進化するコンテンツビジネスモデルとその収益性・合法性
−VOCALOID2、初音ミク、ユーザ、UGMサイト、著作権者
当協会は平成19年度、日本自転車振興会の補助金を受け「デジタルコンテンツの知的財産権に関する調査研究」を実施した。このたび、1年間にわたる調査研究の成果に基づくセミナーを開催したので、以下に速報する。
□日時: 平成20年3月17日(月)15時〜18時
□会場: 虎ノ門パストラル新館6階「アジュール」
□講師一覧(登壇順):
| 森 祐治 |
株式会社シンク 代表取締役社長 CEO |
| 伊藤康之 |
株式会社NTTぷらら 映像ビジネス本部 映像サービス企画部長 |
| 剣持秀紀 |
ヤマハ株式会社 イノベーティブテクノロジー開発部
サウンドテクノロジー開発センターSAグループ マネジャー |
| 伊藤博之 |
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 代表取締役 |
| 北村行夫 |
虎ノ門総合法律事務所 弁護士 |
| 小倉秀夫 |
東京平河法律事務所 弁護士 |
| 戸叶司武郎 |
ヤマハ株式会社ヤマハ株式会社 法務・知的財産部
NT知的財産グループ 東京駐在マネジャー |
| 丸橋 透 |
ニフティ株式会社 法務部 部長 |
□概要:
◇「コンテンツ・ビジネス・モデルとは何か」森祐治
コンテンツビジネスのモデルは、投資回収の仕方によって直接回収型と間接回収型とに分類される。直接回収型ウィンドウの典型として映画の劇場上映やパッケージ販売がある。間接回収型としては民間テレビ放送がウィンドウの典型である。今後は、ウィンドウ戦略によってコンテンツの価値を最大化していく努力が重要である。
◇「インターネット・コンテンツ流通サービスの現状と課題」 伊藤康之
NGN(次世代ネットワーク)サービスにより、固定電話の長所である品質保証や高セキュリティ、インターネットの長所である高速大容量で低コストな通信環境が一つに統合され、多様なコンテンツ流通サービスが実現する。
◇「歌声合成システムVOCALOID」 剣持秀紀
VOCALOIDを基礎に開発された初音ミクが、UGM(User Generated Media)ユーザに人気である。最も人気の高い動画は「みくみくにしてあげる」で、動画投稿サイトのニコニコ動画では3月16日時点で380万回以上再生されている。カラオケ楽曲リストにも入っている。あるユーザが楽曲を作り、別のユーザが楽曲に合わせた画像を制作するなど、ネット上の共同作業にまで発展している。
◇「初音ミクと著作権」 伊藤博之
初音ミクは、過去のDTM(Desk Top Music)ソフトとは比較にならない予想外の売れ方を示した。UGMサイトでの盛り上がりがその要因と考えられる。クリプトン社は、ミクのイラストを3枚作成し公開したに過ぎない。あとはユーザが、イラストやフラッシュアニメなどを創作し、盛り上げてくれた。こうした二次創作を支援し、またユーザが相互に創作物を利用し合うためのサイト「ピアプロ」を2007年12月に公開した。ここでは、二次創作に関わるガイドラインを定め、非営利・公序良俗に反しない範囲で自由な創作を認めている。
3.パネル討論の部
◇パネル討論「新たなサービスとその収益性・合法性」
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| 左から、北村氏、伊藤康之氏、小倉氏、戸叶氏、丸橋し、森氏、剣持氏 |
セミナーの最後に行われたパネル討論では、「初音ミク」関連サービスのような新たなサービスに関わるビジネスモデルを構築する際にクリアしなければならない課題として、収益性と著作権法上の合法性の二つに焦点を当てた。
関係するプレイヤーがwin-win関係でそれぞれ収益を確保することのできるビジネスモデルでなければ、利害調整に時間を擁しビジネスは遅々として進展しない。取引流通の目的であるコンテンツは一般に著作権法の保護対象であり、著作権法上の合法性が確かなものとなっていなければ、当該ビジネスに関わるプレイヤーは法的責任のリスクと隣り合わせということになる。
モデレータ北村弁護士は、議論を以下のように総括した。
今回のVOCALOID、「初音ミク」の流れは、インターネットという環境の中で、ようやく本当の意味でインタラクティブなコミュニケーションが具体的な商品の形あるいはサービスの形をとってあらわれてきたと見ることができる。通常、コンテンツはメディアを介して多くの人に届けられるが、現在は、多くの人がメディアであるパソコンと公衆回線を結合して手に入れているため、消費者がメディアを操作する側に立ってあらわれてくる。つまり、消費者がコンテンツビジネスのビジネス主体としてあらわれてくる。
他方、これまでのコンテンツビジネスでは、メディアとメディアの周辺で収益が大きく動く傾向があった。今回の動きがこういう仕組みにどういう影響を与えていくか。楽観的な見方も、悲観的な見方もあるだろう。
いずれにせよ、評論家的に傍観するのではなく、こういう新しいソフトウェア、新しいビジネスモデルをいかにして既存の仕組みに取り込んでいき、コンテンツの質と量の活性化につなげていくかという課題を、我々自身の手で解決していかなければならない。
この事業は競輪の補助金を受けて開催しました。