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DCAJ news No.130
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国内レポート:DCAJ 2月度セミナー:「動画映像と感性表現」:2007年2月2日(金)、東京・蒲田の日本工学院専門学校デジタルシアターで開催された動画映像の視覚評価に関する調査研究(日本自転車振興会の補助事業)講演会「動画映像と感性表現」の概要をレポート。セミナーの後半には、前日同様『デジタルdeみんなのムービー』特別企画「デジタルシネマ上映機材体験会」が開催された。
DCAJ 2月度セミナー 「動画映像と感性表現」

2007年2月2日(金)、日本工学院専門学校デジタルシアター(蒲田)で開催された動画映像の視覚評価に関する調査研究(日本自転車振興会の補助事業)講演会「動画映像と感性表現」の概要を報告します。なお前日同様、セミナーの後半に『デジタルdeみんなのムービー』特別企画「デジタルシネマ上映機材体験会」が開催されました。

  1. 『CG映像技術の発展と感性表現』

    女子美術大学大学院美術研究科為ヶ谷教授に永年のCG映像技術の開発と映像制作プロデュースなどの経験を振り返り、映像表現の拡がりと感性との関連についてご講演いただきました。
    その概要を以下に記します。

    1960年カラーテレビが開始されて以来NTSC方式がディスプレイのカラー映像の標準となっている。CG研究が急速に出始めた1980年になって、カメラを使わずコンピュータで生成した初めてのアニメ映像を、編集システムを開発し実現した(NHK特集「エレクトロ絵本」)。ロトスコープで撮った人の動作データを参考に、240×192画素8色という限られた画素で人などの動きを良く表現しており、色々なアニメの要素を含んでいる。表現能力の制約の中でアーティストの感性や創造性を刺激して実現した。

    コンピュータの高機能化や、3次元CGなどの制作技術開発の進化に対応し、1982年CG作品「花鳥風月」(米国SIGGRAPH入選)など、より映像表現の完成度を高めた作品を制作した。1984年「21世紀は警告する」ではグラフィックスキャスターDr.Holonを輝く光の点の集合で表現する要求があり、スティックリガーという竹ヒゴ細工を動かす作業でアニメーションを作った時代に、難しいコンピュータとの連携を行い、また、NTSC方式の特性で小さな点では色が白くなるため、初めてハイビジョンレベル(1280×1024)で表現できるディスプレイに輝く点を出力し、それをカメラで再撮像する手法を用いた。表現の領域を広げていくことを考える状況が生まれてきた。

    ハイビジョンの時代になり1920×1080画素24ビットフルカラーと解像度の向上で、CGの表現力が広がり、これまでと違う世界を作りだすことが出来るようになった。1997年CG作品「谿山夢想図」(米国SIGGRAPH入選)ではあえて墨絵の世界を実現した。この中で映像をレイヤーに別け作る手法で距離感を出したり、白黒だけでは墨絵にならず、さらに色を付加する(汚す)など、新しい映像表現領域を開拓した。解像度と表現力の向上をクリエイターが意識し、画面をそれらしくニュアンスを高めていくことが出来るようになってきた。

    その後ハイビジョンの表現力を使用した映画作りに挑戦した。1992年映画「プロスペローの本」(ピーター・グリナウェイ作)では、素材にシェークスピア時代の質感を如何に出すかを工夫し、実写ビデオ映像とCG映像のテイストをなじませる技術などを活用した。ここでは今のノンリニヤ編集システムのような最初のシステムを使用、フランスのアーティストにとっては新しい創造性をそこに作り上げることが出来た。1993年映画「夢の涯までも」(ヴィム・ベンダース作)では、デジタル技術で監督自身が手動で操作し映像を見ながら色彩を施す画像処理技術などを開発、アニメ制作現場の中での活用を考える一つの状況を提供した。これらの作品では、ハイビジョンの利用法として開発した、CGと実写を組み合わせパレットのようにペイントしていく「エレクトロニクスパレット」と呼ぶ概念を用いた。これは、テクノロジーの進化が表現領域を拡大して創造性を進化させた取り組みの一例である。技術の進化がもたらす表現領域の広がりは色の深さなど実用レベルになってきており、これをどう映像の中で生かすかがこれからのクリエイターの大きな挑戦になっていくと思う。

    1994年頃からは、ハイビジョン立体映像制作に取り組み、自然な立体感、画面の細かさと立体感、立体視と色の使い方、立体視での物体の動きの表現、CGによる立体映像制作上の課題などに取り組んだ。また、スーパーハイビジョンなどが出て、さらに解像度を増し、フレームレートも60Hzと人間がフリッカーを感じ無い領域まで進化していく。どのような表現の領域が生まれるのか、クリエイティブな人達とのコラボレーションによって作り上げることが出来るのではないか。PCで映像制作しハイビジョンを再生するという時代、色々な使われ方が広がっていき、また、研究が実際に映像として目前に呈示されるとき新しい技術に対するリクエストが出てき、新しいビジョンを開いていく力になるのではないか。

    感性は人の記憶の中にあるもので、記憶の中に感じる力が出てきて、感じる力が何か生み出す力になると考えられる。デジタル技術の進化で動画像システムの完成度が高まり、より直接眼で見ているのと同じように映像を見ることが出来るようになると人間の感性にも影響してくると考えられる。表現領域が拡がることにより自由な創造性を生み出し、それぞれの個性や感性を育てる事につながる。また、基本的な美について学ぶことも、映像の鑑賞力を高めることにつながる。

  2. 『デジタル映画制作の現状と色彩表現について』

    続いて、井上春生映画監督にデジタル映画制作のワークフローと、映像のルックについてクリエイターがどのような気持ちで作ってきたのかなどについてご講演いただきました。

    (1) 映像の表現について

    ハイビジョンがでる前から、約10年間、デジタルで映画、TV、CMを制作するなかで「フィルムルック」を追求された。

    映像をインタレースで撮るとルックがぎらつく感じや、白色や黒色がつぶれたような階調になる。3月シネマート六本木で公開の最新作品映画『東京の嘘』(http://www.tokyo-uso.jp/)では、これらを抑えるように現場でスモークをたき淡い感じを出した。また、心情にあわせ、ひんやりしたシアン系の色に調整している。フェーストーンはグリーンがかからないようにする。

    ハイスピード撮影はフィルムしか出来なかったが今はデジタルの60i→24p変換で約2.5倍、さらにIMAGICAのサイボーグでコマを増やし約10倍に出来る。この手法で、CM『資生堂 3分企業CM』で、手のしなやかさを表現した。また、HD(High Definition)でラティチュード(露光寛容度)が広くなってきたので、ビンと背景を同系統の色で撮り、深みを表現した。

    テレビ東京ドラマ『恋、した。』は、10年前にβカムでフイルムルックを出そうとした作品。ビデオのぎらつきを抑えるため、照明無しで増感し粒子感を出した。夜の停電シーンで、ヒロインの熱い気持ちをクールダウンする感じでブルーを濃い目にしたり、蝋燭のアンバー系の色で回想シーンにつなげたり、登場人物の気持ちの変遷を色で表した。また、Fトーンという、テレビの30コマ/秒のコマを飛ばしたりダブらせたりして映画の24コマ/秒の感じをだす手法を使った。

    TBS番組『いのちの響』では、出演者の塚本晋也監督の映画も流すので、トーンを合わせるため16ミリのフィルムで撮った。フィルムは寛容度が高く、夕方照明無しでも表情が表現できた。これに比べHDデジタルの場合は現場でダイレクトに結果がでてくるが、寛容度がそれ程なく現場で非常に繊細に作っていかないと、白とび、黒つぶれなどの部分の色が立ち上がってこないことがある。フィルムよりHDデジタルの方がプロにとって手ごわかったりする。

    映画『バードコール』(2005年作品)では、雨が降る前のような暗い状況での撮影だったが、多少編集で明るくした。主人公の気持ちが晴れていく心理を、明るさと色の彩度を徐々に上げていき表現した。また、農地のグリーンの中に赤い洋服というように、反対色を持ってくると絵が際立ってくるという特色がある。映画『チェリーパイ』(2006年作品)では、対立する二人の女性の構造を、グリーンと赤の衣装で表した。彼の思いが彼女に伝わっていくというときは、なじんでいくのを際立たせるために、多少色の彩度の違う同系色の色を使用した。この映画の厨房シーンでは、インタレースで撮ったので、白色のがぎらつきを抑えるためスモークを焚いた。奥の方がぼけてくるので深度を作ることが出来るという手法を使った。

    かつては逆光では、顔の表情が撮れなかったが、HDカメラのガンマ曲線を調整し制作した。ミュージック・ビデオの例では、きちっと表情が現れている。

    4KのHDは解像度が高く、没入感がある。人間の目の許容度以上の解像度で表現されている感がある。解像度がフィルムを追い越すくらいなので、新たなデジタルを使った新しい表現を何かできないだろうか。720×480のDVでも色の再現では相当フィルムに近づいた感がある。クリエイターの気持ちに沿う表現ができるような機種が増えてきたので、逆に迷うことも多々あるようになってきた。ある意味贅沢な悩みと言う感じがする。

    (2) ワークフローとデジタルの効用について

    普通の映画と同様、プリプロダクション、撮影、ポストプロ、配給公開となるが、例えばロケハンなどの現場から写メールで監督に送ったり、ホームページにアップするなどデジタルの効用がある。かかる時間・費用を削減できるとその分撮影現場の方に回することができる。

    普通のMA(マルチオーディオ:音の編集)では台詞が入ると音楽のレベルを下げるが、音楽専門のエンジニアと新しい手法で音楽と台詞を同レベルとすることを試みた。台詞をボーカルと捉え、音の周波数を多少変えて作ってるので音の干渉が無いように作れたという。また、プロツールズというアプリケーションで30トラック程度の音をパソコン上で編集し、シームレスでMAが出来る状況になる。音のクリエイターと監督はデータのやりとりだけで仕事が済み、本番も無くなる。従来の1/10〜1/5に圧縮でき、空き時間でも対応できる。

    クリイターにとっての敵は実は解像度でなく予算。制作スピードも早くなっている。映画の1日の尺数は2分から3分と言われてる中で、10分前後で制作している。デジタルの効用を使い知恵を使えば何かできる。新しいワークフローも考えていくことが必要。デジタルが現場でもダイレクトに結果が出てくるように、この予算で何をやりたいのか問われたときに、これを表現したいということがないと、なかなか物事は作れないような文化になってきている。

    (3) アフガニスタン映画祭
    (3月10日(土)〜16日(金)開催 http://www.cross-arts.org/international/

    アフガンに映画撮影に行ったのがきっかけで、タリバン政権で破壊された映画文化の復興支援NPO法人で活動している。アフガンでは映画の独立制作会社が30社以上あるが、デジタルはフィルムより低予算で制作できるので、クリエイターに多くの機会を与える効果がある。

    フランス、ドイツのNPOでは、ノートブックとカメラを無償提供し自由に使えるようにするかわり、定期的にドキュメントを送ってもらう契約で、双方に利がある構造をとっており、このような映画的文化的な支援の仕方は学ぶべきと感じる。

この事業は競輪の補助金を受けて開催しました。

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