな解像度でも最適な形で線も表現できるというソフトです。
 で、この解像度が変わってもどこにでも持っていけるという特徴を活かしたのが携帯電話です。携帯電話は3Gになり大きく変化しました。
 表示の解像度が一気に2倍になり、液晶のQVGA化で非常に精細な表現が出来るようになりました。さらに、CPUもメモリーも、ついこの間のパソコンと同じスペックがここに入っています。
で、最後は通信スピード。これが3Gになって非常に早くなりました。同時にパケット料金が定額になって使い放題になった。
 こういうことからリッチなコンテンツを携帯電話に持って行けるようになりました。
このコミックサーフィンというビューワーは先程のコミックスタジオのフォーマットのデータをそのままの形で携帯に持ってくることが出来ます。
 去年の11月からauさんの公式のビューワーということでご採用いただきました。今、いろんな出版社さんのコンテンツがauで読めるようになっています。
 FOMAの場合もコミックサーフィンを使ったサービスが立ち上がってきています。
清水: ありがとうございました。次は、小学館の高橋さん。よろしくお願いします。
高橋: おはようございます。先程ご紹介いただいたようにボクはずっと雑誌の編集をやってきました。で、μムービーズ(マイクロムービーズ)っていうプロジェクトを始めました。今日はそのお話しを中心にしたいと思います。
 μムービーズ自体は何か具体的な商品というよりもプロジェクト全体の名前だと考えていただくとわかりやすいと思います。
ボクは小学館の人間ですが、今は雑誌ではなくて、ネットワークで仕事をしています。そこで他の人が作ったものを展開するビジネスではなく、自分たちが創るコンテンツって何なのだろうということを考えています。
 で、何をやればいいのか。短い映像だったらなにかできるのじゃないかと思いました。理想はハリーポッターの世界です。魔法カードも動くし、掛けてある絵も動く。それから預言者新聞は動く写真でできている。あれをデジタルの世界なら表現できるじゃないかっていう発想です。
 
(スクリーンに「μムービーズ」のホームページ投影)
 
 今、μムービーズってこれだけいっぱいあります。たとえば、「おはよう娘・オヤスミGirl」これは、ただ女の子がおはようって言うだけの15秒の映像です。
 しかし、ここには映像制作のノウハウがいっぱい詰まってるんです。
 こんな感じの映像が既に500本くらいあります。今のやり方で行くと毎月100本ずつ加わって行くことになります。配信先はあらゆるメディアを想定しています。
 よく、どういうメディアでやるのですか、どういう課金システムなのですか?というふうに聞かれるのですけれども、一番大切なのはあらゆるメディアに出せる権利関係処理をしているというのがポイントで、μmoviesは、それをクリアしているからどんなメディアにも、どんなビジネスモデルでも出せるのです。
 まだまだ決定的な配信方法がないので、μムービーズ.jp(http://www.micromovies.jp/)というベース基地を持っています。ここで課金、顧客管理の仕組みを持ちながら、今まで我々がマスの雑誌を作ってきたノウハウで、μムービーズの映像を束ねていくとこんな面白いことができるということを提案しながらショールームのように出しています。
 その中にWebマガジンの『netGRAFFITI』というブランドがあります。これは毎日更新しているWebマガジンです。それから「ショートカッツ」ちょっと見ていただきますけれどもワンショット・シネマという、漫画原作で一話が60秒の、超短いムービーです。
 
(「ショートカッツ」上映)
 
 これが、小学館のビッグコミックスピリッツでΠ(パイ)っていう人気漫画を連載している古屋兎丸先生の「ショートカッツ」という名作を原作にした映像です。このサイトでももちろん売っているのですけれども、皆さんご存じの通りネット課金というのは難しいです。これだけでは制作費が全部出せるほどにはまだ売れません。
 「おはよう娘」たちは毎日1人ずつ更新されているので、1ヶ月に30人集まります。そういうものを含めてμムービーズはどんどん増えているのですけれど、こういう形でやって行くと、例えばこのサイトでまとめても見せられるし、これを携帯コンテンツにすれば毎日違う女の子がおはようと言ってくれる。将来、独身男性の家にネットワーク家電のディスプレイが付いた冷蔵庫があるとすると、毎日違う女の子が、あるいはお気に入りの女の子がおはようって言ってくれる冷蔵庫ができるかもしれません。
 ボクらは冷蔵庫や携帯電話をつくりませんが、そこに提供して行くコンテンツ、使い勝手のいいコンテンツを提供していくのです。
 
(「花火」スクリーンに打ち上げ花火の映像)
 
 45発あります。一発一発撮っているのですが、この一本一本がμムービーズです。
 
(スクリーンに「鐘」の映像。ごぉ〜んと鳴る)
 
 これは芝の増上寺です。増上寺のは学業に効く鐘としています。八王子の宝生寺は商売繁盛に効く鐘です。商売に効く鐘と恋愛に効く鐘と学業、平和、開運に効く鐘。これはスクリーンセイバー、携帯もWebでも提供しています。年末にかけて注目されているのはB to Bです。企業のインセンティブに使われたりしています。
 これらはそろそろ採算点に届くかなという状況です。花火のようにハイビジョンでお金をかけて制作したものがそこまでゆくというのは結構すごいなと思っています。コンテンツにはお金を払わないっていう状況の中でどうやって稼いで行くかという仕組みがμムービーズの全体のプロジェクトなのです。
 これをいっしょに作ろうというクリエイターの方。15秒っていう制限はありますけどいっしょになって売れるものを探して行きましょう。ここに参加してくださる方ももちろん、これを企業として採用していただける方とかキャリアとして流していただける方とかも探しています。
清水: ありがとうございました。
 今日はこうした大きなディスプレイで見ていますけど、一方でモバイルの数インチのディスプレイがありますね。ディスプレイの大きさによって見る心理、見る立場、見る密度も変わってきます。今はどちらかというとモバイルということで親密度の高いプラットフォームが増えつつあるのですが、こうした新しいプラットフォームができて、新しい経済ができる。そうすると新しい人材とかクリエイターが必要なのです。
 セルシスさんはそこにコミックビューワーを出されたのですけどこういうものを出されることによって、新しいクリエイターの発掘にどんな形で貢献できるのでしょうか?
川上: コミックスタジオエンタープライズというコミックスタジオのフォーマットをオーサリングしたり既存の紙原稿をコミックスタジオのフォーマットに変えるソフトがあります。これは業務用途として80万円くらいするのですが、今度発売するコミックスタジオver3.0ではユーザーの皆様がコミックスタジオエンタープライズの機能を自由にお使いいただけるという環境を作ろうとしています。
 これで、弊社が用意するFOMA・Au等のサイトに自由にコミックスタジオで作ったコンテンツをUPしていただくことができる。いろんな読者の方に公開することができる。携帯上で漫画を中心にしたコンテンツを自由に作って配信をして、自由に実験をしてもらえたらと言う意味をこめてそういうサービスを始めようと思うのです。
 今、我々が配信している漫画は、既に紙原稿になっているものを二次利用しているのがほとんどです。特に携帯に向けて作られたわけではないので読み辛かったり、携帯の持っている表示の特長ですとか、携帯メディアならではの漫画ってのにはなかなかなっていません。
 それで、今後この携帯電話ベースでの漫画の見せ方はいろんなものがあるだろう。いろんな形でいろんな方に環境を提供して実験を含めて色々な活動をできる場を提供しよう。そういう環境を作ってゆこうと思っています。
清水: そこが漫画家の登竜門になることもあるということですね。
川上: コミックマーケットという個人が同人誌を自分で作って売るっていう非常に大きなマーケットが日本にあります。で、同人誌の市場からメジャーな市場に出て行かれたり、同人誌の市場の中で出版社とか編集者の方が探されているというのも聞いています。
 そういう意味で、デジタルのコミケ的な自由に実験できる場をご用意して、しっかりとしたプロジェクトなりスタッフなりお金が取れる仕掛けなりがうまくつながってゆけば、デジタルの新しい漫画作家さんが生まれてくるのじゃないかなと思います。
清水: 高橋さん、先程のμムービーズなりショートカッツですね。そういう新しいクリエイターや監督さんとかとの出会いもあったと思うのですが、そのへん、そういう人の出会いとかそういったことはいかがですか。
高橋: まず、作りたがっている作家の方って、たくさんいると思うのですね。
 で、デジタルの世界では作れちゃうのですね。今、川上さんがご紹介されたようなツールも充実してきて作れてしまう。あるいは、Webもフリーのサービスや川上さんの提供するようなサービスのようにただでマスに流せる。作れてしまうのでなかなか作者たちが従来の流通コンテンツに参加してこない。
 それと、間に立つコミックスの編集者がデジタルの世界、ネットワークの世界に非常に冷たいですね。
 冷たいのはなぜかっていうと、今はまだ儲からないから、売れないから。従来の流れというのはすごくしっかりできています。コミックスがあって、単行本で出て、それがTVドラマ化したり映画化したり。これでひとつのソリューションができている。そういう既存のメディアがある以上、逆にプロはそれを目指してしまうところが、ちょっとしんどいかな。それで、ボクが今、皆さんにお願いしたり声を掛けているのは、今ある才能を今のメディアで発揮してそこで金を稼いで行こうよ。、それで次の作品を作って行こうよ、という仕組みを構築したいということですね。
清水 今はちょうど胎動期みたいなものですが、ワンソースマルチユースの時代に合わせたコンテンツの作り方で皆さんにアドバイスできるようなことはありませんか、川上さん。
川上: そうですね、解像度によらずいろんなメディアにクオリティをキープしたまま持って行ける。アニメですと、先程の弊社のスタイロスというソフトを使っていただければテレビにも劇場にも持って行けますしフラッシュにも落とせます。
 漫画の場合にも紙に描いたものをデジタルに落とし込むってのはできるのですけれども、それぞれの解像度に落とし込んで行くにはそれぞれ毎回作業が必要で非常に手間がかかります。
 そういう意味で漫画の場合、コミックスタジオでいっぺん作っていただければいろんなメディアに持っていくことができる。なんだかコマーシャルみたいになってしまいましたが、デジタルで作るにしても、解像度に依存しないフォーマットで作っておくということはアドバイスとしてあるのかなと思います。
清水: ハリウッド関係者が言うには、映画というのは水と同じで山の頂上から流した方がビジネスはうまくいく。また、その水もなるべく純度の高いものの方が良い。とにかく、頂上から流せばあとは自然に重力で落ちてくる。これはハリウッドの論理でありますけれども、超一流のものを作っておけばとにかく下に落ちる。ま、これもこれで正論であるはずです。しかし、実際には初めから超一流のものは無いわけですね。下から上に上がってくるような作り方。私はアップストリームのやりかたって言うのですけど。そういう下から上に上がってくるような仕組みが必要じゃないかと思うのです。
 そこでですね、高橋さん、クリエイターなり作家なり、あとはプロデューサーとしての高橋さんを駆り立てているものは何かと言う、ちょっと内面的な話ですけど、お伺いしたいのですけれども。
高橋 ボクらが一番楽しいのは、さっきのショートカッツを見ている皆さんの顔を見ているのがすごく楽しいのですね。笑っていたり、ニヤニヤっていう顔していたりする。で、笑ってない人もいらっしゃるわけですよ。もしかしたら寝ている人もいるかもしれない。そうすると、じゃあ、あの人に向けて次に何を出せばいいのか。今日笑わなかった人を笑わせたいし、笑ってくれた人にはもっと次に期待してくれるものを作ってゆきたい。それが一番のモチベーションですね。
清水: 高橋さんの作品をこの会場の200インチのスクリーンでぽんと見せられると、何じゃこれは?という感じがすると思うのです。でも、ディスプレイを替えてみたり場を変えてみたりするとぜんぜん違って見えるのですね。
 新しいプラットフォームというのはまた、新しい見せ方とか、見る場所というものが結びつきがあるわけで、そこには新しいコンテンツとそれを創るクリエイターが必要です。そういうことに対して、日本のコンテンツを作っている大きな会社はクリエイターを発見する目がまだ無いのじゃないかなと思っています。
ですから、アップストリームの流れがもっと強くなればといいと思うのです。

 ここで締めのお話しをさせていただきます。デジタルの力。既存のものをフォーマット変換したりして生まれ変わらせたり、あるいは崩壊させたりする力があるのですが、その中でキーワードが3つあるのです。
 スケールフリー。大きさとか量とか、マーケットの大きさと関係なくなるということです。今までは市場というものがあって、その水準より上のものを作らなきゃいけなかったのですが、ネットの力であんまり市場を気にしなくても、オークションのようにだんだん上に上がっていけば良いということで、非常にスケールフリーな状態になっている。逆にいうと、どでかい市場から小さな市場までがスケーラブルにつながっている。もうひとつはそれらがシームレスに見えます。既存の業界が壊れたり、また再生して行くその中で新しい楽しみ方、モデルが生まれます。今までにあるものを単なるフォーマット変換しただけではなかなか市場が見つからないし、前の市場のごく一部しか取れない。
 先程言いましたipodの成功はiTuneMusicStoreの成功でもあります。
 何か新しいコンテンツマーケットを作る上では、ハードとかソフトも大事なのですがそれを提供するビジネスモデル、サービスモデルというものが非常に重要な時代になっております。
 調査研究の長い活動のなかで、これがコンテンツビジネスのキーワードだというものをお教えします。
実際には大変ハードルの高いキーワードですけども。

・Critical Mass(必要最小量・数)
・Revenue Share(収益分配)
・Editorial View Poin(t 編集的視点)
・Scarcely Mode(l 出し惜しみ)
・Alliance/Affiliate(提携)
・Niche(特定目的に特化)

 こうしたキーワードを頭に入れてお入れいただけますとなにかしらの参考になると思います。
 手の中に入るモニターで見るコンテンツと、全員みんなで大型モニターで見るものではおのずとコンテンツが違います。そういうところにあわせたコンテンツが必要ですし、そういうところにあわせたクリエイターが必要だと思います。
 今回はまだ、生まれたての会社もこの東京コンテンツマーケットの会場にはたくさんいらっしゃいます。そのなかで、千里の馬を見抜ける目をもっていただいて、ぜひ新しいビジネスチャンスを作っていただければと思います。
 高橋さん川上さん、どうもありがとうございました。
 
 
シンポジウム2
コンテンツベンチャーに聞く 〜これまでいろいろありました〜
 
●パネリスト
栢孝文(かや・たかふみ)
(シグナルトーク・コーポレーション 代表取締役 ゲームプランナー)
1975年大阪府豊中市生まれ。大阪市立大学大学院工学研究科情報工学専攻 卒業。
在学中に合資会社イーツー設立。
卒業後(株)セガ・エンタープライゼス、(株)ソニックチーム、(株)ソニーコンピュータエンタティメントにてゲームのプランニング、ディレクションや携帯電話プロジェクトを手がける。
2002年11月シグナルトーク・コーポレーション設立。代表取締役。
ネットワーク麻雀ゲーム「Maru-Jan」制作にあたり、作品ごとに資金を集め利益を配分するプロジェクトファイナンススキームを構築。公的機関・金融機関・一般企業から個人にいたるまで約800人に面談し資金を調達した。起業にあたっては、本社を米国に置き、会社運営に伴う諸手続きも一から自らの手で行うなど知恵と行動力と企業家精神にあふれている。
 
星健太(ほし・けんた) (映像作家)
1972年横浜市生まれ。長男。
DTVによる、音楽と映像を完全なまでにシンクロさせたミュージッククリップを制作し、各方面で高い評価を受ける。作品集「回路100KB」が、第13回マルチメディアグランプリ1998新しい才能の部で「金の翼賞」を受賞する。
自らの創作活動に比重を置きつつも、独特のインパクトのある映像表現でTVCMを始め、あらゆるジャンルの映像に活躍の場を拡げている。
株式会社アナロジカル取締役であるが、制作に専念。過去に勤務していた代理店時代の先輩が社長を務める。
 
モデレーター
福岡俊弘(ふくおか・としひろ)
((株)アスキー 取締役COO 週刊アスキー編集主幹)
1957年生まれ。岡山県出身。早稲田大学商学部卒業後、広告制作会社などを経て、1989年、(株)アスキー入社。
パソコン雑誌「アイコン」の創刊に携わり、1993年から同誌編集長。
1996年デジタルカルチャー誌「ケイプエックス」、入門者向けパソコン誌「アンドゥー」を創刊。
1997年「週刊アスキー」編集長に就任。
TBSラジオ『デジ虫』のパーソナリティー、『森本毅郎のスタンバイ』コメンテーターを務めるなど、デジタル業界の文化人としても活動の幅が広い。
デジタルハリウッド非常勤講師。
 
 
福岡: 週刊アスキー元編集長の福岡です。
私がやっている雑誌というものはコンテンツではないのですね、情報を加工した媒体であって、そこには編集という行為が存在するだけなのですが、今日のパネラーのお二人はまさしくコンテンツを生み出している方々です。
今日のお題のコンテンツベンチャーというのはなんかオカネが無いという響きがあります。そこで、今日のパネルは私なりに解釈させていただき、「クリエイティブと金儲け」という非常に俗なテーマで一時間ほどお付き合いいただきたいと思います。
かつてバッハやモーツアルトなどの音楽家は王室や宮廷のスポンサードを受けていました。演劇の世界ではいわゆる勧進興行という役者とか演出家に負担がかからないような仕組みがあって、映画においてはご存知のようにハリウッドに代表される巨大なシステムがあります。これはいずれもお金を集めて次のものを作るためにお金を投下させてくれるという非常に効率的な仕組みなのです。
ところが日本においては長い間クリエイティブとお金の問題というのはちょっと違う状況でした。制作者からはこのような動きが「商業主義的である」と批判される時期があった。「武士は食わねど高楊枝」みたいなね。まずはディスカッションの前にお二人からプレゼンテーションを受けたいと思います。
 栢: シグナルトークの栢です。ゲーム業界で長く働いているのですが、最近ゲーム業界がやばいなと思っております。特に2〜3年前のイメージとしてはこのままゲーム業界は無くなってしまうのではないかと思うぐらい売上がどんどん落ち込んでしまい、ピンチだなあと。
 原因として、続編主義というか同じものばっかり作る。そして、お客さんが飽きる。ゲームが売れない。売れないから売れそうなものを作るしかない。で続編ばっかり作る。というダメなループにはまり込んでしまっている。開発費が高くなってきて、今は大きなものでは50億円くらいかかる。もう自社だけでは開発費を負担できない。だから売れそうなものだけ作りましょうってことになったのですが、それでほんとにいいの?と。で、自分で会社を作ったのです。
 結論から行きますと、株式会社の仕組みそのものがコンテンツ制作には向いていないのじゃないか、プロジェクトファイナンスの形だとうまく回るのではないかという仮説を立ててチャレンジをやっています。これはプロジェクトごとに資金を集め、儲けを投資家とスタッフで分配しようというものです。ゲームが儲かっても会社、シグナルトークは全く儲からない仕組みになっています。会社は世に出るためのブランドであったり枠組みであったりの単なる箱でしかない。本当は会社もいらないくらいなのです。プロジェクトだけがあるような状態が理想なのですけれども、日本の場合そういうわけにもいきませんので、会社は作りました。
 ただ、本当に箱でしかなくて、この言い方が一番わかりやすいと思うのですが今回のプロジェクトファイナンスには5000万円くらいのお金を集めているのですけれども、会社は資本金100ドルですのでおよそ1万円ですね。会社には1万円しかなくて、プロジェクトに5000万円あるような状態で運営しています。
福岡: 日本には本社は無いんですよね。
 栢: そうですアメリカに本社を置きまして日本に登記するかたちです。
 面倒な話はこのへんにしておきまして、実際に何を作ったのか。「Maru-Jan」という麻雀ゲームを第一弾で自社ブランド出しました。シグナルトークプレゼンツというのが第一の特徴です。
 
(スクリーン上に「Maru-Jan」の画面)
 
 麻雀ゲームって世の中に山のようにあるわけですが、私自身が麻雀好きということもあって、見た目を含めて、究極と言われるものを作ってみようじゃないかと考えました。
 見た目もそうなのですけれど、キーボードのキーのひとつひとつが牌に対応していまして、手触りみたいなものも楽しめるようになっています。あとは、人と人が遊んでいる感覚を大事にしようと、くだらないことですけど牌を強く捨てたり弱く捨てたりもできるようにしています。無駄なようですけれども、こういう機能をきちっといれることによって人と人がやっている感じを出そうとしているのです。見た目の部分とか光と影の部分とかも自前のエンジンで作っています。
福岡: 麻雀牌、ものすごくリアルですよね。
 栢: これは写真のように見えますけれどもデザイナーが一個一個手書きしたものです。
 星: テクスチャーも手書きしたのですか。すごいですね。
福岡: 点棒の音もリアルですね。
 栢: そうですね。音もしっかり表現していこうということで、点棒の音だけでも30種類くらいあります。
福岡: ファイナンスなんですけれども、何社くらいからお申し出があったんですか。
 栢: 一番初めは本当に誰も出してくれなくて貧乏な時代が一年くらい続いたのですけど。そのあと20社くらいの個人投資家さんであったり、法人さんだったりから出資いただいたのです。
福岡: 5000万円ですよね。栢さん今おいくつですか?29歳。会社作られたのが2年前ですから27歳の時のお金集めってことですよね。ぼくが27歳の頃はマルイのカードでキャッシングは10万円が限度だった。27歳でよく5000万っていう金額が。
 栢: よっぽどコネがあったのかってよく言われるのですけれど、そうではなく誰に言ったら出資してくれるかっていうことがわからなくて、いろんな交流会から始まって、いわゆる個人投資家さんなど本当にいろんな方、1年間で800人くらいにお会いしました。
 出資していただけたケースってのはわらしべ長者じゃないですけど10人目くらいのご紹介の果てです。誰かにプレゼンテーションする。その方が「栢くんが言っていることは面白い、でも今うちの会社じゃ出せないね。でもあの人を紹介するよ」と。このパターンですね
福岡: なるほどねえ。
 栢: わらしべ長者のずうっと藁の気持ちですね。
福岡: その結実がね。
 栢: そういうことで4月に発売できましてやっとビジネスベースにも乗りました。
福岡: 続いて星さんのプレゼンテーション。本日は大変邪悪な映像を持って来ていただいたということで。
 星: ぼくは一応株式会社の取締役をやってるって事にはなっているのですけど、経営は全部人任せにしまっていて自分はオカネには全くタッチしていないので、こういうところに来ていいのかってのがあるのですけど。ぼくが映像を作り始めたのは10年位前ですね。短編のショートムービーみたいなのを手がけていたのですけれども。98年に週刊アスキーの「アートで食えるか?」という連載をやっていたのです。
福岡: アートでは食えないですよね。で、貧乏なクリエイターがいるんでちょっといじってみようかって、そんな連載でした。
 星: 実際アートでは難しいのですが、まあエンターティメントで食っていってるっていう感じですね。今はCMですとかミュージックビデオとか番組・映像全般的に手がけているのですけど。まずぼくの作風を知ってもらうということで、ちょっと古いものからオリジナル作品ダイジェストを…。
 
(「回路100KB」上映)
 
 これが第13回マルチメディアグランプリ1998新しい才能の部で「金の翼賞」をいただいたものです。これが評価されたっていうのがぼくはちょっと不思議でした。
福岡: 今思うと審査員もよく思い切りましたね。
 
(「業」上映)
 
 星: これは全編実写の作品なのですけど、うちの親父が、父が主演男優としてお坊さんの格好で出ているのです。
福岡: あれはおとうさんですか。おとうさんお坊さんなんですか?
 星: お坊さんではないのですけど、お坊さん役として息子の願いを聞いたということで、空撮もありの秋葉原上空です。
福岡: おとうさん大変ですね。ちゃんと育てないとこうなるんだって。
 
(「イッヒェンと.世界一愛らしい妹ウッヒェン」・「Yong-Pack」・「カラーバー」上映)
 
 星: ま、こういう感じですね。
なので、なんとなくオーラで繋がるかもしれないんですけど、これで金にはならない。まあ、ライフワークとして作っている。
福岡: 続いてCM集。
 星: そうですね。活動を続けてようやく5、6年ぐらい前からCM作ってみないかという勇気あるクライアントさんが現れ始めまして、でいろいろとCMを作らしてもらっているのですけど、まあ近い作風といえば作風…
福岡: あのオリジナルを見てCMを作らないかとお誘いがあったんですよね。どういうクライアントさんなんでしょうかねえ。
 星: まあなんか「変わったことやりたい」って言う…。
 
(宝島社CM黒丸シリーズ「花火篇」上映)
 
福岡: 宝島さんならわかるな。
 
(UCCブラック無糖「スタッフロール篇」上映)
 
 星: これはタレントを出さない。パッケージだけでCMできないかっていう発想です。
 
(UCCブラック無糖「サークル篇」上映)
 
 これもそうなのですけど。これはシリーズで、もう5年目くらいになります。
福岡: やっと仕事をしてるってのがわかりましたね。
 
(ロッテキシリトールガム+2ピンクミント「わたしのどこが好き?篇」上映)
 
 星: これはもう深キョンに会いたかったんですよ。
福岡: そんだけ?
 星: そう。それだけなんです。浜辺で走らせてみたかったんです。
 
(ハドソン天外魔境ディザーCM「JIPNAG篇」・ボボボーボ・ボーボボ奥義87.5爆裂鼻毛真拳「毛がボーボー篇」上映)
 
 これなんかは「回路100KB」でやっていることです。
福岡: だんだんはまりますねえ。
 
(ハドソン ボボボーボ・ボーボボ商品3タイトル「ノーズアクション篇」上映)
 
 星: これももう言いたい事は鼻毛だけです。好評発毛中。自由にやらせていただいています。
福岡: ありがとうございました。
 早速ここからディスカッションを進めさせていただきます。栢さん先ほど、1年で800人に会われたということですけど、1日に換算すると3人ぐらいに会っているのですよね。
 栢: 多いときはほんとに1日20人とかお会いしたりとか、会わない日もありますので平均すると3人ぐらいに会ってます。
福岡: でも、最初からそんなに結果が出るもんじゃないですよね。
 栢: 単純に5000万円集めなきゃっていうそれだけだったのです。
今の星さんの映像を拝見していると、こういった見るものがあれば、スポンサー探しが容易になるツールとしていいなと思いました。
福岡: じゃあ栢さん。最初は企画書を作って持って回ったんですね。
 栢: そうですね、A4、20枚くらいの事業計画書を元に。その頃は、紙しかないわけですからほんとに詐欺みたいなものですよね。それで儲かりますからお金出してくださいと言っても、「なに言うてるんです?」みたいなものです。
福岡: A4、20枚で5000万集められるのですからすごいですよね。
 栢: 実際に最初の1000万くらいまでは本当に大変だったのです。「50万円ぐらいだったら出してもいいよ」ってな人が、だんだん増えてきて、合計1000万ぐらい集まったところで、ちょっとだけですが今のゲームに近い映像が出来ました。その段階であと4000万が急に集まりましたので、見た目というか、映像によるプレゼンツールが非常に重要だなあと思いました。
福岡: お二人にお聞きしたいのですけれど、企画の時の基本的スタンスってどの辺においておられるのですか?お金のスタンスは?
 栢: 自分が作りたいものはものすごくたくさんあるのですけれど、その中に商業的にはこれは無理だろうっていうのが当然入っていまして、そのバランスですね。
 商業的なフィールドと自分のクリエイティブを発揮する部分の重なり具合といいますか、重なるポイントはほんとに針の穴みたいなものでして、そこをさがして行くのが大変。
 星: ぼくの場合、企画だったら「今ぼくがやりたいのはこれです」ってかたちで。そこから出して行きますね。で、心配してくれる人がいまして、そのかたが商品に寄せて行く。ブレーキをかけてくれている。
福岡: その人が全部マネジメントも…
 星: そうですね。ウチの会社の代表なのですけど。彼との出会いはそれこそ10年以上前なのですけど。
福岡: それは何でしょう、宮崎駿さんに対する鈴木さんみたいな…
 星: なれたらいいですね。それを本当に核にしようとしているのですけど。
福岡: いい人見つけましたね。なかなかそういうプロデューサーみたいな人が根付かないというか、いないことが日本のクリエイティブの問題だという風に言われていますね。
 栢: ゲーム業界でも開発の現場にいれば自然とディレクターになって、偉くなってプロデューサーになっていく人もいるのですけれど、働いている場所がずっと開発の中だけの人の場合、外とのバランスが取れてなかったりするのです。
 資金集めから最後のビジネスになるところまでの絵を書ける力はゲーム業界の開発室で仕事をしている限り身につかない。
福岡: どうなのですか星さん。プロデューサーというかマネジメントやっているかた。まず、プロデューサーになりたいってかたがいない。
 星: そうですね。作るほうが楽しいっていうイメージがあるのですよね。でも実際はプロデューサーも相当楽しい面がある。どの映像でも最後はプロデューサーが決められる。やっぱりお金を持ってきているし、ディレクターには現場の権利しかない。最終的な編集の権利とかはプロデューサーが。
福岡: さっきCM見たけど、どっから見ても星さんが全面展開しているっていう風に見えますよ。
 星: あれはプロデューサーがブレーキを踏まなかったパターン。
福岡: 踏まないとああなる。
 星: ここは敢えて生かしておけ、みたいな。
福岡: いいプロデューサーだね。それはね。珍しいですよね。
 星: そういう人と出会いがあったからいいものの…。まあ、いっしょに育って行きましょうという事で。ぼくはディレクター。
福岡: そのプロデューサーのモチベーションってどこにあるのでしょう?
 星: やっぱり最後は映画を作ろうってのが。
福岡: 大エンターティメント作品。星とならできるんじゃないか。まさか“伴!”って言いませんよね。
 
福岡: ヒロ・ヤマガタさんっていう有名な方がいらっしゃって、その作品は皆さんも思い浮かべることができると思うのですが、ご本人に聞いてみると「僕はあんなことはやりたくない。でもあれは儲かるからやっている」一方で、それで稼いだオカネで南の国で大きなクリスタルを作ろうということをやってらっしゃる。
 そこでね、クリエイターが自らのクリエイティブのために稼ぐってのは、クリエイティブでは無い仕事だってあると思うのですが。これどうなのでしょうね?不幸せなのでしょうかね。それともハッピーなのでしょうかね?
 栢: クリエイティブは内容とかディティールに表れると思いますし、商業的なものとは両立可能だと思っています。実際、今手がけている作品もクリエイティブな部分と、ちゃんと儲かりますよと言う部分とが両立している。これで次の作品にもおカネをつぎ込めるし、また、スタッフのモチベーションにもつながる。別にお金のために働いているわけではないのですが、ゲームがヒットしてマンションが買えて奥さんと喜んだりとかそういう面も重要だと思ってます。
福岡: 先ほど、1年で800人に会われて、ちゃんと5000万円集めたということを聞くと、甘くは無いけれども日本のファイナンスはそれほど捨てたものでは無いぞと思いましたね。
 栢: 君はがんばっているみたいなので、まあ応援するよ」というような、日本人的ファイナンスと言ったら変ですけれども、そういう面も多かったと思います。それは初めてだからそういうことになるのですが、ちゃんと仕組みとして認知されていけばと思います。私の理想形はそこにありまして、お金が集まったものを作るということです。おカネが集まるということは事業性があると判断されたということですから。さっき星さんがおっしゃったけど、一番やりたいものを企画書で出しておく。そこにお金が集まって。集まらなかったものは、お金が無いから作れないという形でリスクヘッジしつつ、創りたいものをつくり、なおかつ儲かったら「スタッフには配分多いですよ」ということであれば独立したいなって言う人も増えてくると思うのです。
福岡: やっぱり才能に投資するって言うことですよね。おそらく出資する側からすると、才能に出資するという仕組みがもっとあればと思うのですけどね。今はプロデューサーの腕力であったり、栢さんの自身の腕力であったりするのですけどそれが何か仕組みとして、インフラとしてあればもうちょっと日本のコンテンツシーンは変わるのではないかなと思ったりするのですけどね。
 栢: そうですね、仕組みとしてやられているところも1、2社あるのですが。もっと増えてこないかと。いちいち私のようにやっているとすごく効率が悪いですよね。その会社に行けばそういうことを一通りやってもらえるところがあれば制作に専念できます。シグナルトークでもそういうことを今後やろうと思っていまして、クリエイターさんも企画書を持ちこんできています。私たちがパイプになってプロジェクトファイナンスを他にも立ち上げようと考えています。
福岡: 星さんいかがですか? ファイナンスというかお金集めというか…
 星: あ、そう、そうですね。
福岡: あんまり考えてないでしょ? 聞いてました? 今の話。
 星: すいませんほんとにその辺は任していて。すいません。
福岡: なるほどね。
 星: すいません。ほんとに。
 
福岡: 最後におふたりからこの先のご予定などを。まずは星さんから。
 星: これから長い尺の映画とかを手がけていきたいと思っています。来年ぐらいからモロモロのプロジェクトをスタートさせたいなと思っています。今日は名前だけでも覚えてほしいなと。
福岡: いいのですか。お金集めなくていいのですか?
 星: そうそう、この星の映画が見たいと思われる方はぜひ後で名刺交換させていただきたい。
福岡: それでは栢さん。
 栢: アイデアはあるけどお金が無いクリエイターが、新しいものを作って、自分の名前で世に出て、ちゃんとしたモノ作りを、夢を持ってやれるような仕組みを作っていきたいなと。そのためのひとつの手段がプロジェクトファイナンスです。
 私自身は平和をテーマにしたものを作って行きたいと思っています。昔作ったチューチューロケットというゲーム。アメリカと日本をオンラインで結んで、そこで夜な夜な大人も子供も混じってチャットやったりしているのですよ。「サンキュー」とか「勝ったねえ」とか言いながら。その時ふと思ったのです。「アメリカとは50年前本気で殺し合いしていたのに」。そう考えた時、実はすごいことだなと思った。いわゆるコミュニケーションツールとして外国の人とコミュニケーションが取れる状態ですね。今中国とか北朝鮮とかいろんな問題がありますけど圧倒的にコミュニケーション不足だと思っています。娯楽って、映画でも音楽でも何でもいいのですけど、コミュニケーションのきっかけになると思っているのです。ゲーム、特にオンラインゲームは密なコミュニケーションが取れるようになっていると思います。そういったものをきっかけにして私はゲームで戦争が防げると本気で思っています。そういったことをチャレンジするような作品をやっていきたいと思っています。
福岡: お時間もきたようなのでこのへんでまとめさせていただきます。お金の問題の決着のつけ方っていうのは、お二人それぞれのやり方、星さんは明らかにひと任せっていうのがよくわかったのですが、そのプロデューサーを見つけて口説いているのがたいしたものだと思っています。
 お金の問題というのはコンテンツ制作に携わる以上は避けて通れないと思うのですが、その方法としては、プロデューサーを見つける。あるいは自力で稼ぐ。商業的なフィールドで勝負する。色々あるのですけど、おそらくそれぞれに問題点があって、プロデューサーの部分は人材の不足ですね。これはデジタルハリウッドさんがクリエイターの養成講座とかをやってらっしゃいますが、そういった形でこれは教育問題におきかえられるのかなあと。自力で稼ぐってのはちょっとエレガントさには欠けるのですがきっと独立生産者としてはこのスタイルもこの先ありなのだろう、そういうフィールドで暮らせるだろう。で、商業的フィールドで勝負するってのはきっとマーケティングとクリエイティブのバランスですよね。さっき栢さんがおっしゃった。この折り合いみたいな部分。これをどんなふうにこの先やっていくのかなあと。
 せっかくですからアスキーから出た本を紹介させていただきます。「2010年コンテンツ産業に必要な8つの要件d-commerce宣言」日本工学アカデミー・日本学術会議編(ASCII BOOKS)この中で安田先生という東大の先生ですが、インターネットや携帯などのネットワークインフラをベースとしたコンテンツビジネスの新しいモデルがこの先必ず登場するだろう、と予見されています。今はお金を出してコンテンツを買うというオンデマンドのモデルくらいしかないのですけれども、それ以外のいくつかのコンテンツとコンテンツクリエイターのビジネスモデルが登場するのだということを予見されています。
 おそらく21世紀のコンテンツビジネスというのは多分、今その緒についたばかりだと思うのです。これからどんなコンテンツのビジネスモデルが登場するのか。ぼくはおそらく栢さんや星さんなどのようにクリエイターのバリューがあがってゆくことで、そこで何か新しい価値が生まれてお金の問題が解決してゆくのかなあってディスカッションを通じて感じました。
 そんなわけでこれからのコンテンツシーンにぜひご期待いただきたいと思います。

 

   
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