|
小糸課長 : 私が役所に入ったのが、1985年、昭和60年です。もうかれこれ20年になります。最初に携わったのが、石炭政策です。石炭計画課に配属されました。当時は、まだ炭坑が国内で、11ありました。今は、殆ど1かゼロくらいになっていると思います。当時、横ばいで推移してきた石炭産業を、いかに構造改革して、ダウンサイズしていくか、という仕事を、最初にやらせてもらいました。当時はまだ今流行の構造改革という言葉がなかった時代だったのですが、その走りのような先駆的な仕事を経験できたというのが大変印象に残っています。今はそうした仕事の方が多いかもしれませんが。
角田専務 : 今のコンテンツ産業の先駆的な所とは対極にあるお仕事をおやりになったのですね。お仕事のお話をお伺いしましたけれど、何か、ご趣味とか、最近おもしろいことがあったとか、ございませんでしょうか。
小糸課長 : コンテンツ課に来て、映画を見る機会などは非常に増えました。もちろん仕事の一環ですが。今までは、子供と、ハリーポッターやアニメなどを見るくらいでした。もうちょっと一緒に家族で映画に行ける機会を増やさないといけないかもしれません。
角田専務 : 課長がコンテンツ課においでになる前に、コンテンツは、割と世間の話題にもなってましたし、経済産業省の中の柱の1つということで、話題になっているところでもあったわけですが、来られる前と、来られた後の、印象の違いとか、何か感じられたことが、あれば、お聞かせ願いたいのですが。
小糸課長 : 華やかな業界であり、経済産業省の中でも、人の羨むような仕事だと言われました。もちろんそういう面もありますが、やはり実際に担当してみると、業界の構造的な問題などかなり解決の難しい課題も多いですね。そういう意味で奥の深さを感じています。あとは、コンテンツとかコンテンツ産業がもつ意味合いが、単に、産業が持つ経済的な効果だけでなく、非常に幅広く文化面、特に海外展開するときの他国の日本に対する見方ですとか、平たい言葉で言うと、最近、ソフトパワーと呼ばれるわけですが、そうした波及効果の大きさやポテンシャルの大きさを感じています。
角田専務 : 確かフランスの若い世代が、日本のことが好きだとか、日本のコスプレ文化を真似るとか、という人たちが増えてきて、日本を分かってもらうために、特に若い世代には、コンテンツというのは有効であるのだと、私自身も遅まきながら感じたことがございます。こんなことに通じるのですね。
小糸課長 : 海外で日本語を勉強するモテイベーションとして、日本語のマンガが読みたいとか、日本のアニメが原語で見たいとか、そういう動機で日本語を勉強し始めるというのは、我々もよく念頭におかなければなりません。まさにソフトパワーの表れだと思います。日本に対する彼らの見方とか、彼らの憧れとか、そういうものに繋がっていくコンテンツの付加価値を大事にしないといけないと思います。
角田専務 : 国というものをどう認めてもらうか、という手段かもしれませんね。そういう中、昨年、私自身、印象に残っていますが、経済産業省の方も、国際的な活動を多く行われました。アジアコンテンツフォーラムが大臣の主催、リーダーシップのもとで開かれましたし、日中韓のフォーラムとか、そういった意味で国際化を大いに加速されると。こういうことも、国のリーダーシップのもと行われましたし、また、コンテンツ産業についての振興策というのでしょうか、コンテンツ産業をもっと伸ばしていこうと、こういう議論が、内閣、関係各省というところで行われていますけれど、そういった高まりの中で、新しい年になりまして、こんなことをやろうと思っているとか、というような抱負がございましたらお聞かせいただきたいのですが。
小糸課長 : アジアコンテンツ産業セミナーの目的は、コンテンツ産業の国際化をいかに加速推進していくかということです。これは、非常に重要なテーマで、やはり、国際化が進まないと、今の日本のコンテンツ産業のパイというのは、増えていきません。諸外国の日本に対する見方、それをいかに良くし、国際協調に結びつけるかも大事な視点です。そういう意味で、セミナーのはじめての開催、特にアジア各国の閣僚級で会議が出来たことは、非常に画期的です。もちろん、欧米での展開や、ハリウッドに食い込んでいくのも大切なテーマです。ただ、アジアのこれからの成長市場をどう取りに行くのかというのは緊急に取り組むべき大きな課題です。今後毎年10%を超える伸びがアジアのコンテンツマーケットについて予測されています。そういう展開をしていく上での最初の枠組が出来てきたという点で、意味のある会議であったのではないかと思います。次は実質的にマーケットを日本が取りに行くフェーズに入っていかなければならないわけです。日本のコンテンツの評価が高いこと自体は諸外国からも理解されてきているのですが、その評価の高さをマーケットに繋げていくかというところが、経済産業省の仕事でもあります。そこをDCAJとタッグを組んで、やっていかなければならないと思います。この4,5年は、いわばコンテンツ振興第1期みたいな段階で、かなり武器弾薬も揃ってきたので、これを今後いかに使って、実質的な成長に繋げていくかというところを考えるのが、次のフェーズです。
角田専務 : 新年早々でございますが、政府の予算原案が固まった中、お話しいただける範囲で、新しい目玉とか、こんなことをトライしてみようとかいったメッセージなど、予算につきましてもご紹介いただけないでしょうか。
小糸課長 : 緊縮財政で、非常に厳しい折ではあるのですが、コンテンツ政策に係わる一般会計の予算というのは、前年度を上回る伸びを確保してます。特に、今もお話しが出た国際展開のための予算が重要です。先ほどの、アジアコンテンツ産業セミナーの共同声明において、第一番目に「国際共同制作の推進」があげられています。昨年の東京国際映画祭のオープニング作品は「単騎、千里を走る」という日中合作、クロージングが「力道山」、これは日韓合作ですね。アジアにおけるコンテンツの国際共同制作の機運が、生まれつつある状況です。より効率的に、マーケットを取りに行くという答えの一つが、国際共同制作です。このための海外の映画祭において、共同制作のためのワークショップを開催するための新規予算を今回2億円計上いたしました。アジア、欧米含めて、何カ所かでワークショップを開催して、実際の国際ビジネスに繋がっていくような、そういう取り組みをしたいと思っています。そのときのプレーヤーとして、若手の独立系のプロデューサーが、積極的に参加できるような仕組みを考えていきたいと思っています。あとは、次回で3回目になりますが、東京国際映画祭にコンテンツマーケットを併設しています。これを、今までの問題点も踏まえて、パワーアップした形でやっていく。幸い、昨年の第2回目は、第1回目を上回る非常に大きな規模で開催が出来ましたし、映画祭自体のにぎわいも大きく貢献しました。あとは、人材育成です。これが、やはり、中期的に見ても重要なテーマです。今、日本が誇れるのは、人材です。VIPO(映像産業振興機構)とも連携をしながら、人材対策を充実させていきます。
また、DCAJの協力も得て、経団連と一緒に、コンテンツポータルサイトを立ち上げて、国内の利用者や制作者に活用してもらう。海外からも、どこにアクセスしたらいいのかが分かるプラットフォームがありませんので、そういうものをしっかり構築していくのも、来年度の重点施策の一つです。
角田専務 : 私どもの名前も挙げていただきましたけれど、いろいろな関係機関とタイアップしながら、施策を有効に展開していらっしゃるというお話しですね。最後の方になるのですけれど、私ども、コンテンツ産業へ、政府の方からも、非常に頑張ってやれと、非常に有望な産業だし、世のため人のためにもなるし、日本の国の紹介という役割も持っている、ということで、認知をいただいて、みんな元気で行っていると思いますが、今後の活動、ビジネスをするに当たっての、メッセージとか、サジェスチョンみたいなものを、一言いただけると助かります。また、併せて、私たちの協会の活動についての助言とか苦言とか、何かそのようなものをいただければと。いかがでございましょうか。
小糸課長 : そうですね。今、日本の産業というのは、いろいろな意味で、自分でリスクを取りながら、新しい分野に展開をしていかないと、なかなか将来の活路が開けてこない。コンテンツ産業についても、例外ではないと思います。ブロードバンドへの対応とか、国際化への対応も、今まで余り日本のメディア、制作者は積極的ではなかったです。いろいろな意味で、海外でビジネスをやるのは、難しい面もあります。海賊版とか、権利処理の問題、いろいろな難しい問題があると思います。そういう分野に、積極的にリスクを取ってチャレンジをしていただくことが、今求められていることだと思います。元々、コンテンツ産業というのは、国の支援がそれほどなくても、そこそこのステータスがあるし、世界的な評価を受けていました。そういう意味では、韓国などで国が全面的に後押しをしながらやっている、というのと比べると、随分、成熟の度合いも進んでいると思います。圧倒的に高いポテンシャルや、多くの蓄積をお持ちだと思います。そうしたものを、有効に生かしながら、新しい分野に、どんどん出て行っていただきたいと思います。こうした後押しを我々やDCAJがうまく進め、産業界のみなさんと連携をしていきたいと思います。特に若いクリエイターのみなさんが、出来るだけ元気がでるようにしていきたい。先ほども言いましたが、最後は、人材が一番重要です。若い方達に、いろいろチャンスがでて、人材の育成に繋がるような、そういう施策を我々も意識して、やっていく必要があります。
角田専務 : 個人的な考えなんですけど、日本語を話すところが、日本のコンテンツ産業のバリヤになっているのではないか、という気持ちが若干あるですが、そのあたりは、どういう気合いで乗り越えていけば、いいのでしょうか。
小糸課長 : そうですね。日本の文化を世界に発信していくときに、どちらかというと、日本の伝統文化というのは、むしろ閉鎖的な面が非常に大きいわけです。さらに、日本語という言語的なバリヤを合わさっているわけです。そこをどう乗り越えていくか、ということですね。よく、アメリカでは、絶対、字幕の映画が当たらないということが言われます。他方で、クオリティが高い、非常に中身が良ければ、「グリーンデスティニー」のように中国語でもハリウッドで大ヒットする例もあります。あながち、不可能なことではないでしょう。国際共同製作もできるだけバリアを低くする一つの答えではないでしょうか。逆に、「SAYURI」などがハリウッドで製作されるのも、逆の方向ではありますが今後期待が持てますね。
角田専務 : ハンデということではなくて、むしろ、新しいとっかかりとして、国際的な共同製作とか、共同企画とか、あるいは、発行の転換で、海外で作るとか、いろいろな可能性がこの中に含まれうる、のではないかということですね。
小糸課長 : 日本の文化というのは、非常に厚みのある文化です。言語的な壁を乗り越えてでも、世界に発信できるものが、まだまだ、あるのではないでしょうか。
角田専務 : 本当にありがとうございました。本年も引き続きよろしくお願いいたします。 |