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インドにおけるデジタルシネマに関する動向調査 |
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■調査期間 |
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平成17年12月12日(月)から平成17年12月17日(土)まで |
■調査場所 |
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インド ムンバイ、及び チェンナイ |
■調査メンバー |
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杉沼 浩司 ソニー株式会社 |
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田中 美苗 大日本印刷株式会社 |
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土屋 光久 (財)デジタルコンテンツ協会 事業開発本部 (他、「小規模デジタルシネマシステム調査研究委員会」から委員1名が自主参加) |
海外におけるデジタルシネマシステムに関する開発・利活用に関する動きの中で、インドにおける動向はハリウッドのそれとは一線を画す動きとして注目をあびている。そこで、インドのデジタルシネマ制作/配信/上映に関係する企業、上映館等を訪問し、デジタルシネマに関するインド市場における最新動向を調査した。
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1.DG2L Technologies社(ムンバイ)
ムンバイを拠点に、MPEG-4ベースの映画配信を手がけるシステム開発・構築・提供するシステム会社で、デジタル映像データのサテライト経由MPEG-4配信を提案、現在までにインド国内160の上映館へのシステム導入実績を持つ。ビジネスモデルとして、映像のデジタルデータをMPEG-4に圧縮、サテライト通信を使用し映画館内にあるサーバ内にダウンロードし、デコードした画像をプロジェクタで投影するシステムを開発した。通信の転送レートは8Mbps程度、ほぼReal Timeの転送が可能とのことで、開発・設計したシステムをインテグレータ(例えば下記Valuable Media社)経由で映画館へ導入される。 |
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2.Valuable Media社(ムンバイ)
上記DG2L社のシステムを実際の上映館に導入するシステム・インテグレータ、「UFO MOVIEZ」というシステム名でMPEG-4システムを導入、今年7月より開始したばかりだが、既に31本のフィルムをエンコードした(実商の開始はごく最近、2週間前から)。映画館にはサーバの他、HDD、音響システムも含めたトータルシステムを貸与、1システムあたりUS$3000のDepositで運用する。
デジタルシネマ導入を促す市場的背景として、次の説明を受けた。まずは歴史的にもインド映画産業自体が活発な制作活動に支えられていることが大きな原動力、年間の制作本数は800本を超えるという。従来のフィルムプリントのコストと手間をデジタルシネマ導入の容易さで払拭するという謳い文句、従来映写システムをデジタル化するための導入リードタイムは、映写担当技師への教育も含め、わずか3日間で済むとのことである。観客からの支持も上々のようで、@上映の早さ(配給のスピード)、A画質(フィルム上映では相当劣悪な環境も多々ある)の点において評価が高い。因みにデジタル映像でも入場料金を高く設定することはない。 |
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3.Rhythm&Hues社(ムンバイ)
米国の映画制作に関わるプロダクションRhythm&Hues社のインド拠点、ロサンゼルスにある本社からの指示に基づき、デジタル映像の素材加工を担当している。具体的には「Camera Tracking」、「Composing」「3D Animation作り」が主な仕事で、従業員100名を抱え、活発な活動をしている。インドを拠点として活動する意義として、デジタル映像の制作におけるQuality vs. Costの優位性が大きいとのことである。またインドの映画産業にかける風土、人材育成も兼ねた「人」へのこだわりが、うまく運営するポイントであり、米の同社での作業環境をそのままインドに移植した形で、インドにおける職場環境としては働きやすい環境を提供しているといえる。周りには大手通信会社もあり、ムンバイの新興産業地区を形成している。
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4.Real Image Technologies社(チェンナイ)
チェンナイを拠点にデジタルシネマ配信/上映を売り物とするサービスプロバイダー、「QUBE」というデジタルシネマサーバを提案、映画館への導入実績を持つ。映像コンテンツのエンコードは80MbpsのMPEG-2、配信は衛星通信経由で行うが、16Mbps回線で16H程度必要との事、主に夜間に伝送を行う。
ここで得た、インドにおける映画全般事情は以下の通りである。
- インド全体のスクリーン数は13,000、その約半数6〜7,000はいわゆる都会ではない地方の小規模シネマ館であり、インド国内でも地域(州)ごとに言語・習慣がそれぞれ異なることに起因して、それぞれの地域ごとの映画も盛んに制作されている。
- 映画制作に関わる費用は、これも地域によって大きく異なり、下は50MRsから150MRs(1億3千万円〜3億9千万円)程度、その内数でフィルムのプリントコストが制作コストの15-20%を占め、ここがデジタルシネマ導入への動機づけとなる。
- 全世界に導入された「シネマコンプレックス」はインドが発祥だとの説明もあり。
- デジタルシネマはハリウッドのD-シネマとそれ以外のe-シネマに分類、D-シネマの上映館数は全体の10%に満たない。
- デジタルへの誘導は、映画興行に関わる大きな柱(Theater Owner、Distributor、Producer)がお互いに損をしないビジネスモデル(Financial Chainと呼ぶ)が不可欠である。
- デジタルシステムを導入した上映館からの反応として、画質、信頼性の向上をあげられ、Distributorからもシェアアップの歓迎の声がある。
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5.KALASA社(チェンナイ)
シンガポールを拠点とするシステムインテグレータ「GDC Technologies」の南インド販売拠点で、ここも独自のデジタルシネマ用サーバを提供、2002年よりいち早くハリウッド作品をデジタル化、今までに26フィルムの実績を持つ。配信は携帯できる磁気媒体(HDD)で、その媒体ごと各契約上映館に搬送する。コンテンツには特殊な暗号化が施されており、不法コピーを防御できるとのこと。インドでのデジタルシネマビジネスについて、ここでも前述と同様の説明が有り、Win-Winの関係のビジネスモデルが確認できた。すなわち、映画産業を支える主役の3者である、プロデューサ、配信業者、映画館のオーナーがそれぞれに益を得るビジネスが提案され、歓迎されている。プロデューサにはコスト効率と権利保護の点、配信業者には労務軽減と輸送コストの低減、上映館オーナーにはオペレーション(メンテナンス)コスト及び容易性、上映品質の面から高い評価を受けている。一方、映写方式・配信方式は様々な提案がなされ、方式戦争さながらであり、e-シネマvs. D-シネマ、MPEG-2 vs. MPEG-4等、現在は興行主がそれぞれに選択する状況が続く。システムインテグレータとしては、状況をみながらどちらにも対応できる柔軟性が必要とのことである。 |
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6.Prasad社(チェンナイ)
チェンナイにある映画制作関連ラボ、創業50年の歴史を持ち、撮影スタジオも敷地内に有する映画関連事業を手広く展開する老舗のひとつである。現在は、フィルムスキャンによる映像のデジタル化、DVD/VCDのEncoding/Authoring等が主要ビジネスとなっている。
ここで、インド映画の制作側からみた視点を聞くことができた。
- インドでは年間延べ31億人が映画を見る。
- 通常、映画のフィルムPrintは平均150prints程度。
- デジタル化は現在では2KのScanningが主流。コストは2.5〜4MRs(6百万円〜1千万円)
- 映画制作の現場(特に撮影)はインド国内から海外へシフト(ニュージーランド、スイス等)、俳優起用も国際化している。
- インドにおけるデジタルシネマの現況には「必ずしも良い面ばかりでない」との見方もでき、フォーマットの不統一、配信/上映に関わる競争も複雑化の様相も呈している。ただし、デジタル化、高解像化の動きは否定できず、Prasad社としても将来のVisionに一つに掲げている。
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7.インドの映画館にて(ムンバイ、及び チェンナイ)
短時間ながら、インド映画(館)の実際を見聞した。状況は以下の通りである。
- 画質は良くない。また、圧縮/デコードした画質を云々する前に、スクリーンの荒さが遠くからもわかる程、つくりが貧弱。(ムンバイの「Central Cinema」)
- 画像ノイズが目立ち、エンコード時の技術問題があるのでは、と推察される。
- 入場料はムンバイの映画館で70(一階席)〜100Rs(二階席)=約250円程度。
- 一作品の標準上映時間は3時間程度、中間に約10-15分の「Inter mission」がある。各幕間にシネアドがあるものの、広告コンテンツは品薄、静止画もあり。
- 映画のストーリーに関し聞く話では、「音楽とダンスの躍動シーン」が有名らしい。ストーリーの回想シーン、連想シーンに使われるようだ。
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8.所感 |
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10億を超える人口、それを支えきれないインフラの未整備(都会の劣悪道路事情、激しい交通渋滞等)、地方により異なる言語、ヒンズー信仰、カースト制度等、日本人には馴染み難い環境は現存するものの、人はおだやか、親切、熱心という印象を持ち、情報で伝えられる貧困とIT先進の両極端が同居する不思議な世界を体験した。因みに、会見した(会社ではトップの)ビジネスマンは、なにしろ良く話すし英語も早口、それが「インドでの競争」を意味しているのかも知れない。
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デジタルシネマ全般について言えば、少なくとも「デジタル」というコンセプトは広く浸透している、もしくは浸透させる努力をしているとみることができる。デジタルシネマを浸透させるというテーマに、圧縮方式の不統一、また一部にはデジタル処理技術自体の不具合等の不安要素はあるものの、既存の映画産業全体が損をしない新しいビジネスモデルが提案され、実現化されているのは驚きでもある。制作・配給・映写の利益構造が明らかであることが必須条件となろうが、この辺が日本のデジタルシネマ普及のヒントになるであろうと思われる。なお、「なぜデジタルか?」の解となる理由というの一つに、「老朽化した上映設備、または劣悪品質フィルム」という要素から来るRenewalの必要性もインド特有の事情であることも忘れてはならないだろう。第2のハイウッドと呼ばれる映画市場はまだまだ奥が深そうであり、今後も引き続きの動向調査が必要となろう。特に、圧倒的な規模を誇る制作現場に如何にデジタルの波が押し寄せるか、また今回調査テーマの一つである圧縮技術を使った配信ビジネスはどう変化するのか、ハリウッド先導のD-シネマはインド市場に影響を与えるのか等、調査内容は多岐に渡ると考えられる。
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以上 |
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