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DCAJ news No.135
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スイス出張レポート:スイスで花開く、日本のコンテンツ
スイス出張レポート
〜国際都市ジュネーブと教育・文化の町ローザンヌで花開く日本のコンテンツ〜

2007年11月17日〜23日、スイスのジュネーブ、ローザンヌにおいて、WIPO(世界知的所有権機関)の著作権及び著作隣接権に関する常設委員会動向調査および日本コンテンツの流通状況調査を行なった。WIPOの他、マンガ出版社、日本のアニメやマンガ等のコンテンツを紹介するイベントPolymangaのオフィス、書店、ゲーム会社、コンテンツ教育機関等を訪ねたが、今回はその中で印象に残ったポイントを報告したい。

WIPO −アジア地域著作権制度普及促進事業について−

今回の出張の主な目的は、WIPO著作権及び著作隣接権に関する常設委員会の中で放送番組の保護に関して重要な決定がなされる見込みであった外交会議を傍聴し調査することであったが、同会議が延期になったため、WIPOのアジア地域著作権制度普及促進事業についてのインタビューを行なった。

本事業は、依然海賊版等の問題の多いアジア地域に著作権制度を普及させ、日本のJASRACのような著作権集中管理団体の設置を支援するものである。この事業は、日本の資金により1993年度からWIPOのプロジェクトとして実施されている。具体的には現地でのセミナー実施や、日本に参加者を招聘して研修を行なう等の活動がなされている。日本のコンテンツを国際展開させるに当たり非常に意義ある事業だが、この活動自体、また、日本の資金による運営であることを知る人は少ない。
実際に、この事業による啓蒙やセミナーが契機となり2001年にインドネシアに集中管理団体が設立された。また、母体だけはあったタイやフィリピンの管理機関の分配事業がスムーズになるなど多大な貢献をしている。このような事業はもっとPRし、日本の団体や企業が積極的に応援すべきであると考える。担当の杉浦氏は、「各国政府とも、IPの担当者が次第に育ってきている手ごたえを感じる。この活動は上から押し付けても駄目で、実際に利益を享受する各国のクリエイターが自ら声を上げるように持って行くことが重要」と話している。

Glenat −スイスでの日本マンガ流通に貢献するフランス最大のマンガ出版社−

Glenat(グレナ)社は、最も早く日本のマンガを輸入し、『ドラゴンボール』等の人気マンガをスイス(主にフランス語圏)に紹介した出版社。社長のグレナ氏は大友克洋の『AKIRA』をフランスはじめヨーロッパで大ヒットさせた。
マーケティング責任者であるMarlzahn氏によれば、日本のマンガは絶大な人気があり、『ドラゴンボール』の大ヒットをきっかけによく読まれるようになったという。現在、スイスで最も人気があるのは『NARUTO』(KANA社)。

以前は日本のマンガに含まれる暴力や性表現の青少年に与える影響への危惧から、誰もがマンガを手に出来るスーパー等には日本のマンガを置いていなかった。しかし、2002年の『千と千尋の神隠し』のヒットから、日本のマンガは子供たちにも安全でためになるものであるという評判が拡がり、スーパーでも扱い始めたという。今では、『How to learn Japanese through Manga』という本も出ており、オリジナルの日本マンガを原語で読みたいがために日本語を学び、そこから日本を知り文化を学ぶというパターンも多い。コンテンツは最も優秀な「文化大使」であることを、この例は物語っている。
スイスにはバンド・デシネ(BD)と呼ばれる伝統あるコミックが存在するが、その作者たちも日本のマンガの影響を受け、興味深いfusionも生まれているという。

大型書店fnacのMANGAコーナーにずらりと並ぶ日本マンガ
大型書店fnacのMANGAコーナーに ずらりと並ぶ日本マンガ

Polymanga −スイスの一都市の日本マンガイベントに参加者1万人−

Polymanga(ポリマンガ)は、2005年にスイス・ローザンヌで第一回が開かれた初の日本マンガ・アニメ・ゲームイベント。ローザンヌは、WIPOのある国際都市ジュネーブから電車で30分ほどの郊外に位置する閑静な都市で、教育機関が多数集まっている。その町で年に一度開かれるポリマンガに、スイスの日本マンガ・アニメオタクが一堂に結集する。You Tubeなどをチェックすると、『NARUTO』のコスプレ画像が次々に登場し、スイスの一都市にこれほどの日本ファンがいるのか、と驚くが、第3回を迎えた今年の参加者はなんと1万人を超えた。人口12万人のローザンヌにおいて、2日間で1万人の日本マンガ・アニメファンを集めるのは驚異的である。

今年のポリマンガは4月27日〜28日、ローザンヌ・ボーリュー会議見本市センターで開かれた。6,000平米の会場は、1階にマンガ出版社やゲーム会社(SONY)など12の企業展示ブース、ビデオゲームコーナー、マンガ・アニメショップ等が設置され、2階では日本アニメの上映会、コスプレショー、日本文化体験コーナー(折り紙や囲碁を教えている)と日本コンテンツ目白押し。そして今年から「Entertainment Grand Prix」と称するWEB投票とプロの審査による日本コンテンツのアワードも設置され、少年アニメ部門・マンガ部門は共に『鋼の錬金術師』、少女マンガ部門は『Paradise Kiss』、少女アニメ部門は『NANA』が受賞した(他に青年部門、ゲーム部門等、多数設けられている)。注目すべきはマスコミへの露出。これまでに91件を超え、まだ伸び続けている。

PresidentのDavid Heim氏に会った感想は、ただのオタクではない、ということ。元々純粋に日本マンガ・アニメのファンでもあるが、彼は企業を巻き込むのが非常にうまく、何をすればどう参加者数が伸びるか、どの企業を連れてくれば付随的にどういうメリットが生まれるか、全て計算されているようだ。スイスの一地方都市で1万人を集めるこのイベントを知れば知るほど、どうしてここまで日本のコンテンツを紹介してくれるの?!と、感動と疑問が交互に湧いて来る。日本のコンテンツ企業が、この若者、このイベントにうまく乗らない手は無い。先ずはポリマンガの日本側スポークスマンを買って出たいと思う。

Polymanga 2007のポスター
Polymanga 2007のポスター
ポリマンガ会場のコスプレ軍団
ポリマンガ会場のコスプレ軍団
ポリマンガPresidentのDavid Heim氏。オフィスに貼られた『ハウルの動く城』のポスターの前で
ポリマンガPresidentのDavid Heim氏。
オフィスに貼られた『ハウルの動く城』のポスターの前で

FOCAL −プロフェッショナル教育に徹した映像教育機関−

ローザンヌにあるFOCAL(Foundation for Professional Training in Cinematic and Audiovisual Arts)を訪ねた。FOCALは、映画・映像制作およびニューメディアに関する、クリエイティブ、テクニカル、また、起業スキルのトレーニング機関として、スイス政府、カントン州、および業界のニーズによって1990年に設立された。プログラムは、脚本、プロデュース、マーケティング、権利処理、音声、照明、撮影、ポスプロ、アニメーション、配給、上映等細かく分かれ、様々なセミナーやトレーニングコースを実施している。

映像の専門教育機関ということで大変興味を持ち、どのような人材のニーズがあり、どのように育成を行なっているか、最近のスイスの学生はどうか、どのように人を集めているか、など色々な質問をしてみたが、答えは一貫していた。つまり、FOCALはプロフェッショナルのトレーニングにしか興味が無く、既に第一線またはそれに準ずる現場で活躍している人たちが自分の技術や能力で足りないところを補い、学びに来る場所である、と。彼らが自らの足りない点を補強し現場に戻っていき、それが業界のニーズに合えばそれでハッピーであり、無理に受講者集めをするとか、理想の人材像を掲げるとか全体の底上げをするなどへの注力は一切なし。そのあたりはきっぱりと潔い。目的をはっきりさせ、特化することで集まる人が少なくなるどころか却って増すという、基礎的なノウハウを学んだ気がした。
2003年には講師として、かの高畑勲氏を招いたという。

FOCALのPierre Agthe氏
FOCALのPierre Agthe氏
この事業は、競輪の補助金を受けて実施するものです。
http://ringring-keirin.jp
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