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DCAJ news No.138
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著作権リフォーム
〜コンテンツの創造・保護・活用の好循環の実現に向けて〜
開催報告

 

当協会は2月29日、東京・平河町にある全国都市会館2階大会議ホールにて、「著作権リフォーム−コンテンツの創造・保護・活用の好循環の実現に向けて−」と題するシンポジウムを開催した。
日本自転車振興会の補助金を受けた「平成19年度法的環境動向に関する調査研究」の成果発表をかね実施したものである。
本シンポジウムに対する関心は極めて高く、事務局が開催案内をメール配信してから3週間ほどで予定の満席に達し、それ以降の聴講希望をお断りせざるを得なかった。実際、当日の会場は満席となった。事務局としては、会議の性質上、机上でメモをとる必要があり、椅子席や立ち見というわけにはいかないと考え締め切ることとした。
ご参加各位に心より御礼申し上げるとともに、お断りを申し上げざるを得なかった皆様にはご容赦いただけるようお願い申し上げる。
大変有意義なシンポジウムであったので、当日の議論を摘記速報することにした。是非、(聴講できなかった方は特に)ご一読いただきたい。なお、議論の全容は、前記した日本自転車振興会補助事業「平成19年度法的環境動向に関する調査研究」の報告書としてとりまとめ、公表する予定である。

□名称: 著作権リフォーム−コンテンツの創造・保護・活用の好循環の実現に向けて

□日時: 平成20年2月29日(金)14時〜18時

□会場: 全国都市会館2階大会議ホール

□講師一覧(登壇順):
中山信弘 東京大学 法学部・大学院 法学政治学研究科 教授
椙山敬士 虎ノ門南法律事務所 弁護士
小川憲久 紀尾井坂テーミス法律特許事務所 弁護士
奥邨弘司 神奈川大学 経営学部 准教授
横山久芳 学習院大学 法学部 准教授
山神清和 首都大学東京 都市教養学部法学系 准教授
上野達弘 立教大学 法学部 准教授
大橋正春 岡崎・大橋・前田法律事務所 弁護士

□プログラム:
1.開会
・主催者挨拶 鷲見良彦 DCAJ専務理事
2.第1部 基調講演
・特別講演「著作権のリフォームに際し」中山信弘
・講演「著作権リフォームとわが国の対応」椙山敬士
・論点明示「著作権リフォームとベルヌ条約、TRIPs協定」小川憲久
3.第2部 今日的主題
・講演「著作権の間接侵害」奥邨弘司
・講演「フェアユース」横山久芳
・講演「同一性保持権の観点から」山神清和
・講演「著作物等の保護と利用」上野達弘
4.第3部 パネル討論 
・大橋正春モデレータのもと自由討議
5.閉会
・御礼と閉会 DCAJ事務局

□議事概要:
1.開会・主催者挨拶 鷲見専務理事
本シンポジウムには参加の申込みが多く寄せられ、また本日も多数ご来場いただき、コンテンツ関連産業の著作権問題への関心の高さを改めて認識した。
著作権法の改革にあたっては、権利保護と利用者の利益とのバランスが重要であり、DCAJとしても慎重な議論が必要であることは重々承知している。しかし、著作権法の見直しは重要な課題であり、本シンポジウムが将来の著作権法のあり方に関する議論のきっかけとなれば幸いである。

2.第1部 基調講演

写真1:特別講演 中山信弘教授
写真1:特別講演 中山信弘教授

2.1 特別講演「著作権のリフォームに際し」中山信弘
あらゆる人が情報の受け手であり、同時に発信者であるという時代に突入した。普通のユーザが情報の創作者となるということは、既存の著作物を利用した二次的著作物や共同著作物が増加するということも意味している。現在の著作権法は、一部のプロのための法律ではなくなり、より普遍性をもった、万人に関係をもった法律へと変身した。プレイヤーが増大すれば、そこでのルールの変更への要求が出てくるのは当然である。
現在の日本において、厳密な意味で、著作権侵害をしてない人はほとんどいない。例えば、研究のために大学で他人の著作物を無断で1部コピーする行為も、形の上では複製権侵害であり、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金となる。また、ビジネスという観点からは、インターネットを用いて何かを行おうとすれば、多くの場合、複製権・翻案権・公衆送信権等の侵害になる可能性が高く、インターネットを用いたビジネスを行うことの阻害要因になっている。例えば、情報検索エンジンビジネスを行おうと思うと、著作権侵害となる可能性が高く、サーバをアメリカに置かざるを得ないという実情にある。現状のままでは、新しいビジネスが萎縮するか、あるいは違法行為が横行するかのいずれかである。このように著作権法の構造と現実社会との乖離は大きく、この落差を埋めるには解釈では限界があり、立法の問題にも踏み込まざるをえない。

次に人格権の問題がある。日本は世界一強い著作者人格権(特に同一性保持権)が規定されている。立法当時は、人格権を強力に保護することにより、創作意欲は増加し、文化の発展に裨益する、と考えられていたようである。しかし、デジタル情報が増大するにつれ、人格権の処理の困難性が流通の障害となってきた。人格権である以上、権利者といえども契約で処理できにくいため、そのぶんだけ商品の法的リスクを高め、商品価値を下げていることになる。多くの著作者は、自分の作品を広く利用されることを望んでいるはずであるが、強い人格権が邪魔をしている可能性も否定できない。
今の著作権法は、政策的判断、国益的判断が必要となっている。しかし、この点について、わが国の権利者団体の態度は極めて硬い。一例として、YouTube問題がある。確かに現行著作権法上は違法なアップが横行しており、権利者はその防止に躍起になっている。しかしながら、これほどインターネットが発達している現在、YouTubeのようなサイトを世の中から駆逐することは不可能である。発想を転換させ、むしろ手を組んで、その利益の一部を権利者に還元させる方法を考えるべきである。わが国でも、JASRACや角川書店は既にそのような方向に動いている。
将来のITビジネスの形態を予想することは困難であるが、それらが形式的には著作権侵害となる場合も多いと考えられる。新しいビジネスモデルが世に現れたなら、まず拒絶するというのではなく、何とか著作権システムの中に取り込んで、利用・流通の促進と、そこから権利者へ利益をいかにして還元させるか、ということを考えるべきである。そのことは著作者の利益につながる。
また、近年は、知的財産権の発想とは全く異なるコモンズの発想が台頭してきている。OSS(リナックス等のオープン・ソース・ソフトウエア)や、レッシグ教授の提唱にかかるCC(クリエイティヴ・コモンズ)は、情報の独占よりも、共有することにより、社会全体が発展するという発想に基づくものである。これらはデジタル著作権問題の解決の一方策ではあるが、任意ベースのことであり、解決の一端にすぎない。
以上を整理すると、現在の著作権法は、基本的にはデジタル時代にそぐわない。種々の困難はあるものの、いつまでも改革を遅らせる訳にはゆかない。改革の遅れは、新しいビジネスを阻害し、著作物の利用を妨げ、結果的に著作者や著作権者の利益に反するものとなる。このようなことを念頭におき、将来の著作権法のあるべき姿を今から考えておくことは重要なことである。

2.2 「著作権リフォームとわが国の対応」椙山敬士
日本の「新法」は1970年で、もうすぐ40年が経過する。日本の1970年法立法時にはデジタル化、ネットワーク化など念頭におかれていなかった。1976年に現行著作権法を制定したアメリカでは、数人の研究者が著作権法のリフォームについて研究をはじめており、我が国も研究に着手する時期である。
リフォームにあたり、著作物を取り巻く関係者を見つめ直す必要がある。著作物は、「創作」、「製作(商品化)」、「流通」、「享受」という四つの行為からなる。現在は、「流通」が大きな力を持っている。今後リフォームする場合は、「創作」と「享受」を重視するべきである。なかでも、これまで重視されてこなかった「享受」すなわちユーザの利益を優先し、ここで生じた利益を「創作」すなわちクリエイタに適切に還元することが大切である。
パメラ・サムエルソン教授(カリフォルニア大学バークレー校)と同じ手法を採用して、日本法における具体的なリフォーム案(私案)を骨子レベルで考えた。
米国は、法制度全体としてダイナミズムを維持しており、ヨーロッパのように比較的硬いシステムより有利に働いている。法的責任の基準が曖昧であるなら、技術やビジネスに対する投資は萎縮し、その分イノベーションは遅れ、経済的競争力をなくすことになる。日本においても、この点を十分に考えるべきである。
著作権リフォームは早急に検討して然るべき問題であると考える。基本的な命題は何も難しくものではなく、「新技術の良いところを生かし、悪いところを抑える」、ということに尽きる。技術進歩は早晩、社会のインフラを変える、というのが普通のなりゆきである。既存の技術や制度に固執するだけでは、技術進歩に対応できなくなる。コンテンツの豊饒化と普及の促進、技術の発展を共に満たす法制度を構築すべきである。

2.3 著作権リフォームとベルヌ条約、TRIPs協定」小川憲久
著作権リフォームを全面的な法体系の構築と考える場合、ベルヌ条約、TRIPs協定、さらに、WIPO著作権条約との関係を考える必要がある。
椙山私案とベルヌ条約との関係では、「主題(対象)」、「保護基準」、「排他権−財産権」、「排他権−人格権」、「保護期間」、「権利制限」のいずれも、ベルヌ条約に抵触しないと考え得る。次にTRIPs協定との関係、WIPO著作権条約(WCT)との関係でも全く抵触しない。これらの条約においては著作権が排他権という権利であることは前提とされているものの、その具体的救済手段についての特段の規制はなく各国の立法に委ねられているからである。したがって、現行法における救済手段を固定的なものとして捉える必要はなく、合理的な救済方法を制度化することに問題はない。少なくとも本日の椙山案は、いずれの条約にも抵触しないと考えることができる。
なお、WCTが著作権保護にもバランスが要請されることを明記しているように、必ずしも著作者の権利を保護することだけが著作権法のあり方とはいえない。著作権リフォームの提言は著作権の権能を弱めるためだけにあると理解されやすいが、極めて強力な著作者の権利と利用者の権能を含む公益とのバランスをとるという考えに立った提言であり、今後、議論が深まることを期待する。

3.第2部 今日的主題

3.1 「著作権の間接侵害」奥邨弘司
現行著作権法には間接侵害についての規定はない。そこで本報告では「著作物を物理的に利用した者以外の者が、当該利用行為に関連して責任を負うこと」と一応広い目に定義しておく。この定義に当てはまる従来の事例の多くでは、手足論やカラオケ法理を適用して、間接侵害者を規範的に直接侵害者と評価することが行われてきた。これは、侵害を幇助した者に対して差止めを認めることに否定的な裁判例の傾向を踏まえた工夫なのだと思われるが、継ぎ接ぎ感は否めず、リフォームは避けられない。
間接侵害制度に期待される作用としては、機器やサービスの提供行為等を停止させることにより無数の直接利用行為を一網打尽とする作用、機器等の提供行為者等を念頭に置いたDeep Pocket作用、権利制限規定を隠れ蓑とする者への対抗作用をあげることができる。もっとも間接侵害制度には、問題のない行為まで一網打尽にする混獲現象、権利者と間接侵害者の間の過分配現象、権利制限規定の空洞化現象といった副作用も存在する。制度設計に際しては、作用と副作用のバランスが必須である。
間接侵害制度のリフォーム案として、直接利用者の意思(≒対象物)決定への影響度合いと物理的利用行為への物理的影響度合いとの相関関係で対象行為を把握する(一網打尽作用の重視)一方で、直接利用行為が適法である場合には間接侵害を否定すること(空洞化現象および実質的な許諾権の拡大を回避するため)を提案したい。なお、リフォーム後の制度では、間接侵害者に対する差止めを認めるべきであるが、差止めの範囲は絞り込まれるべき(混獲現象回避のため)である。

3.2 「フェアユース」横山久芳
著作権法は、特別な場合、著作権者の権利を制限して利用者が自由に著作物を利用することができるようにしている。これが権利制限である。権利制限の規定の仕方には、たとえば私的な利用、学校教育現場での利用といったように個別状況を限定列挙して規定する方法と、一般条項の二つがある。後者がアメリカ法のフェアユースである。我が国は個別限定列挙型であり、一般条項をもっていないが、諸外国には個別規定と一般条項の両方を持つ国がある。
アメリカ法は、一般条項すなわちフェアユース(107条)と、詳細な権利制限規定(108条〜122条)を併置している。裁判所は、「利用の目的と性質」、「利用された著作物の性質」、「利用された著作物の全体との関連における利用された部分の量と質」、「利用された著作物の潜在的な市場や価値に与える利用の影響」によってフェアユースに該当するか否かを判断する。フェアユースのよいところは、技術や社会の変化に即応して柔軟な運用が行われることである。
イギリス法には、フェアディーリングと呼ばれる条項がある。 アメリカ法のような包括的な一般条項ではなく、個別的な制限条項の一環として抽象的な中間的一般条項が設けられているという感じである。フェアディーリングと認められるのは、「私的学習・非営利の研究を目的としたフェアディーリング」、「批評、評論を目的としたフェアディーリング」、「時事の報道を目的としたフェアディーリング」、「付随的挿入」の四つ。
ドイツ法には自由利用と付随的利用という規定がある。自由利用は、「作品を相互に比較し、原告作品の創作的特徴が色褪せている場合に侵害を否定」するもので、権利制限というよりも権利範囲を明確にするための規定である。我が国では、しばしば写り込み(写真や映像を撮ったときなどに、その背景に絵や建物が入ってしまうこと)が問題になるが、ドイツでは付随的利用はOKとなるので、問題にならない。
我が国にも一般条項を立法するべきであると考える。その規定の仕方はアメリカ型かイギリス型のいずれかが考えられるが、アメリカ型に関しては条約上の義務(スリーステップテスト)との関係で検討すべき問題も含んでいる。なお、フェアユースが問題となる行為類型に関しては、裁判所の裁量によって、差止命令を否定し、金銭的賠償で解決を図る折衷的な制度も検討に値する。

3.3 「同一性保持権の観点から」山神清和
事前に頂いたアンケート結果では、同一性保持権に直接言及したものは3 件であった。しかし、よく見てみると「フェアユースの規定を導入すべき」という趣旨の回答が圧倒的多数を占め、そこには恐らく著作者人格権の制限規定についても同様に導入すべきという考えが隠されているのではないかと思われる。また、圧倒的多数の回答は、権利制限を拡大する方向で考えているが、2 名ほど権利者サイドの見解を採られる方がおられたので、そのような立場からの検討も加える。
我が国の同一性保持権の規定は、ベルヌプラスの規定である。ベルヌ条約は「自己の名誉又は声望を害するおそれのあるものに対して異議を申し立てる権利」であるが、日本法は「その意に反して・・・変更、切除その他の改変を受けないものとする」となっている。これが主観要件というもので、中山先生が世界一強い権利とおっしゃったものである。
同一性保持権が強すぎると、デジタル化に対応できない、コンテンツの流通促進を阻害するという問題が生じうる。例えば、写真素材提供サービスで写真をダウンロードしたユーザが、その写真にどの程度加工すると同一性保持権の侵害になるかを考えた場合、現在は著作者の主観によることになるので予見可能性が低い。
現行20条2項4号は、「前3号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」には同一性保持権が及ばないとされているが、この規定は従来厳格に解釈されてきており、拡大することは難しい。したがって、問題解決には20条の修正又は類型追加が必要ということになる。しかし、20条2項を現在の4号だけにするような一般条項の導入までは踏み込めないと考える。

3.4 「著作物等の保護と利用」上野達弘
当初与えられた課題は、「利用促進関連(登録・裁定・保護期間・契約等)」というものであった。これは、他の3テーマ以外のものという性格も有するが、同時に総括的な意味も有する。というのも、本シンポジウムには、「著作権制度が著作物等の円滑な利用の妨げにならないように」著作権法をリフォームするという方向性がうかがえるからである。実際、最近では「利用の円滑化」「著作物等の流通促進」といったことが、自明の「目指されるべき目的」として声高に主張されることが多い。
例えば、保護期間延長問題も著作物等の「利用促進」に関連して論じられることがある。ただ、二次創作や表現活動の自由を確保すべきだというのであれば、それは保護期間の長短の問題というより、著作権それ自体の問題のはずである。そこで、仮に保護期間を延長するとしても、延長登録制度、有償公有制度、権利制限拡大などといった方策を併せてとることが考えられる。
また、技術を活用した権利処理の促進、あるいは裁定制度の拡大によって著作物等の利用を促進する方策もあり得る。
このように「著作物等の利用促進」のためにはさまざまな方策が考えられる。ただ、そこではどうやら「著作物等の利用促進」が望ましいものであることは自明の前提とされているようである。しかし、「著作物等の円滑な利用」が促進されるべきだというものは、それ自体として正当化を要する一つの原理ないしドグマなのではなかろうか。そもそも「著作物等の利用促進」がなぜ望ましいといえるのかということ自体、実は自明のものではないのではなかろうか。
もっとも、このことは「著作者等の保護」についても当てはまる。つまり、「著作者等の保護」というものも、それ自体として正当化を要する一つの原理ないしドグマなのである。その意味では、「著作者等の保護」が望ましいことだということ自体も必ずしも自明ではないかも知れないのである。
このように考えると、「著作者等の保護」と「著作物等の利用」は、どちらかが優先すべきという関係にはなく、それらはともに、可能な限り満たされることが要請される「原理」の性質を有するといえよう。
そうすると、われわれに課された課題は、これらいかに調整するかという問題なのだと理解できる。一見当然のことのようにもみえるが、このような認識が議論にもたらす意義は過小評価すべきでなかろう。
また、「著作物等の利用促進」をはかるといっても、著作権制度のリフォームだけでこれを実現できるのかについては疑問が残る。いくら著作権制度をリフォームしたところで、ビジネスとして成り立たなければ自発的に利用されることは期待できないからである。その意味では、「著作物等の利用促進」を目指すとしても、著作権制度が果たせる役割と限界については自覚する必要があろう。というのも、著作権制度に対する過大な期待または責任の押しつけは、さほどの効果のないヒステリックな制度改正や、場合によっては大きな副作用をもたらすおそれも否定できないからである。

4.パネル討論

写真2:モデレータ 大橋正春弁護士
写真2:モデレータ 大橋正春弁護士

○大橋:本シンポジウムはDCAJに設置された法的環境委員会の日ごろの研究成果を発表するものである。したがって、このパネル討論は委員会の議論の延長線上にある。ここまでの講演は、ベテランの弁護士と新進気鋭の若手法学者が委員会の中で発表し、委員会の議論を経て発表したものである。

参加者募集をはじめたところあっと言う間に満席になった。しかも、アンケートで多くの方に意見を寄せていただいた。これは一体何なのかを考えてみた。
まず、著作権というものが日々の生活で意識しなければならないほど身近になった。言い換えれば、著作権に関係するプレイヤーがユーザにまで拡がったことがある。
次に、著作権法に対する度重なる一部改正で煩雑な法律になってしまったことがある。一般ユーザが著作権問題の関係者になったのに、条文はユーザにはとても理解しがたいものとなってしまったということである。
さらには、権利者も利用者も、あらゆる関係者が現在の著作権法に満足していないということであろう。
リフォームにあたってユーザの主張をどこまで取り込むかはよく考える必要がある。椙山委員は享受者すなわちユーザを重視した法設計が必要という主張であるが、改めて説明いただきたい。
○椙山:著作権法の基本原則は保護と利用のバランスである。これまでの我が国法は、利用者の利益をあまり重視してこなかったと考える。また、保護と言っても一体誰を保護していたかと言えば、作家やクリエイタなどの創作者ではなかったのではないか。今後は創作者をきちんと保護するべきである。
○大橋:仮にリフォームをした場合、現在12個ある支分権の一部がなくなることもあるが、それは立法上は問題にならないのか。
○小川:今日までの権利は今日からはじまり権利者の死後50年保護される。明日からその権利がなくなればその部分は権利が発生せず、行使もなされない。ただそれだけのことで、立法上の問題はない。なお、私は権利の数を減らすという考えは持ち合わせていないことを、念のため申し添える。

写真3:パネリスト 左から、上野達弘准教授、小川憲久弁護士、奥邨弘司准教授、椙山敬士弁護士、山神清和准教授、横山久芳准教授
写真3:パネリスト 左から、上野達弘准教授、小川憲久弁護士、奥邨弘司准教授
椙山敬士弁護士、山神清和准教授、横山久芳准教授

○大橋:フロアにいる委員もご発言いただいて結構です。富士通の亀井さんどうぞ。
○亀井:上野委員の発表に利用が過度に阻害されないように権利制限によってバランスが実現されているというお話があったが、技術によって保護が行き過ぎる事に対して著作権法が何も規定していないことについて、どう考えるか。
○大橋:河野さんどうぞ。
○河野:上野先生の「著作物の利用の円滑化」というお話に関して、技術の活用による排他権行使と報酬請求権の関係について、一定の範囲において排他権の行使を制限し報酬請求権のみ認めるというアプローチはあり得るか。
○大橋:凸版の大野さんどうぞ。
○大野:横山先生の「フェアユース立法」については、来場の方々の関心も高いところ。特に現行の制限規定列挙を生かしつつ、一般的権利制限規定を導入することに趣旨賛成しているが、その場合、フェアユースに該当するかどうかの要件をきちっと決めておかなければまずい。アメリカのようなやや漠然とした要件では、かえって裁判が多くなり混乱をまねく恐れがある。日本にフェアユースを導入する場合には、ガイドライン、政令などによる運用上の補足が必要ではないか。
○大橋:確かにそうである。フェアユースというものを与えられたら、好き勝手にやり   たい者は、何でもフリーだと言い張るだろう。逆に、慎重なビジネスをしている健全な企業は、フェアユース規定が与えられても今まで通り何もしないということになる。ヤマハの三澤さんどうぞ。
○三澤:著作物の利用促進を著作権リフォームの目的とすること自体に議論が必要なことは承知だが、産業界としてはそれを目的としたい。
現実問題の一つとして、利用したい著作物の権利者が誰か判らないために利用でないことがしばしばあり、権利者にとっても不利である。著作権等管理事業法で登録されたJASRACなどの管理事業者が有するコンテンツDBに登録させることに対して何らかの法的効果を与え、権利情報を貯めて行くのがよいのではないか。これは権利発生の要件ではなく、ベルヌ条約違反にもならないと思われる。
○大橋:現行著作権法を見直すべきであるという声が大きくなっているが、議論はなかなか進んでいない。今回のシンポジウムが、我が国における議論の契機となれば幸いである。

5.閉会 DCAJ事務局・山本純

ご登壇者、ご来場の皆様に御礼申し上げる。大変深遠なテーマであり、多くの関係者による慎重な議論を踏まえる必要があることは重々承知している。しかし、こうした大きな問題を議論する場合、何のたたき台もなく一般論で話していても議論は進まない。誰かがたたき台を提示する、もしかするとそれは叩かれ台になるかも知れないが、それでも最初の案を提示しなければ、対案も修正案もないことになる。何人かの米国や欧州の研究者は、先んじて案を出している。
今回のシンポジウムでは、中山先生から将来の著作権法のあり方を考えるための視座をいただき、椙山先生より将来の法の骨格の提示があり、小川先生よりその国際条約との整合性の問題指摘があり、3人の法学者から個別条文の具体的な立法案が提示され、最後に上野先生から椙山先生に対する最初の対案と思われる見解が表明されたことは大変有意義であった。今後、皆様のもとで検討がなされ、幾つもの対案や修正案が出され、議論が活発化し、それらが収斂されたときが、リフォームのときと考える。
最後に、ご登壇者全員に拍手で感謝の意を表して閉会とさせていただく。



この事業は競輪の補助金を受けて開催しました。

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