主な意見
ユッカ・リーデス議長は、non-paper(日本語でいうところの「叩き台ペーパ」)を配布し、議論を求めた。non-paperには、残された重要課題である「他の条約との関係性(整合性)」、「条約が適用される範囲」、「各国の国内法化」、「権利の制限と例外」、「保護期間」が盛り込まれた。
条約の素案文書「15/2」そのものは20条からなっており、これらnon-paperの5項目はこれに付加されるものである(すなわち条約案は25条になったことを意味するものと思われる)。残された論点に関する議論をスピードアップさせる狙いがあったものと思われる。
しかし、ブラジルをはじめとする数カ国の政府代表は、議長によるnon-paper方式に問題ありと発言。議長が早期に決着を付けたいという思惑から、あまりにも複雑な(too complex)方式を強行しているとして、このnon-paper手続きを批判した。
インド政府は、起草作業の方法はもちろんのこと、放送事業者に与えられる権利そのものについても異を唱えた。今回の条約が、放送事業者に対し、これまで契約により与えられていたものを明文化するだけならともかく、契約で与えられてこなかった保護までも与えてはいけないという、根本的な意見である。
オーストラリア政府代表の主張は、放送の送信や再送信、インターネットのストリーミング、衛星送信等のような、現時点において国際的に議論が済んでいない問題を先進性をもって論じるべきであるというものである(筆者の意味の取り違えでなければ、おそらく、従来の伝統的な放送の保護に関する議論は意味がないという意味であろう。)。
各国政府の意見表明に続き、参加した全NGOにも発言権が与えられた。著作権者団体は、放送局という著作隣接権者の権利が強化されることで、コンテンツ(すなわち、映像作品)の著作権が相対的に弱められるのではとの危惧を表明し、放送信号の不法取得に対する保護だけを与えればいいと発言した。
信号を保護するか否か、保護するとすればどのような方法で保護するかについては、多くのNGOが意見を表明した。信号は著作権法で保護するべきでなく、1974年ブリュッセル・サテライト条約のように、放送通信規制法でいくべきとする見解が多かった。
ヨーロッパ放送事業者連盟(EBU)は、インターネットによって放送番組が違法に送信されるので、違法な送信行為に対抗できれるような保護が必要と発言した。発展途上国グループ(南米、カリブ地域)からは、放送事業者に権利を与えるのであれば、その一方で、コンテンツ流通事業者による事業の円滑化をはかるため権利制限規定も盛り込むべきとの主張がなされた(しかし、具体的にどのような権利制限規定とするかについては意見がなかった。)
米国電子フロンティア財団(EFF)は、この条約案には根本的に問題があると指摘。具体的には、情報へのアクセス、情報の自由な利用という市民の権利を損なうものであるとの危惧を表明した。
NPOとして参加した日本民間放送連盟は、5年という長い期間をかけて議論は尽くされており、条約締結を急ぐべきであるとの見解を表明した。