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20年ほど前のこと。レコーディングの為にヨーロッパに向かった僕はパリのシャルル・ドゴール空港でベルリン行きの飛行機を待っていた。同行者は、現キャピトルレコード・プレジデントの子安氏。出発を待つ僕らにアナウンスがながれた。
「ベルリン行き予定の航空機の故障のため出発時間が未定となりました。そのまま空港内でお待ちください」
結局、さんざん待たされた挙げ句、午前中の出発予定は半日以上遅れ、午後8時過ぎにやっと出発した。この旅はパリ・ベルリン・ロンドンと3つの街で仕事があったから、僕らのポケットには、フラン・マルク・ポンドの3種類の外貨と日本円が入っている。「1ポンドは160円だな。では1ポンドは何フランだっけ。そして1フランは何マルクだっけ」日本円をポンドに換算するところまでは簡単だが、ポンドをフランに、またフランをマルクに、そしてマルクをポンドに換算していくうちに、金の価値がごっちゃまぜになって一体いくらなのかが分からなくなる。
そこでトランプをとりだし、ババ抜きという子供の遊びのゲームをし、今回の勝負はポンドでいくらと決めた上で、負けた方がフランやマルクで支払うというゲームをやって各国の為替レートを学びながら長い待ち時間を過ごした。ちなみに日本円を使うとババ抜きでもイカニモ賭けという感じが出てしまうので円は使用禁止とした。初めのうちこそ、えーと何フランは何ポンドだっけかな。などと為替レートにもたもたしていたが、1時間もしないうちに、ポンドではフランではマルクでは日本円ではいくらであったかが瞬間的に分かるようになってきた。「たった1時間で我々も為替レートの通やな」などと勉強(?)の成果に目を見張ったものだった。この訓練はその後ベルリン〜ロンドン〜パリへと続いた旅で本当に役に立った。
あれから20年後の今はそんなことをしなくても済むようになった。ヨーロッパ経済圏は統一され英国はかたくなにポンドを使用しているが、どこの国でもユーロが通貨となっているからである。このことは僕にとってはデジタルネットワークがもたらした社会とどこか同じであるような感覚がしている。日本の音楽もこのデジタル社会のインフラを通じて、映画、マンガ、アニメだけではなく、もっともっと世界に飛び出して行って欲しい。
そんなことを思っていた折り、デジタルコンテンツ協会から、インディペンデントの音楽シーンの活性化・国際化に共同でイベント&セミナーを企画しませんかとお話を受けた。世界の音楽ビジネスは、巨大資本のメジャーレコードを頂点に、その下に無数のインディペンデント・レーベルがいるというピラミッド構造を成している。いきなりメジャーデビューする幸運なシンデレラ・アーティストもいることはいるがほとんどのアーティストはインディーシーンから登場して来る。成熟したことにより閉塞感さえある日本の音楽シーンを活性化させるのは、こういったインディーアーティストの登場。さらに言えば国際舞台への登場によって成しえるものではないか。そんな思いを「音楽で未来を語ろう」という一つの理念にまで昇華させ、音楽制作者連盟は「independence-D(インディペンデンス・デイ)」というイベントをデジタルコンテンツ協会と共に実施してきました。
このイベントでは、デジタル時代の権利の分配はこうあるべきではなかろうかという我々の主張と思いを込めて音楽配信の実証実験も行っています。ヨーロッパの通過ユーロのように、国際化をもたらすデジタル社会のインフラで日本の音楽を世界に連れて行きたいものです。文明の利器で文化を伝えるというわけです。
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