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DCAJ news No.124
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米国における日本製コンテンツの流通事情(テレビアニメ)

転換期を迎えたジャパニーズ・コンテンツ:アニメーションの国際展開を考える上で米国市場は重要な位置を占めるが、その中で、日本製コンテンツはどういった状況にあるのだろうか? 米国に拠点を置く日本のプロダクションへのヒヤリング調査をもとに、ジャパニーズ・コンテンツの最新動向をご紹介する。
米国における日本製コンテンツの流通事情(テレビアニメ)

国際競争力のあるコンテンツの一つとしてアニメが挙げられるが、2006年3月23日(木)〜26日(日)に開催された「東京国際アニメフェア2006」の海外来場者増や、『ハウルの動く城』が米国のDVD総合売上チャートで初登場9位にみるように、アニメは依然として世界的な注目を集めている。


アニメの国際展開で大きな市場ともいえる米国において、日本製コンテンツは如何なる状況か。米国に拠点を持つ日本のプロダクションへのヒアリング調査*を通じて、実態把握を行った。


■日本のプロダクション(英語のアルファベット順)
 ・GDH K.K.
 ・PRODUCATION I.G., LLC
 ・Toei Animation Inc.


* 本調査は、平成17年度日本自転車振興会補助事業「デジタルコンテンツ産業動向調査研究」の海外動向調査の一環として、2006年2月6日(月)〜10日(金)に実施したものであり、掲載されている内容はヒアリング調査時のものです。

GDH K.K.

GDH K.K.(=以下、GDHと省略)の国際展開は英国を土台としており、日本国内で制作したテレビアニメ、OVA、劇場アニメ等の欧米へのライセンス管理、販売を主たる業務としている。作品制作は日本のGONZOで行っており、原則としてロサンゼルスのGDHは販売のみを担当している。

テレビシリーズの『巌窟王』や『SAMURAI 7』は欧米で一定の評価を得ており、2004年には米国のロックバンドLinkin Parkのプロモーションビデオを制作し、「MTVビデオ・ミュージック・アワード」で最優秀視聴者賞を受賞している。


現在は、新作アニメ『AFRO SAMURAI*』の米国展開を始動している。先ず、2006年末に米国の大手ネットワーク放送局Spike TVでのテレビ放映を予定しており、ハリウッド俳優のサミュエル・L・ジャクソンが主人公の声優とともに、共同プロデューサーとして参加することが決定している。実写版映画の企画も進行しており、2007年の公開を目指しているという。主役は、テレビアニメの声優同様に、サミュエル・L・ジャクソンを起用し、GDHとフジテレビ、ハリウッドのマネジメント会社Mosaic Media Groupと、日米で共同製作を行う予定とのことである。


同社のMr. Carlisleによれば、この他に、Namco Bandai Games America Inc.による『AFRO SAMURAI』のゲーム版、流通事業者Funimation社との共同によるマーチャンダイジングなども予定しているという。

日本のコミック原作によるハリウッドとの共同製作、テレビ・ゲーム・実写映画化等の様々なプラットフォームでの展開など、常に新たな挑戦を続けてきたGDHの『AFRO SAMURAI』をめぐる世界的な戦略動向から目が離せないといえる。


*『AFRO SAMURAI』(http://afrosamurai.com/
岡崎能士原作のコミック『アフロサムライ』。2006年末の全米テレビ放映後、日本に作品を逆輸入し、英語に日本語字幕をつける形で日本での公開を予定している。

PRODUCTION I.G., LLC

PRODUCTION I.G., LLC(=以下、I.G.と省略)はロサンゼルスに1997年に開設し、現在は寺島氏、鹿沼氏、風早氏の3名が常勤している。

日米合作として話題を集めた『IGPX*』は、米国の大手ケーブルテレビCartoon Network(=以下、Cartoonと省略)との共同製作である(実際は、バンダイビジュアル、バンダイエンタテインメントの4社による日本の製作委員会方式の共同製作)。米国で最も市場価値の高い男児市場をターゲットとしており、I.G.は企画から関わっている。キャラクターデザイン等、日本のアニメのテイストを打ち出しているのが特長的であり、企画の段階から日米で共同製作を行っているアニメとしては、『IGPX』は初めてとのことである。


脚本制作は日米共同となるが、音声は米国、映像制作は日本で行っている。共同製作において、コミュニケーションギャップ、文化、制作工程の相違等があり、当初は多くの戸惑いがあったという。日本のテレビシリーズは短期間で制作が常である。例えば、絵コンテに関して、日本は2, 3日で決断するが、米国(Cartoon)の場合は回答を得るのにおおよそ一週間を要した時があった。また、脚本においても、当初はクリエイティブコントロールに苦労したという。日本のアニメは微妙な“間”を多用するが、米国は主としてアクションシーンを見たがる傾向があり、会話のシーンが多いと必要に応じて変更する場合がある。文化の相違(表現規制)の側面として、冗談のニュアンスを変化させたり、当然のことながら、血やお酒を飲むシーンなどはカットせざるを得ないという。しかしながら、Cartoonのプロデューサーは日本のアニメに興味があり、特にI.G.の思想や作品に対する理解が深いことが幸いであるとのことである。


International Operations Managerの寺島氏によると、米国テレビアニメ市場の最近の傾向として全般的にアニメ番組が多過ぎるため、ライセンスが不景気であり、結果としてリクープができない状況にあるという。一方で、スタートからコピーライトコントロールを目指し、放送局と共同製作を行う事例が序々に増えている。従って、1.リサーチに基づき、視聴率が取れたり、DVDや関連商品が売れるものを制作 2.共同製作の二極化の傾向があるという。米国のテレビアニメのメインターゲットである男児がアニメを余り見なくなり、ゲーム市場にシフトしている影響を受けているといわれている(米国の女児は10歳〜12歳になると、テレビアニメを殆ど見なくなるのが一般的傾向である)。


I.G.は、「クリエーターが創りたいものを創らせる」環境を作ろうとする石川社長の考えがあり、『IGPX』や『キル・ビル』のように米国の下請けからいち早く脱却するとともに、ハイクオリティなアニメを制作することで知られている。I.G.のこれまでの蓄積に基づく定評、『IGPX』の好例等により、現在、新たな共同製作の開発が進行中であるという。詳細は、ヒアリング調査を行った段階では公にできないとのことだったが、次なるプロジェクトはどのようなサプライズがあるか、その公表が期待される。


*『IGPX』(http://www.igpx.jp/
未来のモータースポーツを舞台にしたアクションアニメ番組。米国のCartoon Networkでの放映のみならず、日本でもテレビ朝日系列で放映されている


Toei Animation Inc.

東映アニメでは、従来、現地の流通事業者や放送局に対し、テレビアニメの放送権や商品化権の許諾を行ってきたが、中間業者を排除し、直接契約することを目的に、海外現地法人を設立した。1997年3月に香港、2005年3月に米国が、続いてフランスと始動している。例えば、『ドラゴンボール』のDVDはFunimation社による流通となるが、米国においてはFunimation社による制作と思われていた時期があるという。現地法人の設立により、流通の風通しを良くするとともに、東映アニメの認知度アップを目指しているとのことである。現在、10名の常勤となる米国法人は、北中南米を対象としている。


Directorの山下氏によると、テレビアニメのローカライズに当たっては、レイティング規制があり、当然のことながら、血や煙草のシーンはカットせざるを得ず、放送局の担当者による自主規制の影響を受けることになるという。現在米国で放映中の『ボボボーボ・ボーボボ』や『ワンピース』は、元々レイティングに触れるようなシーンが少ない作品のため、オリジナルのアフレコを中心とした編集業務を行っているという。また今年は、『おジャ魔女どれみ』に続く女児ものとして、既にドイツ、イタリアで放送を開始している『二人はプリキュア』を米国展開の予定であるという。


Senior Directorの江波戸氏によれば、米国のテレビアニメの放送権料は下がる傾向とのことである。放送局(放映枠)が少ない一方で、多メディア、多チャンネル化により、市場が分散している状況にあるという。また、従来のビデオ収入でリクープするビジネスモデルに変化が生じており、ビデオ流通事業者や大手リテーラーの倒産により、販売店のアニメコーナーが縮小することになった。これまでが供給過剰であったともいわれており、DVD黄金期は衰退したため、新たなリクープの仕組みの構築が不可欠であるという。もはや、テレビはアニメの認知度を高めるための媒体であり、DVD・玩具・ビデオゲームは三種の神器とはいえなくなった。DVDの単価は下がるとともに、リテーラーは市場をコントロールするようになる一方で、制作原価は上がっており、利益を確保するのが難しくなってきているとのことである。ホームビデオ市場が不振にもかかわらず、パイは変わらない状況下で、新規参入や発売タイトル数(供給者や供給量)は増加しており、厳しい競争に入っているという。


同社とアニプレックス社、Cartoon Networkの3社の共同製作による『出ましたっ!パワパフガールズZ』については、アメリカ版『パワーパフガールズ』を日本市場向けにリメークしたものであり、2006年7月の放送に向けて鋭意準備中とのことであった。


まとめ

各社のヒアリング調査で共通したことは、米国テレビアニメ関連市場の動向として、1.メインターゲットである男児の興味がゲーム市場にシフト → 視聴率の低下等により全般的にアニメ放送枠の減少 2.日本製アニメの放送枠の減少 3.ライセンス収入の減少 4.アニメを含むDVD販売タイトル数が増加する一方で、単価の低下であった。

従って、米国における日本のアニメビジネスは縮小しており、テレビ放送をファーストウィンドウとし、DVD販売やキャラクター商品販売でリクープする従来のビジネスモデルに変化が生じているようである。


しかしながら、I.G.やGDH、東映アニメのように、日米共同製作・共同プロデュースを行うことにより、当初からコピーライトコントロールを目指したり、対象となる市場を想定して制作したりといった新たな取り組みが行われている。特に印象に残ったのは、新たなリクープの仕組みとして、iPodをはじめとする映像のダウンロード型ビジネスやデジタル配信の動向に注目している、という東映アニメの江波戸氏の発言であった。


コンテンツを取り巻く状況としては、流通の多様化によるコンテンツ産業の構造変化、エンドユーザーのライフスタイルの変化、コンテンツ消費習慣の変化、コンテンツの大きな購買層を構成する若年層の減少等、コンテンツビジネスは転換期を迎えている。


今後、コンテンツ産業の発展の鍵は新市場開拓であり、エンドユーザーのニーズの細分化に応じたコンテンツ供給(ニッチ市場)と海外市場の拡大にあるといえるのではないか。新たなビジネスモデルの構築にむけて、模索が不可欠であるといえる。



企画調査部 福島寿恵

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