

9月4日(金)に続き、9月9日(水)に開催されたセミナーについてのレポートである。
今回のテーマは、「アカデミー賞のインパクトと日本コンテンツ海外展開戦略」である。
デジタルコンテンツ協会・専務理事、鷲見良彦の挨拶につづき、コンテンツ産業の市場規模(DCAJ宮島慎一)では、まず、コンテンツ全体の市場規模は13兆8282億円前年比2.6%減となり、2年連続の減少傾向であること、そのうちデジタルコンテンツは5兆8964億円前年比5.9%増、となっていること。海外展開状況として、特に海外出荷の多いゲームについて、国内市場は大きな変化はなく一定水準で推移しているが、2006年以降、海外市場へは大幅に伸びている。他に公開されている海外出荷データは、映画とオンラインゲームしかなく、金額も映画で70億円程度、オンラインゲームで3億円程度に留まっている。各国のコンテンツ関連基礎情報でみると、人口あたりの普及率では、中国は諸外国に比べて低いが、人口が多いこともあり、絶対数では、ブロードバンド加入者数や携帯電話加入者数ではトップになっている。音楽では、各国、CD等の録音楽曲売上が下がっているが、音楽配信売上は上がっている。この中で、日本、中国では携帯電話配信の割合が非常に高くなっている。
その後、白書編集委員長で、専修大学教授の福冨忠和氏をモデレータに、執筆者によるプレゼンテーションが行われた。
株式会社シンク代表取締役社長の森祐治氏は、「日本コンテンツの海外展開状況」について解説した。まず、アメリカでの、「崖の上のポニョ」の現在の状況、封切り25日で14位、初め9位、13位、14位と推移、890館で公開、累積の興行が13億円弱で日本映画としては健闘している。93年にポケットモンスターが25億円を記録している。このように日本映画が健闘しているのは、極めて最近の状況である。日本のコンテンツが海外に良く知られるようになってきて、7,8年、しかし、なぜ売上がここまで低調なのか。ずっと疑問に思ってきた。知的財産としての収入は、専門の事業者が発表している数字しかなく、それ以外の事業者の売上は反映されていない事実が長く続いている。関係者にヒアリングすると、大体の人から「儲かっていない」と言う話が聞かれる。しかし、海外に目を転じると、そうでもないことが見える。
米国においては、コンテンツ政策は、世論操作、産業支援策として誕生した。
80年代には、性能だけでなく、デザインやメーカ名によって選択することが知られるようになった。90年代には、ブランド資産という概念が出てきて、コンテンツという無体物に対しても価値が認められるようになり、国自体もこうした政策をしようとした。その例が、90年代半ばから末、英国の「クール・ブリタニアCool Britania」である。このとき、日本のゲームや、デザイン要素をもった家電に注目して「クリエイティブ産業」の重要性を捉えていた。
2002年、マッグレイ・レポートでは、日本のアニメーション、マンガ、音楽に注目が集まっているが、多くの課題がある。理論的な分析と解釈が行われていない。戦略的な情報発信力の欠如。このままでは潜在的な優位は萎んでいく。結果、日本のブランドイメージは貧弱になる可能性がある。と言われた。実際、2002年から2005年までのアニメーション企業の海外売上は伸びたが、2005~2006年をピークに下がり始めた。Cool Japanともてはやされたことがあるが、実態はDVDが売れたことの売上であった。その後、ブロードバンドが普及するとパッケージの売上は低下する。
振り返ってみると、70年代、意図しないで勝手に流れていった。カラーテレビの普及期、アニメのカラー作品は日本製しかなかった。80~90年代、普及していく過程で海外各地で刷り込みが行われ、90年代、海外で再生産が行われて、日本が再発見された。
フリーライドと呼ばれる、欧州で行われた、作品を勝手に改変・販売されたこと。海賊版である違法複製。ネットによる違法流通。によって、日本コンテンツは有名になるが、売上につながっていない。
今後、国際共同開発手法を用いたパイプラインの構築を進めることが必要。現在、日本で行われている、企画から販売まで行う製作委員会方式は、海外市場への成功例が少ない。企画段階から海外と共同で行い、融資を受けて国際分業制作を行い、各国に配信することを考えることが必要。
「サイバースペース」という言葉を生み出した世界的なSF作家ウィリアム・ギブソンは2001年のエッセイで、「なぜ日本に注目するか」という理由を語っている。消費について、日本は「世界のアーリーアダプター」である。創造において、日本は「未来の製造国」である。日本コンテンツにとって世界市場という土地は、すでに先人たちの「姿と戦略なき侵略」に始まる浸潤・浸透、そして世界の人々による再生産が始まった現在耕され、豊穣な実りが見える状態になっている。従来、そんな状況を自身では認識できていない一方、他国から脅威として受け取られ、各国コンテンツ政策の活性化を招いていた。「未来の製造国」と認知されながら、果実を得られなかった現実を受け入れ、海外市場からの期待に沿う進化の実現が急務である。したがって、世界のコンテンツのハブ=キャピタル(首都)を目指すべきである。
キネマ旬報映画総合研究所所長の掛尾良夫氏は、「映画産業の現状と海外展開戦略」について解説した。日本映画産業は、90年代が最悪で、1993年に映画館数が17百台に落ちた。その後、21世紀に入って、映画人口が復活したが、これはシネマコンプレックスの普及等が起因しているといえる。この10年を見ると、興行収入は、ほぼ横ばいであった。しかし、公開本数は、98年の555本から08年の806本。スクリーン数は、98年の1993から08年の3359に増えている。これは、1本あたりの売上が減ったことになる。
日本映画の良いところは、多様性があり、大手が作る娯楽作品、アニメーション、世界の映画祭で高い評価を受けるアート系の作品が公開されて受け入れられていた。
東宝、松竹、東映、大手三社が興行収入の大部分を占めている。一方、三社以外では本数で84.5%あるが、興行収入は16%しかないのが現状である。
02年、日本映画の比率が過去最低の27%まで下がったが、その後増え続き、08年には60%近くに達した。これは、全体の興行収入あまり変わらないなかでは、外国映画の興行収入が大幅に減少したことを意味する。世界的に見て、ハリウッド・メジャーは減少していないが、日本だけが減少している現象がある。つまり、日本映画のインディペンデント系が苦戦し、ハリウッド映画が苦戦し、結果、多様性が危うい状況になってきている。
04年からの日本映画の公開数の増加は、テレビ局と東宝のタイアップによるヒット作が多く生まれたことからくる。また、IT関連企業や広告代理店やファンドが映画に参加し、公開本数が増えたが、それらはシェアをとれなかった。結果、大手以外は非常に厳しい状況になっている。外国映画配給会社では倒産もでている。また、映画館の閉館も出てきている。
大手、テレビ局は、国内市場で収益を確保できているため、海外に出ることも共同制作することも考えていない。追い詰められていないからとも言える。
一方、韓国、台湾、香港の映画プロデューサー達は、中国を中心に共同制作を始めている。これは、自国の市場が小さいため組まざるを得ないためである。
すると、日本のインディペンデント系は海外に出て行かないと活路を見いだせないと。
アニメーションやゲームに比べて、映画は感情表現が深く入ってくるため、国際共同制作は難しくなり、結局、ミニハリウッド映画を作っていくしかなくなる。
ハリウッド映画は、世界中に配給しているため、無国籍映画になっている。
国際共同制作ではエンターテインメント作品を作ることになってしまっている。
日本の若い世代で海外に出て行っている人達がいることが次世代のプロデューサーとなることに期待したい。
株式会社アニメアニメジャパン代表取締役社長の数土直志氏は、「アニメーション産業の現状と海外展開戦略」について解説した。まず、現状について、縮小傾向が続いていて、08年は2201億円、前年度比8%減、内訳で見ると、テレビ放送とビデオ販売(ビデオグラム)が大きく減少している。ビデオ販売では、海外作品が減少し、日本のマニア層向けは堅調であったが、08年にはマニア層向けも減少している。これは、制作本数の減少とビデオグラム市場の縮小が大きな要因である。
一方、周年ビジネスが割と好調、例えば、ガンダム30周年で巨大なガンダムを見に多くの人が集まる。キン肉マン30周年でビデオグラムやキン肉マン消しゴムが売れる。懐かしさもあって、当時ファンであった大人が購買層となっている。
劇場興行が比較的好調。アニメに関連したライブイベント、体験型のビジネスが成長している。
劇場アニメーションでは、キッズ・ファミリー向けが活発化する一方で、マニア向けでも動きが出ている。小規模の劇場公開のアニメーションがブームになり、DVDの売上増につながっている。これは、作品が劇場でしか見られず、劇場に行けないファンの多くがDVDを購入したためと見られる。また、劇場に行くことは、単に見るだけでなく、そこで見ている人たちと見ることを共有することになり、ライブイベントビジネスにつながっているのではないか。
東京国際アニメフェア、ワンダーフェスティバル、東京ゲームショー、東京おもちゃショー、コミケ、これらでは数十万人が集まる。デジタルなものはコピーできるが、経験はコピーできない。日本だけでなく、フランスでのジャパンエキスポでは、10万人規模で集まっている。
人口が減少になると国内ではシェアの取り合いでしかなく、海外に出て行くしかない。
海外での売上金額は国内と比べるとかなり低い。しかし、シェアとしてみると既に30%程度にまで達している。ので、シェア拡大を進めるとバッシングになってしまう。シェア拡大ではなく金額を上げる試みが必要か。
日本のアニメーション市場、2008、2009年数字的には厳しい、必ずしも未来が暗いわけではない。海外のアニメーション市場、現状伸び悩み、ライセンス収入のみ、でも人気は高い、回収する方法を考えなければならない。日本のアニメーション、海外での評価は高い、商業アニメーションとしての評価も高い、アートとしても実力のある国の一角として評価されている。
その後、ディスカッションとして、海外展開戦略についての議論、質疑応答が行われた。それについては省略するが、予定時間を大幅に超えることになり盛況であった。
![]()