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DCAJ news No.131
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オープンカフェ:河合隆史氏(早稲田大学大学院 国際情報通信研究科 准教授)3Dコンテンツの調査を終えて両眼立体視を伴う3Dコンテンツは、100年以上も前からその将来を期待視されながら、なぜか普及は進まない。この課題の本質に迫る河合隆史氏のコラム。  

平成18年度より、DCAjの3Dコンテンツ調査委員会の委員長を担当させていただいている。本稿を執筆している現在は、ちょうど報告書の取りまとめが一段落したところであり、ここでは現時点での思いなどを書きとめておきたい。

両眼立体視を伴う3Dコンテンツは、デジタルコンテンツの中でも特殊な存在である。100年以上前から、その将来を繰り返し展望されながらも、普及してこなかったという経緯があるためだ。近年もブームの周期に入っているとされており、本調査委員会も平成17年度より発足・開始されている。

平成18年度の本調査委員会のミッションは、3Dコンテンツが「なぜ普及しないのか?」について、課題を明確化するという本質的なものであった。調査にあたっては、メーカーからプロダクションに至る有識者の方々に委員としてご参加いただいた。

委員会での活発な議論をふまえ、それぞれの立場からご検討いただいた課題をまとめてみると、面白いことが分かった。まず、普及を阻害している要因として、良質な3Dコンテンツの不足が背景にあげられ、そのために解決すべき課題が、ニュアンスを変えて、ほぼ重複して指摘されていたのである。具体的には、以下の6点に集約することができた。

  • 必然性の実証と提示
  • 制作環境の整備
  • クリエータの育成
  • 流通・公開環境の整備
  • 生体安全性の確保
  • ビジネスモデルの構築

これらの課題は、いずれも連鎖していることから、積極的な相互作用の期待できるような、現実的に着手可能な取り組みを検討することが、次のステップとして合理的である。その1つとして、困難ではあるが魅力的なものに、3Dのキラーコンテンツがあげられる。

つい先日、韓国の中央大学校で開催された立体映像セミナーでの講演の際に、「3Dのキラーコンテンツの条件とは何か?」という質問を受けた。これに対し筆者は、「+αの発想からの脱却」をあげた。「+α」とは、「これを3Dにしたらもっと...」というフレーズに代表されるような、足し算的な発想による3Dコンテンツを意味する。当該分野の展示会などでは、既視感を覚えるほど耳にする機会の多いフレーズであるが、課題に対する共通認識を得た今後としては「思ってもみなかった3D」を志向していきたい。

アプローチを変えることで、従来の課題の積極的な解決へ向けた例として、任天堂のWiiに注目している。周知の通りビデオゲームは、社会的な事件などの背景として取り沙汰されることが多く、悪影響に関する議論が大部分を占めてきた。筆者自身、ビデオゲームも研究対象としているが、その問題点として確実にいえるのは、長時間のプレイにより、他へ費やすべき時間が減少しがちなことである。

これに対してWiiをプレイしてみると、身体動作を伴うインタラクションによる新たな面白さと同時に、意外と疲れることが分かる。この疲労感が、長時間のプレイを自然な形で抑制するよう働くことが期待される。加えて、一人で引きこもってのプレイより、多人数でのプレイに適していることも、積極的に働くだろう。

3Dディスプレイの要件として「長時間の観察でも疲れない」というキーワードは、必ずあげられるものの1つである。観察者へ過度の負担を与えることは論外であるが、一方で、「疲れるゲーム機」への関心も否定できない。集約された課題からも明らかなように、当該分野の問題意識は、ディスプレイからコンテンツおよびその周辺へとシフトしている。コンテンツやアプリケーションという観点では、多様なアプローチが残されていることから、意表をつくような着想や出会いを、個人的に、とても楽しみにしている。


2007年4月
早稲田大学 大学院国際情報通信研究科
准教授 河合 隆史

     
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