

2009年10月、ニューヨーク、ワシントンのアメリカ2都市を訪問し、アメリカのコンテンツ産業の市場動向を調査した(主な訪問先は以下)。2回に分けたレポートの第2回目を報告する。
・Motion Picture Association of America (MPAA)
・Magazine Publishers of America (MPA)
・JETRO NY
・Interactive Advertising Bureau (IAB)
・Out-of-home Video Advertising Bureau (OVAB)
・New York Public Library (NYPL) ※ネットでの電子図書貸出(e-NYPL)を体験
アメリカ基礎データ
国民1人あたりのGDP 46,195US$(GDP:14兆2650万US$、人口:3億880万人)
※日本:国民1人あたりのGDP 38,387US$(GDP:4兆9112万US$、人口:1億2794万人)
※出典 ITU World Telecommunication / ICT Indicators 2009(2008年データ)
IABは1996年に設立されたインタラクティブ広告の団体で、会員企業はアメリカのインターネット広告企業の約86%(400社以上)が加盟しており広告産業の振興、規制・ガイドライン作成、効果測定、市場調査などを行っている。
インターネット広告収入の推移を図表1に示す。
2008年の収入は234億4,800万US$(前年比+10.8%)と順調に成長し、新聞、テレビに次ぐ広告メディアとなっている。
2008年インターネット広告収入の内訳トップ 5は検索系広告(リスティング広告など)45%(前年比+3%)、バナー21%(前年同様)、求人広告14%(前年比-2%)、リッチメディア広告7%(前年比-1%)、Lead Generation 7%(前年同様)となっている。
Lead Generationとは何らかの申込サイトでオプトインしている連絡先に向けて、その登録している個人情報・属性情報・パーソナル情報を利用する広告である。この手法から考えると最終的にマーケティング広告をする媒体としてはメールが一番妥当かと思われるため、その意味からすると日本語でのメールマーケティングが妥当な意訳と思われる(IABの定義するEmail ad.はメールのテキスト/HTML上に付加する広告のことで、2008年は全体の2%がEmail ad.に相当)。
| 図表1 インターネット広告収入の推移 |
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| 出典:IAB Internet Advertising Revenue Report (IAB) |
直近である2008年上半期と2009年上半期の比較では-5.3%となっており、経済状況の影響を受けていることが窺える。
IABによると昨今の不景気が影響しているとのことである。例年特に多くの広告費を費やしている自動車や金融業界が広告費を大幅カットしたことが大きい(それぞれ前年同時期比-31.1%・同-24.3%)。この不景気の中でも通信業界の広告費は+7.5%となっていることは今年のトレンドとも言えるだろう。
最近最も大きな影響を与えているものはMy spaceやFacebookに見られるようなソーシャルメディア(SNS)やブログである。IAB(Nielsen)によると、2008年12月時点でSNSやブログはインターネットで人々が費やす時間のなかで4位となっている(1位検索エンジン、2位ポータルサイト、3位ソフトウェア関連、5位Webメール)。その中でも世界最大のSNSであるFacebookの発展は目覚ましく、主要10ヶ国トータルで556%の成長率となった。その発展を牽引した年齢層は若年層ではなく35歳~49歳であるM2層(+12.4%)やF2層(+11.7%)であるという。経済がどういう状況にあろうとも、SNSやブログなどのソーシャルメディアユーザーが今のキーであり、ターゲット広告に有効な手段であると認識しているとのことであった。これらのソーシャルメディアを広告手段として自然な形でいかに活用していくかが常に話題となっているというのも正直なところだと語った。
昨今話題になっているWebマーケティングの課題としてはFacebookやTwitterに見られるSNSのフレンド承認及びフォローがセキュリティを自らかけなければほぼ勝手に行われることである。特にFacebookは企業アカウントを通じてマーケティングとして使われる場合もあることから、その情報をどこから得るのかに「気持ち悪さ」を感じる消費者もいるようである。
この課題に対応して、IABを含むアメリカ広告業界等5団体が共同で消費者のデータを収集するWebサイト向けの自主規制ルールを2009年7月に発表している。『Self-Regulatory Principles For Online Behavioral Advertising』とよばれるものであり、特に行動ターゲティング広告が対象となる。このルールは広告主とWebサイトに対し消費者にデータを収集していることを明確に開示し、消費者が自分の情報を管理できるようにすることを求めている。アメリカ連邦取引委員会(FTC)が行動ターゲティング広告に対するより強力な自主規制を求めたこと、消費者団体からの要望、法規制による過剰規制でなく自ら規制することでインタラクティブ広告産業の健全な発展を促進することなどの理由により策定された。尚、この業界規制は2010年から施行されることになっており、IABによると業界内で特に問題が発生することもなく、スムーズに施行されるようである。
この『Self-Regulatory Principles For Online Behavioral Advertising』では以下7つの行動指針を打ち出している。
OVABはデジタルサイネージに対するプレゼンス向上やデジタルサイネージ業界の促進を図る団体であり、2008年12月にデジタルサイネージの視聴者測定指標の標準化ガイドラインを発表している。
図表2はOVABによるデジタルサイネージ視聴者測定の概念図である。
| 図表2 デジタルサイネージ視聴者測定の概念図 |
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Average Unit Audience(平均視聴者単位)による測定はネット上の動画広告など他広告メディアの測定単位であるOTS(Opportunity To See)に非常に近い。ただサイネージはTVCMのように画面をずっと見なければならないという性質ではないことより、その「画面」に少なくとも気づいたかどうかという点で視聴率を計ることを追加しなくてはならない。その意味で、このOVABの視聴者測定指標はある特定の広告コンテンツの内容に対する効果測定ではなく、一定の時間単位で「画面」を認識した人数を測定するメソッドだということにも注意しなくてはならない。
また、ガイドラインでは測定に関して詳細には触れられていないが、デジタルサイネージの影響や広告効果に関しては配信するコンテンツそのものがブランディングなどの「広告」なのか、何か特定の商品などに対する「販促」なのかによって実際の影響力や測定は大きく異なることが理由とのことであった。
効果測定する際の方法としては、現状最も多いのはアンケート方式(謝礼は2$off クーポンなどが主流)。他にはリサーチ会社を使ったウェブ回答方式、Arbitron社のPPM(Portable People Meter)というポケベルのような形状の専用計測端末を対象者に配布する、などがある。
測定する際に注意しなくてはならないのは、プライバシーと属性情報のようなパーソナル情報の保護である。こういった情報は米国ではPII(Personal Identifiable Information)と呼ばれている。日本でも昨今言われているように、特にカメラで顔認識をする場合やGPS付携帯などで消費者行動をトラックしている場合など、デジタルサイネージによって生活者自身がログを「取られて」いるという「気持ち悪さ」を感じるケースも充分ありえる。行政規制などの規制は現在ないが、作成するとすればIABが中心となって業界規制をつくるはずとのことであった。
現在、アメリカでのサイネージへのコンテンツの供給方法はinternet とsatellite + DVDで二分しているとのことであった(但しDVDでの供給は恐らく5%以下だろうとのこと)。
尚、サイネージ関連の統計を取っているpqmediaの記事によると、2008年アメリカのデジタルサイネージ市場は24億3,000万US$(前年比+11.2%)となっており、2002年から2008年にかけて約3倍の市場にまで拡大している。2008年単独で見ると、経済不況の影響を受け2007年の+24.5%という成長率と比較するとややスローダウンしているものの、やはり広告メディアとしては最も勢いのあるメディアの1つであると言えるだろう。
2008年、全世界で61億1,000万US$(前年比+11.2%)というデータより推計すると、アメリカ市場は世界の約40%を占めており、アメリカはデジタルサイネージ業界をリードしている国であると言えるだろう。
参考にレポートの最後にアメリカデジタルサイネージの状況を納めた写真を掲載しておく。
New York Public Library(NYPL)は、100年以上の歴史があるNPO運営の私立図書館で、基本的には地域や団体などの寄付金によって成り立っている。NYPLは42nd streetに所在するメインの図書館(Stephen A. Schwarzman Building)以外に4つのThe Research Library、82のThe Branch Libraryがある。
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| Stephen A. Schwarzman Building | 日本の書籍の棚 |
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| NYPLの貸出カード | 日本の雑誌やマンガも少しある |
NYPLウェブサイトではオンライン図書貸出(e-NYPL)も行っている。借りることのできる媒体は、iPod/PC用オーディオブック(MP3など)やビデオなどあるが、今回はebooks(Adobe® Digital EditionsもしくはMobipocket® Readerのダウンロードが必要でe-NYPLよりダウンロードできる)を体験した。
今回ダウンロードしたのは村上春樹氏の「走ることについて語るときに僕の語ること (When I Talk About When I Talk About Running)」。村上氏の作品は計6点格納されている(他の作品はオーディオブックのみ対応)。
電子書籍であるが、図書館で所有している冊数がありその冊数が貸出上限になっているところなどは権利者と利用者のバランスを考えた設計なのであろう。
e-NYPLよりdigital bookを借りるフローは以下の通りとなる。








ニューヨーク市内のデジタルサイネージ
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| Times Square周辺のサイネージの様子。至るところに様々な形のLEDが設置されている。 |
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| 左:M&M's World Store NYCのサイネージ。ロールでM&M'sコンテンツを流していた。 右:NYCタクシー車内のサイネージ。地図、ニュース、ZAGAT、MSNなどのタブで内容を選択できる。NYC公認のタクシーにはほぼ全車搭載されているとのこと。 |
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| 左:地下鉄の入り口にあるサイネージ(至るところにある) 右:エレベータ内のサイネージ(新しいビルには多く設置されている) |
※他にも、ガソリンスタンドの給油機の上、ジム(特にバイクやランニングマシンなど)、スターバックスのようなコーヒーショップなどが代表的な設置場所のようだ。
またOVABによると、イギリスではATMでサイネージを行っている企業もあり、中にはその明細書の裏にハンバーガーショップのクーポンを付けているものもあるとのことだった。
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