DCAJ news No.148

3月度コンテンツ技術オープンフォーラム~コンテンツ技術が生み出す、近未来の新たなビジネス~

2010年3月26日、財団法人デジタルコンテンツ協会 会議室において、3月度「コンテンツ技術オープンフォーラム ~コンテンツ技術が生み出す、近未来の新たなビジネス~」を開催した。
(有)清水メディア戦略研究所代表取締役で、当協会のスタッフを兼務する清水計宏から、海外動向を含めて、「2010年のコンテンツ技術とグローバル・プラットフォーム」について、クウジット(株) 末吉隆彦氏より「リアルとネットをつなぐ体験拡張型コンテンツに向けて」について、(株)T.C.FACTORY 長俊広氏および藤澤孝史氏より「技術とコンテンツを融合させるDBエンタテインメントとは?」についての講演後、「コンテンツ技術が生み出す、近未来の新たなビジネス」についてパネルディスカッションを行った。

4.1 2010年のコンテンツ技術とグローバル・プラットフォーム
講師:(財)デジタルコンテンツ協会  清水 計宏((有)清水計宏メディア戦略研究所 代表取締役)

今回のフォーラムで紹介する企業は、今後コンテンツ業界で期待できる技術を保有するベンチャー企業である。コンテンツ産業を振興させるためには、大企業よりもこうした技術力のあるベンチャー企業を伸ばしていく必要があると考えている。
今後は、個人がメディアの主体となり、企業経済からプラットフォーム経済へ向かう。企業はプラットフォーム運営を行うようになり、プラットフォーム産業が発達する。また、垂直統合型から、水平共有・協調型となる。
例えば、iPodの成功要因はプラットフォーム化したことである。またスティーブ・ジョブズがプロデューサーとなり全体を統括し、細部まで目配りするリーダーシップをとったからである。
プラットフォームの運営として、ユーザーに主導権を預けることや、ユーザーとのコミュニケーションが欠かせない。例えば企業の広報はtwitterに対応することが欠かせない状況になっている。プラットフォームを開発する技術や、プラットフォームにユーザーをどう取り込むかが重要となる。
また、アプリケーションにならないコンテンツは衰退すると考えている。それは個人に合わせられないからだ。30~50年後、現在のような、検索もリンクもできず、森林資源を使う新聞、書籍、雑誌は消滅するのではないか。CD、DVD、Blu-rayディスクも同様であろう。知の基本ツールとして、紙と鉛筆がなくなるわけではないが、知の共有形態が変わる。メディアコンテンツ産業には、コンテンツアプリケーション、コミュニティ、コミュニケーション、コマースの4Cとこれらをコラボレーションすることが重要となる。

4.2 リアルとネットをつなぐ体験拡張型コンテンツに向けて
講師:クウジット(株) 代表取締役社長 末吉 隆彦 氏

 もともとはARの研究開発を行っていた。ARとは見えないものが見えるであるとか、聞こえないものが聞こえるであるとか、自分自身の能力や五感の拡張だと考えている。
PlaceEngine(プレイスエンジン)とは、周囲に観測できる無線LANアクセスポイントからの電波情報を利用して位置を測定する技術である。都市部だとほとんどの場所でアクセスポイントを見ることができる。ただし位置の精度は保証できない。(都市部で3~100m程度)
PlaceEngineの屋内位置測位ソリューションでは、既存施設を位置情報化することができ、フロア階数など空間認識が可能になる。例えば、理想的には15m四方の空間で、4つのアクセスポイントを各角に設置できれば、5m四方の9つのエリアに認識が可能である。
Location Amplifier(ロケーション・アンプ)では、人の回避や滞留を促進する場所・空間連動の行動デザイン型/体験拡張型サービスである。ロケーション・アンプを使って、200年には、横浜みなとみらいや横浜スタジアムという空間で、場所に連動した店舗やイベントコンテンツを配信したり、写真を撮ってアップロードすることで、モバイル端末(iPhoneやPSPなど)に配信されるサービスを実施した。最近では、美術館や博物館などでも利用されている。作品の前に来ると、その作品の説明が配信されるサービス等を提供している。文化庁メディア芸術祭では、ロケーション・アンプとtwitterを連携したサービスを提供した。その他、東京国立博物館の法隆寺宝物館においても動画配信サービスなどを行った。またARG(代替現実ゲーム)「クリムゾンフォックス 渋谷の街に隠された暗号を探せ!」などにも技術提供している。
こうしたコンテンツは、その場所ならではのご利益があることが非常に重要である。

4.3 技術とコンテンツを融合させるDBエンタテインメントとは?
講師:(株)T.C.FACTORY 代表取締役 CEO 長 俊広 氏
取締役 COO 藤澤 孝史 氏

T.C. FACTORYのDrillSpin(データベース)では、まずは人物の特定(400万人)を行った。世の中にパブリッシュされている情報はクロールと解析エンジンで格納し、つながり情報として、名前、別名、生年月日などのプロフィールから参加した作品に至るまで、総合的なタグ情報を付与した。JISコードやJANコードなどのコードも網羅している。
  DrillSpinでは、人物からの検索だけでなく、映画などの作品情報からの逆引きも可能としている。キーワード検索も可能で、例えば、テレフォンショッキングで検索すると今までの出演者がすべて検索される。また「お母さんといえば」などの主観的な検索も可能となっている。またこのデータベースに自分自身を追加することも可能である。
  こうしたデータベースでは、恣意的なレコメンドではなく、気づきを与えるツールとなることが重要と考えている。またライブというキーワードが重要だと考えており、今テレビに出ている人などがすぐ検索できるようにしている。
  今後の予定として、4月に無料のiPhone用アプリケーションのリリースを予定している。マネタイズについては、アマゾンやiTuneなどとのマッシュアップは終わっているため、そちらからの収入を考えている。

4.4 コンテンツ技術が生み出す、近未来の新たなビジネス
モデレーター:(財)デジタルコンテンツ協会 清水 計宏
パネリスト :クウジット(株) 代表取締役社長 末吉 隆彦 氏、(株)T.C.FACTORY 代表取締役 CEO 長 俊広 氏、取締役 COO 藤澤 孝史 氏

 清水 計宏がモデレーターとなり、2社のプレゼンテーションに対する質疑応答を中心としたディスカッションを行った。

(1)クウジット(株)

Q:サービスを利用するためには無線LANが必要か。
A:PlaceEngineを利用するためには無線LANデバイス。(必ずしもインターネット回線は必要ではない)AR技術を利用するためにはカメラデバイスが必要になっている。
Q:位置情報は、どのように取得しているのか。
A:周囲に偏在する無線LANの電波情報(MACアドレス、電界強度)から、現在位置を推定している。推定するための初期データは手動での入力も必要となる。
Q:展示会のような無線LANの電波が飛び交っている場所でPlaceEngineの利用は考えられるか。
A:IT系の展示会ではよく利用されている。位置測位したい端末側は、周囲の無線LANアクセスポイントをスキャン(パッシブスキャン)するだけで接続やデータ通信はしないため、混線などの心配はない。
Q:ユーザー参加型コンテンツの可能性は。
A:ユーザー参加型のコンテンツの可能性は非常にある。(twitter連動などのコミュニケーションなどもその可能性の1つ)何をユーザー参加型のコンテンツにするかが重要。
Q:高さの情報は取得可能か。
A:PlaceEngine技術の場合は、実際の物理的な高さを測定しているわけではない。空間的に偏在する無線LANの電波パターンにタグをつけている。ビルのフロア程度のレベル(3~5m程度)で空間を識別することができる。
Q:屋内でも屋外でも利用することはできるのか。
A:屋内、屋外をシームレスにつなぐこととして、GPSと無線LANの位置測位を組み合わせるなどの技術はある。

(2)(株)T.C.FACTORY

Q:歌詞データや音楽データなどはどの程度蓄積されているのか。
A:分析用のデータとしてはあるが、ビジネスとして利用する場合は、使用料がかかるため先送りしている。ゆくゆくはユーザーが自分のDBを構築できるようにしたい。
Q:どのようにデータを収集しているのか。
A:現在のデータベースに差分を足すことと、リアルタイムに情報を追加している。なお情報の収集は最後のひと手間以外はクロールなどで自動化されている。
Q:陶芸家など芸能人以外のデータも登録されているか。
A:例えば、アスリートや政治家などのデータもある。陶芸家は文化人になるかと思うが、カテゴライズの問題もある。
Q:これだけデータがあると、自分の必要な情報を得るまで時間がかかるのでは。
A:データにたどり着くまでの、触っている時間の満足度が高いことが重要だと考えている。
Q:写真のデータについての権利はどう考えているのか
A:今回のデータベースは画像が入っているが、実際のサービスの際は画像検索サービスを利用する予定。
Q:開発で苦労した点は。
A:膨大な情報量をどうやって整理し、正確性を持たせるか呆然とする中、答えは”あきらめない”という意志以外に無かったこと。
Q:クラシックや浪曲などのデータは入っているのか。
A:入っている。音楽、映像から入って、次は本に行きたいと考えている。
Q:絵画については登録されているのか。
A:ネット上でオフィシャルに管理されているものはストックされているが、製品として登録されていないもの(コードがないもの)は後回しにしている。

以上

バックナンバー

前のページへ戻る

ページトップへ戻る

お問い合わせ DCAJ newsトップへ デジタルコンテンツ協会トップへ