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DCAJ news No.124
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海外レポート:スイス・ジュネーブ出張報告:ディスカッション「WIPO新放送条約起草に向けて」:2007年1月17日(土)〜19日(月)、スイス・ジュネーブのWIPO(世界知的主有権機関)において開催された「著作権常設委員会特別部会第1回会合」に参加し、新たな放送条約の起草に向けた議論を調査した。結論から言えば、3日間にわたる議論は進展せず、全ては6月に開催される第2回会合に委ねられることとなった。
WIPO新放送条約起草に向けた議論 −スイス・ジュネーブ出張報告−

2007年1月17日〜19日スイス・ジュネーブのWIPO(世界知的主有権機関)において開催された「著作権常設委員会特別部会第1回会合」に参加し、新たな放送条約の起草に向けた議論を調査した。結論から言えば、三日間にわたる議論は進展せず、全ては6月に開催される第2回会合に委ねられることとなった。

以下に、特別部会設置の背景を紹介した上で、議論の様子を報告する。

  1. 特別部会設置の背景

    著作権常設委員会はここ数年、新たな放送条約の起草の是非及びその内容のあり方を主題としてきた。しかし、直近の第15回常設委員会(2006年9月11日〜13日)において、議論が平行線を辿ったことから、論点の整理と手続きの明示がなされ閉会した。その内容は以下の通りである。

    • 放送番組をインターネット上で無断配信する「海賊放送」を規制する新条約を2007年夏に採択するべきである。
    • 権利に直接関係しないその他の項目(放送事業者の定義その他)は、選択肢を残したままとする。
    • 条約は、2007年7〜8月にジュネーブで開かれる外交会議で採択されるべきである。
    • 残された重要な問題については、別の場で議論する。
      今回開催された特別部会(special session)は、残された重要な問題を議論する「別の場」である。
  2. 特別部会第1回会合における議論
    1. 主な意見

      ユッカ・リーデス議長は、non-paper(日本語でいうところの「叩き台ペーパ」)を配布し、議論を求めた。non-paperには、残された重要課題である「他の条約との関係性(整合性)」、「条約が適用される範囲」、「各国の国内法化」、「権利の制限と例外」、「保護期間」が盛り込まれた。

      条約の素案文書「15/2」そのものは20条からなっており、これらnon-paperの5項目はこれに付加されるものである(すなわち条約案は25条になったことを意味するものと思われる)。残された論点に関する議論をスピードアップさせる狙いがあったものと思われる。

      しかし、ブラジルをはじめとする数カ国の政府代表は、議長によるnon-paper方式に問題ありと発言。議長が早期に決着を付けたいという思惑から、あまりにも複雑な(too complex)方式を強行しているとして、このnon-paper手続きを批判した。

      インド政府は、起草作業の方法はもちろんのこと、放送事業者に与えられる権利そのものについても異を唱えた。今回の条約が、放送事業者に対し、これまで契約により与えられていたものを明文化するだけならともかく、契約で与えられてこなかった保護までも与えてはいけないという、根本的な意見である。

      オーストラリア政府代表の主張は、放送の送信や再送信、インターネットのストリーミング、衛星送信等のような、現時点において国際的に議論が済んでいない問題を先進性をもって論じるべきであるというものである(筆者の意味の取り違えでなければ、おそらく、従来の伝統的な放送の保護に関する議論は意味がないという意味であろう。)。

      各国政府の意見表明に続き、参加した全NGOにも発言権が与えられた。著作権者団体は、放送局という著作隣接権者の権利が強化されることで、コンテンツ(すなわち、映像作品)の著作権が相対的に弱められるのではとの危惧を表明し、放送信号の不法取得に対する保護だけを与えればいいと発言した。

      信号を保護するか否か、保護するとすればどのような方法で保護するかについては、多くのNGOが意見を表明した。信号は著作権法で保護するべきでなく、1974年ブリュッセル・サテライト条約のように、放送通信規制法でいくべきとする見解が多かった。

      ヨーロッパ放送事業者連盟(EBU)は、インターネットによって放送番組が違法に送信されるので、違法な送信行為に対抗できれるような保護が必要と発言した。発展途上国グループ(南米、カリブ地域)からは、放送事業者に権利を与えるのであれば、その一方で、コンテンツ流通事業者による事業の円滑化をはかるため権利制限規定も盛り込むべきとの主張がなされた(しかし、具体的にどのような権利制限規定とするかについては意見がなかった。)

      米国電子フロンティア財団(EFF)は、この条約案には根本的に問題があると指摘。具体的には、情報へのアクセス、情報の自由な利用という市民の権利を損なうものであるとの危惧を表明した。

      NPOとして参加した日本民間放送連盟は、5年という長い期間をかけて議論は尽くされており、条約締結を急ぐべきであるとの見解を表明した。

    2. 議長まとめ

      議長は最終日夕刻、以下の手続き等を提案し、閉会となった。

      • 意見のある国は、早急に、「15/2」及び「non -paper」に対する意見をWIPO事務局にE-mailで提出する。
      • WIPO事務局は、提出された意見を参考に「草案」をまとめ、5月1日に関係機関すべてに配布する。
      • WIPO事務局は、「草案」の配布から一ヶ月以上経過した6月に、特別部会第2回会合を開催する。この第2回会合を、最終議論の場とする。
  3. 雑観

    議論は収斂しないどころか、少なくとも筆者の目には、一歩も二歩も後退した印象である。5月1日の草案配布から6月の第2回会合までの間、各国政府機関において様々な下交渉が行われるものと思われるが、予断を許さない状況にある。

以上

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