権利と契約に関するQ&A
権利と契約に関するQ&A

著作権に関する質問
肖像権に関する質問  契約に関する質問


どのようなものが著作権によって保護されるのでしょうか。
 

「著作物」として保護されるためには、「創作的な表現」であることが必要とされます。
例えば、作者自身の思想や感情を表現するために書かれた文章や絵等がこれにあたります。ほとんどの著作物は、作者が何かしらの創意工夫をして表現しているので、独自に作成したものであれば著作権によって保護されることとなります。
著作権は「アイデア」ではなく、「表現」を保護するものですから、外部に表現されたものが保護の対象となり、精神の段階にとどまっている間は保護されません。
著作権法は、著作物の例として、小説等の言語の著作物、音楽の著作物、絵画等の美術の著作物、建築の著作物、映画の著作物、写真の著作物、プログラム等を挙げています。これはあくまで例示ですから、ここに挙げられていなくとも保護される可能性はあります。 また、既存の著作物に新たな創作性を加えて創作したものについては、原著作物とは別に二次的著作物として保護される場合があります(著作権法第2条第1項第11号)。
 


著作権とはどのような権利なのでしょうか。
 

著作権とは、著作者が「思想又は感情を創作的に表現したもの」を、他人が無断で利用、改変等することがないよう、「著作物」として保護を与えようとするものです。
著作物が作成されたとき、以下のような権利が発生します。
 
○著作者人格権(譲渡不可)
公表権 :未発表の著作物を公表する権利(著作権法第18条)
氏名表示権 :著作物に名前(ペンネームを含む)を表示する、又はしない権利(著作権法第19条)
同一性保持権 :著作物及び題号を意に反して変更されない権利(著作権法第20条)
○著作権(財産権=譲渡可能)
複製権 :著作物を複製する権利(著作権法第21条)
上演権・演奏権 :著作物を公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演・演奏する権利(著作権法第22条)
上映権 :著作物を公に上映する権利(著作権法第22条の2)
公衆送信権 :著作物を放送、ネットワーク等により公衆に送信したり、送信可能な状態にする権利(著作権法第23条)
口述権 :言語の著作物を朗読等により口頭で伝達する権利(著作権法第24条)
展示権 :美術・未発行写真の原作品を公に展示する権利(著作権法第25条)
頒布権 :映画の著作物の複製物を公に譲渡・貸与する権利(著作権法第26条、第2条1項19号)
譲渡権 :著作物(映画を除く)の原作品又は複製物を、公に譲渡する権利(著作権法第26条の2)
貸与権 :著作物(映画を除く)の複製物を公に貸与する権利(著作権法第26条の3)
翻訳権・翻案権 :著作物を翻訳、変形、改変等する権利(著作権法第27条)
 
二次的著作物*の利用に関する原著作者の権利
  :二次的著作物の著作者が有する著作権と同一の種類の原著作者の権利(著作権法第28条)
* 二次的著作物については、Q1をご参照ください。
 


どのくらいの期間、著作物は著作権によって保護されるのでしょうか。
 

著作権法は、著作者の保護という目的に加え、著作物の円滑な利用を促進するという目的も有しており、一定の期間を経過した著作物については、その権利を消滅させることにより、著作物を自由に利用できるようにしています。
著作権の保護期間は、創作の時に始まり、原則として著作者の生存期間中及び死後50年とされています。(死亡の翌年から起算します。)共同で作成された著作物については、最後に死亡した著作者の死後50年とされています(著作権法第51条)。
会社等が名義人となっている著作物については、公表されてから50年とされており、創作後50年以内に公表されなかった著作物については、創作の時から50年とされています(著作権法第53条)。なお映画の著作物については、平成15年の著作権法改正(平成16年1月1日施行)で公表後70年となっています(著作権法第54条)。

 


著作権はどのようにすれば取得できるでしょうか。
 

日本においては、他の多くの国々と同じく、著作権は、人が著作物を創作した時点で、自動的に発生することとされています(著作権法第17条第2項、無方式主義)。国によっては、著作権を取得するための手続を定めているところもあります(方式主義)。
わが国でも(c)という表示が著作物によく付されています。この表示は、万国著作権条約に基づくもので、無方式主義の国の作品(例えば日本の作品)でも(c)表示が付されていれば、方式主義の国においても著作権の保護を受けることができます。
日本は、無方式主義の国ですので表示の有無は国内(及び他のベルヌ条約加盟国)での保護には何の関係もありません。ただ、実務上は、著作権の対象であることを明らかにして注意を促すという意味では、効果があるのではないかと考えられます。
また、米国(無方式主義)の著作権法には、著作権表示を付すことにより、民事訴訟の際の損害賠償の請求に有利になるとする規定があります。(米国著作権法第401条、第402条)
 


ある美術館の所有するもので著作権の切れている絵画をデジタルアーカイブする場合、著作権が切れているということで、自由に複製やネットにアップロードすることができるのでしょうか。
 

複製やネットへのアップロードは著作権の利用行為ですので、著作権が切れていれば、原則として自由に利用することができます。つまり、著作権に関する利用許諾をとる必要はなくなります(もっとも、利用方法によっては著作者人格権の問題があり、Q2及びQ18を参照下さい)。
一方、絵画を写真撮影する場合、所有者である美術館の許可をとるべきでしょう。デジタルアーカイブ構想が素材それ自体の文化的・歴史的遺産としての価値や意義を重視するものであることを認識して、これらの素材を後世に正しく継承していくために保管・管理している所有者(美術館)に配慮するべきでしょう。
 


著作権者が特定できない著作物の利用にはどのような処理を行えばよいのでしょうか。
 

著作物を利用する場合、著作権者から直接に利用許諾を得ることが権利処理の基本です。したがいまして、著作権者から利用許諾を得られない場合は、利用を諦めるのが大原則となります。
しかし、著作権者から利用許諾をもらおうとしても、肝心の著作権者が誰なのか、また何処にいるのかが不明である場合、利用許諾のとりようもありません。このような場合に配慮して、著作権法では文化庁長官の裁定手続により、著作物の利用をすることができるという規定があります。
裁定による著作物の利用をするには、次のような条件をクリアする必要があります(著作権法第67条)。
(1)対象となる著作物が
  (i)すでに公表されたものか、
   あるいは
  (ii)相当期間、公衆に提供・提示されている事実が明らかなものであり、
(2)著作権者が不明などの理由で相当な努力をしても著作権者と連絡がとれない場合、
(3)文化庁長官の裁定をもらい、
(4)文化庁長官の定める使用料相当額の補償金を積むことで(供託)、
(5)裁定に関する所定の表示をしつつ、裁定で定められた条件内であれば、
 
(著作権者の利用許諾がないにもかかわらず)、著作物を利用することができます。
このような厳しい条件をクリアする必要があることから、裁定手続によって著作物を利用したという事例をあまり聞きません。しかし、手続は定められていますので、著作権者が不明の場合、一切利用を諦めなければならない、というものでもないわけです。
 


著作権が存続する絵画を購入しましたが、自分の所有物として自由に複写やネットにアップロードしてもよいのでしょうか。


絵画を購入すれば自分の所有物として自由に「使用」することができます。しかし、所有物として「使用」することと著作物として「利用」することは別の話となります。具体的には、絵画を鑑賞したり、展示したりすることは、所有物の「使用」にあたります(厳密には、所有権と著作権の交錯する部分であり、著作権法で調整されています)。
一方、絵画を複製したり、ネットにアップロードしたりすることは、著作物の「利用」にあたります。そこで、絵画を所有していても、著作権者の許諾なく複製したり、ホームページにアップロードしたりすれば、著作権(複製権、公衆送信権)の侵害となります。
 


著作権が切れている昭和初期の写真に別の被写体を結合してパロディ写真を作ろうと思うのですが、自由にできるのでしょうか。


ひとくちに著作物に対する権利と言いましても、著作財産権(一般にいう著作権)と著作者人格権の二つがあります。
著作財産権(著作権)の存続期間は、原則として著作者の死後50年です(なお、写真の著作権については、Q1及びQ10を参照下さい)。著作者が亡くなってから、50年経てば著作財産権(著作権)が消滅しますので、その後は著作財産権(著作権)の観点からは、自由に利用することができます。
しかし、著作者人格権につきましては、著作者の死後の「人格的利益」を保護するため、
(1)著作者が存命であるとしたら著作者人格権侵害となりそうな行為をしてはならず(第60条)、
また
(2)著作者の遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹)であれば、差止などを求めることができるとされています(著作権法第116条)。
なお、(2)の遺族がいなくなった場合でも、著作権法第120条による罰則は残ります。
何をもって「著作者が存命であるとしたら著作者人格権侵害となりそうな行為」と考えるかは難しい問題ですが、今回のパロディの具体的な方法が、そのような行為にあたるものと判断されるような内容ですと、差止などの対象となってしまいます。その意味で、著作権が切れていても、完全に自由に利用できるとは限らないのです。
なお、パブリシティなどについては、Q28Q29Q30を参照下さい。



屋外に設置されている銅像や、建物を写真にとって雑誌に掲載したり、ネットに掲載する場合は、同様に権利者に許諾を得る必要があるのでしょうか。


屋外に恒常的に設置されている美術の著作物、および建築の著作物については、権利者の利益を害するおそれの高い一定の行為(彫刻のレプリカの作成、模倣建築、販売目的の複製、絵葉書、ポスターの作成等)を除いては、自由に利用できることとなっています(著作権法第46条)。
ここで、屋外に設置といっているのは、一般公衆が自由に出入りできる街路や公園に設置されていることをいいます。一般に開放されていれば、公有、民有を問いませんが、入場制限をしている場合には屋外とはいえません(入場制限していても、入場料を支払えば誰でも入場することができ、また、その敷地内において自由に写真撮影などができるような場所であれば、屋外といえると考えられています。加戸守行「著作権法逐条講義」第2章第5款)。
また、建造物の外壁や、一般公衆の見やすい屋外の場所に設置されている建物の壁画や屋上にある看板などのように、誰もが見ようと思ったら自由に見ることができる場合も、屋外に設置しているといえます。
上記の制限に反しない限り、その利用方法は特に限定されておりませんので、写真撮影や雑誌掲載、ネット掲載等の行為を、権利者に許諾を得ることなく自由に行うことができます。
さらに、そのままの利用ではなく、変形して利用することも可能です。ただし、この場合には、著作者の意に反する改変を禁止する同一性保持権(著作者人格権の一種)が別途働きますので、著作者の許諾を得る等の配慮が必要となります。
なお、著作権法上の権利ではありませんが、パブリシティ権といって、著名人がその才能や努力により獲得した経済的利益を保護するという権利が、民法の不法行為論等に基づいて、判例及び学説において認められてきています。この権利は、芸能人やスポーツ選手といったような著名人の肖像についての財産的利益を保護するものですが、さらに、著名な物や動物にも保護が及ぶという見解があります。この見解によれば、前述のように屋外に設置されている美術作品や、建築作品について自由利用が認められる場合であっても、別途このパブリシティ権についても配慮する必要があります。



絵画を撮影した写真には写真の著作物としての著作権が発生しているのでしょうか。版画や銅像等を撮影した場合も同様でしょうか。
 

著作権法上、著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法第2条第1項)と定義されていますので、ご質問の「写真」に著作物としての著作権が発生しているかどうかは、その「写真」に撮影者の思想・感情が創作的に表現されているかという問題になります。
この点について、美術作品である絵画を、忠実に撮影しただけの「写真」は、単なる機械的な複製の手段として写真が用いられているにすぎず、創作的表現があるとはいえないため、「写真の著作物」とはいえないと一般的には考えられています。また、版画についても、絵画と同様に考えられています。(昭和63年(ワ)第1372号損害賠償請求事件/平成10年11月30日 東京地裁判決/判例時報1679号153頁)一方、銅像のように立体的なものを撮影した場合の「写真」については、立体的なものを平面的なものに表現する仕方において創作性が認められ「写真の著作物」として著作権が発生する場合があると考えられます。したがって、このような写真を利用する場合には、写真の著作権者の許諾を得る必要があります。
このように、創作性の有無によって、著作物と認められる場合と認められない場合がありえますが、ご質問にあるような写真を利用する場合には、できる限り著作権者ないし撮影者の許諾ないし了承を得る方が無難であると考えられます。
なお、いずれの場合でも、著作権の存続する絵画や彫刻を撮影した写真については、被写体となった著作物の著作権が働くため、画家や彫刻家等の著作権者の許諾を得る必要があります(著作権法第28条参照)。



着物(染織図柄等)をデジタルアーカイブしたいのですが、著作物と同様の権利処理を行えばよろしいのでしょうか。
 

着物の織り柄、染織の図柄といったもののデザインがどのような権利によって保護されるかは、従来より議論のあるところであり、一概に確定的な判断が難しいところであります。これは着物のデザインのような量産的に製造される商品に付されたデザイン、いわゆる純粋美術に対しての応用美術といわれるものについては法律上(著作権法第2条第2項)において「美術の著作物には、美術工芸品を含むものとする」と規定されるにとどまっており、基本的に応用美術は著作権の保護対象としておりません。他方これら応用美術のような実用品の模様は原則意匠権による保護に委ねられています。
しかし、全ての量産品のデザインが全く著作権によって保護されないかというとそういうわけでもありません。これまでにも量産品のデザインが著作権法により保護された判例として、仏壇彫刻事件(昭和49年(ワ)第291号著作権侵害排除等請求事件/昭和54年7月9日神戸地裁姫路支部判決/無体財産例集11巻2号371頁)等があります。これらの判決においては、当該デザインに美術工芸品的価値が備わっている場合や、当該デザインが純粋美術に該当すると認められる高度の美的表現を行っている場合などは、量産品であることのみをもって著作権法による保護が否定されるものではないとして、著作権法による保護を与えています。
したがって、着物(染織図柄等)のデジタルアーカイブにおいては、個々の事案に応じて判断することになりますが、著作物としての保護が与えられる場合がありますので、純粋美術といえるような美的表現がなされているものについては、著作権が発生していることを想定して同様の権利処理を行うことが望まれます。
 


業者に絵画のデジタル化を委託した場合、デジタル化したデータにはデジタル化権なるものが発生し、第三者がデジタル化した絵画のデータは自由に使うことができないのでしょうか。また、受託した当該業者は自由にそのデータを利用することができるのでしょうか。
 

著作権法上、デジタル化権という権利は規定されていません。ただ、二次的著作物といって、既存の著作物に新たな創作性を加えて創作したものについては、原著作物とは別に保護されています(著作権法第2条第1項第11号)。したがって、当該絵画をデジタル化したものに、原著作物とは別の新たな創作性が認められる場合には、二次的著作物として著作権法上の保護を受けることとなります。 二次的著作物の利用にあたっては、二次的著作物の著作権者のほかに原著作物の著作権者の許諾も必要となります。(著作権法第28条)
したがって、第三者が二次的著作物たる絵画のデジタルデータを利用する際には、デジタル化した絵画の著作権者(業者)および絵画の著作権者の許諾を得る必要があります。なお、二次的著作物に該当しない場合には、単なる複製物ですので、もとの著作物の著作権者の許諾のみ必要になります。
また、受託した業者が、そのデータを利用することができるかについては、契約によって決まることになると考えられます。特に取り決めのない場合には、委託の目的を客観的にみて可否が判断されることになりますが、通常は自由に利用できるとは考えられないでしょう。



新聞社が、絵画展について紹介するため、出展される絵の写真を一例として新聞やネットに掲載したいと考えた場合、何か問題はあるのでしょうか。
 

新聞社のような報道機関であるからといって、無制限に著作物を利用してよいということはありません。
著作権法では、時事の事件の報道のために、事件を構成する著作物又は事件の過程で視聴される著作物については、報道目的であれば、例外的に権利者に許諾を得ることなく利用することが認められています(著作権法第41条)。したがって、このような特別の場合には報道目的として正当と考えられる範囲で、絵の写真を新聞やネットに掲載することは、認められると考えられます。ただし、同一性保持権については別途配慮する必要があります。
また、著作物の利用が、「引用の目的上正当な範囲内」であれば、公表された著作物を引用して利用することができるとされています(著作権法第32条)ので、この範囲内であれば、新聞やネットに掲載することができます。ただし、引用が認められるには、利用する側の作品が著作物であることと、利用する側の著作物と利用される側の著作物が分離でき、主従関係にあることが必要とされています。したがって、記事に著作物性が認められないような場合や、著作物性が認められても文章より写真がメインになっているような場合は、引用にはあたらないと考えられます(平成6年(ワ)第18591号著作権侵害差止等請求事件/平成10年2月20日 東京地裁判決/判例時報1643号176頁)。



展示会で絵画を展示する際、絵画を図録として縮小したものを小冊子に掲載して配布することは可能でしょうか。また、それをスキャニングしたものをインターネットに掲載するのはできるのでしょうか。
 

まず、ご質問においては、絵画の展示について著作権者の許諾があるとか、絵画の原作品の所有者であるとか、展示自体についての権限があることを前提とします。
一般に絵画の写真を小冊子に載せたり、スキャニングすることは複製(著作権法第21条)にあたり、スキャニングしたものをインターネットに掲載することは公衆送信(著作権法第23条)にあたります。ところで、美術の著作物の展示に伴い「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子」に掲載することは著作権法上著作権者の許諾なくできることが認められています(著作権法第47条)。しかし、スキャニングしてインターネットに掲載することは、(引用等にあたらない限り)絵画の著作権者に許諾を得る必要があります。
さらに、絵画を変形等することについては、著作者人格権にも配慮する必要があります。著作者人格権は、著作者固有の権利であり、公表権、氏名表示権、同一性保持権(著作権法第18条、第19条、第20条)からなっています。ここでは、著作物を他人が勝手に改変することを禁止する同一性保持権が問題となります。
この著作者人格権には保護期間が設定されていないため、著作権がきれた作品であっても権利が働き、また、著作者が死亡している場合にも、権利が働きます(著作権法第60条、第116条、第120条)。したがって、変形等することについて、著作者(著作者が死亡している場合には、その遺族)にその表現方法等を説明し、許諾を得ておく必要があります。
なお、所有者、著作権者および著作者人格権を有する著作者は、それぞれ異なっている場合がありますので、許諾若しくは同意を得るべき相手を正確に特定する必要があります。



写真をデジタル化したデジタル画像データに新たな知的財産権は発生するのでしょうか。
 

アナログデータをデジタルデータに変換する権利、いわゆる「デジタル化権」と呼ばれるものがこれにあたると思われますが、これは法律上明記されている権利ではなく、現在の多数説では、このような単なるアナログデータのデジタルデータへの変換においてはデジタル化権なるものは発生しないものとされています。
すなわち、このようなアナログ情報をデジタル情報に置き換え蓄積する行為は、データ形式は異なるといえども本質的に同じ情報であり、精巧な技術により、多額の費用をかけてデジタル化したとしても、そこに創作性が加えられていない以上、新たな著作物を創作することによる権利は生じることがなく、単に「複製」を行っているに過ぎないと解釈されます。



デジタル画像データを補正した画像データに新たな知的財産権は発生するのでしょうか。
 

補正の内容によりますが、著作権の大原則として、そこに新たな「創作性」が加えられているかどうかということが著作権が発生しているかどうかの判断基準となります。一般的に画像データを補正するということは、シミ・汚れをとる、見えにくい部分を復元する、あるいは色調を明るくするといったような通常考えられる程度の補正が想像されますが、このような補正においては独創的な工夫がされているとは考えられないため、新たな著作権が発生しているとは考えにくいと思われます。
(なお、補正における技術自体が新規なもので創意工夫があれば、発明、考案として特許、実用新案のような工業所有権の出願を行うことができることになります。)



デジタルアーカイブ運用のために事業者が作成するデータベースには著作権が認められると認識しています。美術館等が作成する作品リストのようなものには著作権がないと聞きますが、そうなのでしょうか。また、それを事業者がそれに若干の加工を施した程度のデータベースには著作権が認められるのでしょうか。
 

著作権法において保護されるデータベースとは「情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するもの」とされております。事業者が作成するデータベースといえども著作権法上で規定するように情報の選択または全体としての体系に創作性がない限り、データベースの著作物にはなりません。逆に美術館等で作成される作品リストにおいても、そのデータを特別な思想により選択していたり、データの構成に体系的な創意工夫がこらされた「リスト」であれば、データベースの著作物である、ということができます。 また、著作権法では編集物について、「その素材の選択又は配列によって創作性を有するもの」を編集著作物として保護することを規定しております。ここでいう「リスト」が情報や素材の選択に特徴がありまたは並べられた情報や素材の配列において創意工夫があれば、編集著作物としての著作権が発生しているともいえます。
ご質問で想定される「リスト」が前述のような創作性を有していないとしますとデータベースの著作物あるいは編集著作物としての著作権は発生していないということになりますが、これに事業者が若干の加工を施したものに著作権が発生するかということについては、ひとえにその加工の程度によるものと考えられます。すなわち、その加工がごく普通に考え得る程度の加工であれば、創作性が生じているとはいえませんし、逆に作業量としては多くなかったとしても、非常に思考を凝らして情報を選択し直したり、体系的に作り替えたといった場合は、データベースの著作物として認められる場合もあると言えます。
(なお、著作権の発生しないデータベースについても、コピーし販売することが不法行為になる場合もありますので注意してください。平成8年(ワ)10047等不正競争民事訴訟事件/東京地裁平成14年3月28日/コピライト2001年10月号25頁以下。)



私どもは地域の文化資料館を運営しておりますが、当町ゆかりのA氏撮影の明治30年代の乾板写真ネガを遺族より寄贈されました。期間的に著作権は存在しないと思われ、所有権の範疇で当館がその寄贈品の保存方法や活用方法他一般への利用の基準を取り決めようと思っていたのですが、その権利はあるのでしょうか。
 

写真の著作権は、平成9年まではその保護期間は写真の公表後50年間でありました。したがって、この写真が、明治30年に公表されたとすると、ご指摘のように著作権は消滅しています(昭和46年施行の現行法以前に、旧法によって著作権が消滅している可能性が高いでしょう。Q29参照)。したがって、乾板写真ネガの取扱いについては、基本的には所有権に基づき取り決めることができます。
所有権は、自己の所有物を、自由に使用、収益、処分することができる権利(民法第206条)であり、ご質問にある保存方法や利用方法等は、所有物の使用、収益にあたると考えられますので、貴館による利用基準の取り決めは問題ないといえましょう。
ただし、著作権のうちの著作者人格権(氏名表示権、公表権、同一性保持権)は、著作権法の規定によれば、著作者の死後であっても、著作者が生存していたとすれば著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならないと規定しており(著作権法第60条)、侵害した者に対しては、その遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹)は差止請求権がある旨規定しています。なお、刑事罰については、規定上は永久に存続すると考えられます(著作権法第120条)。



文化財保護法、文化財保護条例上は、所有者が管理できないものは管理者、管理団体を決めていることがありますが、写真を撮影する場合、法的にはやはり所有者の承諾が必要なのでしょうか。
 

所有者は、所有物を使用、収益、処分する権限を有していますので、それに配慮して、使用、収益に係る写真撮影については原則として個々に所有者の承諾が必要と考えます。ただ、所有者と管理者(又は管理団体)の間でその権利を管理者に委任している場合は、その管理者(又は管理団体)から承諾を受けることが可能であると考えます。その場合は、念のため、所有者から写真撮影等の許諾を行う権利の委任を受けていることを(できれば書面で)確認しておくことが好ましいと考えます。
 


文化財の指定は官報告示されるので所有者名もその際公開されますが、インターネットで作品を公開する際、所有者から「作品の公開は良いが、自分の名前を出して欲しくない」と言われた場合は、やはり出してはならないのでしょうか。また出した場合、法的問題はあるのでしょうか。
 

文化財に指定されたものを適切に保管、活用するための措置として、誰が所有しているのかについても公に知らしめる必要があるため、官報告示され公衆への閲覧を認めているわけですから、事実をそのまま伝達する限りでは問題は生じないと考えます。しかし、ご質問のように本人が拒んでいて、作品公開の条件として所有者から名前の秘匿を要求されているなら、契約上の義務になるといえる場合もあるでしょう。その義務に反して名前を出すなら契約違反ということになり、解除や損害賠償の対象になります。



美術館の展覧会で、展示室に設置して無料配布するリーフレットを作成しようと考えています。このリーフレットの記述内容のうち写真、図版の転載について権利所有者の許諾等をとるのは当然ですが、いわゆる「書き起こし」の場合、リーフレット制作側が、もととなる写真、特にイラストから手書きでイラストレーション(トレースではなく)することは著作権法に抵触するのでしょうか。
 

リーフレット制作者がもととなる写真やイラストの作者に無断で、写真やイラストを手描きでイラストレーションすることは、原則として著作権法に抵触します。 著作権者には、著作物を手写、印刷、写真撮影、複写等用法を問わず、これを複製する権利(著作権法第21条)があります。もととなる写真やイラストからリーフレット制作者が手描きでイラストレーションすることは複製にあたり、これを無断で行うと著作者の有する複製権を侵害することになります。したがって、著作者からその旨の許諾を得る必要があります。



平安時代の絵画作品をトリミングする場合でも、著作者人格権がかかわるのでしょうか。
 

著作権法の施行の遥か前の作品であり、著作者人格権の問題はありません。



著作権のある作品をスキャンしてシミがあったので修正した場合、著作権や著作者人格権がかかわるのでしょうか。
 

著作者が創作時に意図してシミを付けたものでなければ、その修正(即ちシミ取り)は、著作権や著作者人格権の侵害の問題はないと考えてよいでしょう。逆に、デジタル化工程でシミがでてしまった場合や管理が悪くシミができてしまった場合などは、修正をしないと著作者人格権の侵害になるでしょう。
 


博物館、美術館で職員のみ利用する収蔵品のデータベースを作った場合も、著作権者の許可が必要なのでしょうか。
 

著作権法を形式的に解釈すると、次のとおりとなるでしょう。
著作物を画像データとして取りこみ蓄積する行為はその複製と考えられますので、博物館、美術館で職員のみが利用するデータベースといえども、著作権者の許可が必要ということになります。また、著作権法では、個人又は家庭内での使用については、著作権が及ばないとしていますが(著作権法第30条)、本件では、博物館、美術館の業務のために使用するものであると考えられますから、個人又は家庭内使用の範囲には入らず、著作権が制限されるケースにもあたりません。したがって、そのようなデータベースは、著作権者の許諾なく作成し利用することはできません。博物館、美術館で職員のみが利用するデータベースといえども、著作権者の許可が必要だということになります。
しかしながら、著作権法の目的とする文化の発展の見地や、このようなデータベースの作成により著作権者に格別の不利益が生ずるとも思われないことから、許されるとする見解も十分成立すると思われます。現実的には、あまり問題になることは考えられないようにも思われます。



出版物の表紙に著作権による保護が発生するかどうかについて教えてください。WEB等で紹介する場合はどうですか。
 

出版物の表紙も創作性があれば当然に著作物にあたり、著作権で保護されることになります。
実際には、ご質問にあるようなWEB等での紹介については、むしろその出版物の宣伝効果があったり、相当の縮小がなされているため、それをユーザーがダウンロードして再利用するだけの画質ではなくなっていることが多いことからクレームがつきにくいという実態はありますし、引用として著作権侵害にならない場合(※)もあるでしょう。しかし、大きく表示したり、引用の範囲を超えるような場合は、表紙の著作権者に許諾を受けるということになります。
※ 著作権法 第32条(引用)
公表された著作物は、引用して利用することができるものとする。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない。
2 国若しくは地方公共団体の期間又は独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
 



インターネットでの世界では、サービス事業者とサーバ設置場所が別々の国にある場合があり得ます。このような状況で著作権侵害等が起きた場合、どの国の法律が適用されるのでしょうか。
 

ご質問の問題は、サービス事業者の居住地国と使用するサーバの設置される国が異なる場合、居住地国とサーバ設置国のいずれの国の法律が適用されるかという準拠法の問題となりますが、サイバー空間における準拠法の問題についてはWIPO(世界知的所有権機関)等の国際機関において検討が行われているところです。したがって、ご質問への確定的なご回答ができないといわざるを得ません。なお、これらの問題を取り上げた下記の文献がありますので、一読いただければと思います。
「インターネットを通じた不法行為・著作権侵害の準拠法」日本国際経済法学会年報8号159頁以下(1999)
「著作権をめぐる準拠法及び国際裁判管轄」コピライト2000年8月号8頁以下
「著作権保護の原点と競争政策、そして、抵触法」コピライト2001年10月号3頁以下
「情報通信ネットワーク上の知的財産侵害と国際裁判管轄」特許研究No.29(2001年3月)4頁以下



地域の人々に歌ってもらった伝統芸能の民謡や田植歌が録音されたものについてデジタルアーカイブを実施しようとする場合、なんらかの問題があるのでしょうか。
 

伝統芸能として歌い続けられてきた民謡や田植歌自体は、歌が生まれてから長い年月が経過しており、そもそも著作権は存在していないと考えられます。したがって、民謡や田植歌自体のデジタルアーカイブ化は、問題ないといえます。
一方、歌い手と、もし太鼓や笛等のおはやし等があればその演奏者には実演家としての権利すなわち著作物を公衆に伝達するという役割に対する保護として、著作隣接権(著作権法第89条)が認められております。この権利の保護期間は、実演が行われたときから50年間ですから、今回の実演も保護期間内にあります。
この実演家の有する著作隣接権としては、当該実演について勝手に録音、録画されない権利(録音権及び録画権)、放送、有線放送されない権利(放送権及び有線放送権)、ホームページ等ネットにアップロードされない権利(送信可能化権)等があります。ですから、このような権利に抵触する形で使用する場合(つまり録音や放送をする場合)には、実演家の許諾を得る必要があります。具体的には、デジタルアーカイブとしてこれを録音することについて、さらに録音したものを放送したり、ホームページにアップロードすることについて、歌い手及び音楽演奏者の許諾を得る必要があります。
また、平成14年の著作権法改正(平成15年10月9日施行)により、実演家にも人格権が認められるようになっています。具体的には同一性保持権(無断で名誉声望を害するような改変をされない権利)と氏名表示権(氏名、芸名その他氏名に変わるものを表示または表示しないこととする権利)の2つの権利です。従って当該実演の改変、加工や実演家のクレジット表示にも配慮が必要となります。
次に、実演を録音した者にも、レコード製作者として著作隣接権が認められることになっていますので(著作権法第89条2項、第96条〜第97条の2)、この権利についても許諾を得なければなりません。なお、レコード製作者とは、録音テープ、CDその他の物に固定されている音を最初に固定した者を言います。このレコード製作者の有する隣接著作権としては、レコードを複製する権利(複製権)、ホームページ等ネットにアップロードされない権利(送信可能化権)等があります。したがって、今回、もしレコード等に録音されていた実演を利用してデジタルアーカイブを構築するのであれば、レコード製作者からデジタルアーカイブとして複製さらには送信可能とすることについて許諾を得る必要があります。
 

肖像権に関する質問


昭和初期の写真をデジタルアーカイブし複写、ネット掲載しようとしたところ、そこに人物が写っていました。これを勝手に使用してもよいのでしょうか。また、その被写体が著名人と一般人とでは異なるのでしょうか。
 

写真の人物が誰であるかが判別可能な程度に写っているとすれば、肖像権の問題を考えなければなりません。肖像権は、一般人がみだりに顔写真や名前を公表されないプライバシーの権利(狭義の肖像権)と著名人の顔写真や名前の経済的価値に関する権利であるパブリシティの権利があるとされています。このような権利は、いずれも裁判の積み重ねにより認められてきた権利であり、法律に明記された権利ではありません。
その人物が一般人であるとすると、プライバシーの権利(狭義の肖像権)が問題となります。その写真の使用のしかたにおいて、人物の印象が悪くなったり、名誉や声望を害したり、また本人が望まないことが明らかなような場合は、その人物のプライバシーの権利を侵害するとして、ネットの掲載の中止、損害賠償金(慰謝料)の請求、謝罪文の掲載などを求められることがありえます。 ところで、この写真は昭和初期に撮影され、公表されたものということですから、おそらくその人物は亡くなっているものと考えられます。しかし、判例上故人の肖像権が行使できるか否かは明らかではありません。ただし、著作権法は、著作者が亡くなった後でもその名誉声望を害するような使用はできないと規定していますので、これに準じて考え、プライバシーの権利においてもその人物の名誉声望を害するような使用は問題であるとする考え方をとることが無難かもしれません。その場合遺族によりプライバシーの権利の行使がなされると考えられます。
一方、著名人の場合も故人となっているとするとパブリシティの権利の行使が可能かどうか法的に明らかではありませんが、写真掲載に経済的な利益があるとすると、その利用には慎重になるべきでしょう。殊に、商業的な利用の色彩が濃い場合には、その遺族等に使用の旨を伝えておくような措置が必要と考えます。



プロ野球の創成期の有名選手や試合の写真をアーカイブして蓄積し、ネット掲載したいが、どのような権利処理を行えばよいのでしょうか。
 

プロ野球の創世期としては、昭和初期から第2次世界大戦前までと考えてよいと思われますが、まず写真の著作権について検討します。昭和45年まで適用されていた旧著作権法では、現行著作権法への改正作業時(昭和37年)に、改正作業中に著作権が満了するものの救済措置として保護期間の若干年数延長を行った経緯もありますが、ご質問にあります第2次世界大戦前の写真の著作権の保護期間は原則その発行から10年間でした。
 
旧著作権法
第二十三条 〔保護期間−写真著作物〕 
    写真著作権は十年間継続す
    前項の期間は其の著作物を始めて発行したる年の翌年より起算す若し発行せざる 
    ときは種板を製作したる年の翌年より起算す
 
したがって、戦前に発行された写真の著作権は既に満了しており、その利用は基本的に自由です。
次に、写真に写っている有名選手の肖像権について検討します。現在においてもその名前をよく知られている沢村栄治選手など国民的英雄級のプロ野球選手が活躍していたわけですが、そのほとんどの方が亡くなられています。Q28において説明しているように、有名人には、パブリシティの権利があるとされています。すなわち、有名人の顔写真や名前などに経済的価値が存在し、それらを商品やサービスに利用することにより、その商品やサービスの市場価値が向上するとして判例上認められてきた権利です。故人のパブリシティの権利については争われたことがなく、権利の有無は明確ではありませんが、その肖像の利用の目的が経済的なメリットであるとすると、注意が必要です。ネット掲載が商業的な利用の色彩が濃い場合には、その遺族等に使用の旨を伝えておくような措置が必要と考えます。



上野動物園のパンダの歴史を写真で紹介しようと思うのですが、動物の肖像にも注意する必要があるのでしょうか。
 

肖像に関する権利は、一般に人物につき認められる権利とされており、一般人がみだりに顔写真や名前を公表されないプライバシーの権利(狭義の肖像権)と著名人の顔写真や名前の経済的価値に関する権利であるパブリシティの権利があるとされています。このような権利は、いずれも裁判の積み重ねにより認められてきた権利であり、法律に明記された権利ではありません。
一方、この質問にあるように個々の有名な動物や物にも肖像権すなわちパブリシティの権利が存在するか否かについて正面から扱った裁判の判決が最高裁判所(平成13年(受)第866号/平成16年2月13日判決)で出されました。
この裁判は、競馬のテレビゲームに登場する競走馬に実在の競走馬の名前を馬主に無断で使用したことが、その競走馬の肖像権(パブリシティの権利)を侵害するか否かが争われたものです。
判決において裁判所は、馬主が競走馬に対して有する所有権は、競走馬のもつ顧客吸引力等無体的側面における経済的価値を利用する権利にまでには及ばないとし、また、競走馬に顧客吸引力が存在したとしても、現行の各種知的財産権法に照らし、それをパブリシティ権として保護する必要性を否定しました。従ってこの最高裁判例によれば、動物などのものの姿や名前を利用することは原則可能と考えられます。
ただ、この質問の上野動物園のパンダのような有名な動物について、ランランやカンカンといった固有名詞で特定し、しかもそれらによって商品の販売やサービスの提供の向上に強く結びついているような利用の仕方は、ときに不正競争行為や不法行為等にあたる場合があります。安易な利用は思わぬトラブルを引き起こす可能性があり、事前に確認をしておくといった対応が無難であると思われます。



マリリン・モンローの肖像写真をポスターに使用したいと思っています。マリリン・モンローは既に亡くなっていますが、肖像権に配慮する必要はあるのでしょうか。またその場合、どのような手続きをするべきでしょうか。
 

肖像権には二つの側面があります。すなわちプライバシー権とパブリシティ権です。
プライバシー権はその人のプライバシーつまり私生活等がみだりに公開されることがない権利であり、パブリシティ権とは一種の財産的な権利として、特に有名人等に備わるもので、その人の商業的価値に対してそれを勝手に使用されないという権利です。ご質問の件のような場合、パブリシティ権を考える必要があります。
日本では、亡くなっている有名人のパブリシティ権について、法的に明確になっておりませんが、海外の場合は、法的に保護をしている国があります。米国では、肖像権については州毎の法制となっていて、州によっては肖像権を認めている州もありますし(保護期間は州によって異なります)、法制がされていない州においても容易に訴えを起こすことが可能であり、故人の肖像権が認められる傾向にあります。
問題は、日本の企業が日本国内で、亡くなっている海外の有名人の写真等を使用する場合にどうなるかということですが、この場合、法律は日本の法律が適用されることになるわけですが、このような海外の有名人の遺族等が日本の裁判所に訴えたという事例がありませんので法的にはグレーな部分です。ただ、過去の事例では、遺族のエージェントが、利用方法が広告の場合はその代理店及びスポンサー、商品の場合はメーカー等にクレームを入れてきたことがあります。法的にグレーな部分ではあるものの、遺族ないしそのエージェントに利用の対価を支払ってその許可を得ておいたほうが無難です。
現在(平成17年5月)、ご質問のマリリン・モンローやジェーム・スディーンはCMG Worldwide, Inc.(※)が肖像権を管理していますから、こちらに許諾を得ておくべきということになります。また、これら多くの肖像権の利用許諾について、日本では、オリオンプレス(※)等が代行していますので、そちらに問い合わせをするのがよいかと思います。
※ CMG Worldwide, Inc.
  URL:http://www.cmgww.com
※ オリオンプレス
  電話03-3295-1400(東京営業所)
  URL:http://www.orionpress.co.jp/


契約に関する質問


著作物をアーカイブし、利用するための許諾を権利者の方から口頭でいただいたのでが、書面で印鑑や署名がないと契約自体効力がないものなのでしょうか。
 

契約の基本原則として契約自由の原則があります。この中には契約締結方式の自由があり、どのような形式をとるかは当事者の自由であり、双方の合意があれば、口頭であってもそれだけで有効に成立するということを意味します。したがって、双方が契約書に調印しなければ契約が有効に成立しないというものではありません。ただ、一般的には契約書を作成し、調印をするということを行います。これは契約の存在や内容に後々で争いにならないよう双方の合意内容を明確な形で残しておくことによって、客観的な証拠とすることを目的としているものです。
デジタルアーカイブでは、著作物を所有あるいは権利を保有されている方が特に個人である場合は契約書にどのような内容を記載し、またそれが適切なものであるかどうかの判断をすることが困難であることから契約書の取り交わしを行わないケースが多い実態があるかと思います。上述のとおり契約は口頭でも成立しますが、後々のトラブルを防ぐという観点からは契約書を取り交わしておくことが望ましいと思われます。



他人の著作物をデジタルアーカイブし、ネット掲載等行うための許諾を受けたいと思うのですが、契約において、どのようなことを取り決める必要があるでしょうか。
 

当協議会が平成13年3月に発行した冊子「デジタルアーカイブ<権利問題と契約文例>」(当協議会のホームページ、
http://www.jdaa.gr.jp/public/kenri/kenri.htmlでもご覧いただけます。)において、デジタルアーカイブを構築・運営する際の契約文例を紹介しております。契約文例には、(1)デジタルアーカイブする対象物に著作権が存在する場合において、著作権者との間で当該対象物につきデジタルアーカイブの構築・運営をすることについて許諾を得る契約、(2)著作権の存否に係わらず、対象物を所有、管理する方との間で同様の許諾を得る契約、また(3)対象物をデジタルアーカイブした画像データを第三者に利用させる場合の利用許諾契約を紹介しております。
ご質問にあります他人の著作物をアーカイブしてネットに掲載する場合には、(1)の契約書文例が参考になると思います。では、具体的にどのような内容を契約で取り決めるかということについてですが、一般的には次のような項目について、取り決めをしておくべきであると考えられます。
 
・対象著作物の特定
・デジタル化しアーカイブすることおよびデジタル化した画像データをインターネットで利用することの許諾について
・画像データを第三者に更に利用許諾する場合その許諾について
・利用許諾の対価が発生するか否か、発生する場合はその金額及び支払方法
・デジタルアーカイブにおいて新たにデータベース等の著作物が制作されることが想定される場合、当該著作物の権利帰属について ・著作権表示について
 
次に、当該著作物について著作権者とは別に保管、管理している博物館等が存在する場合は、そことの間で(2)の契約文例のような契約も併せて検討する必要があると思われます。
なお、ここで挙げた項目や契約文例は一つの例ですので、実際には、個々の事案毎に必要な条件を著作権者と協議して取り決める必要があります。


外部の業者にデジタルアーカイブ・データベースを制作させたのですが、契約上何に注意すればよいのでしょうか。


通常、制作委託するデータベースの仕様や制作委託料などの取引条件があるでしょうから、それを十分協議して取り決めることになりますが、制作委託したデータベースの著作権の取り扱いについても十分注意すべきです。
まず、制作されたデータベースが著作物であるか否かと言う問題がありますが、情報の選択や体系的に創作性が認められれば、データベースの著作物であるということができます。(基本的には著作物であると考えて契約しておくべきでしょう。) 次に、発生した著作権が誰に帰属するのかという問題があります。データベースに限らず著作物を制作した者が著作者として原始的に財産権としての著作権および著作者人格権(作品を制作した著作者の人格を尊重して著作者に専有の権利として与えられる譲渡不能な権利であり、(1)氏名を表示する権利、(2)公表する権利、(3)他人に勝手に著作物を改変されない、同一性を保持する権利、からなります。)を専有することになりますから、データベースが制作された時点で原始的に制作を請け負った業者に著作権及び著作者人格権が発生することになります。
したがって、このようなデータベースを自由に社内閲覧させたり、Web上に公開したり、といったように自由に利用することができるよう望むのであれば、契約で当該データベースの著作権の譲渡を受けておくか、あるいは、使用許諾を受けておく必要があります。また、当該データベースを自ら改変するようなことも考えられるのであれば、契約において当該業者が著作者人格権に基づく権利主張をしないような取り決めもしておく必要があります。
他には、例えば、制作委託において発明や考案等が生じた場合の工業所有権の取り扱いや、制作されたデータベースにバグ等の瑕疵が生じた場合の補修、修理の取り扱い等も一般に規定すべき項目としてあげられます。ただし、当然個々の事案によって必要な条件も異なると考えられますから、その都度協議して適切な条件を取り決める必要があります。



雑誌の紹介誌を出版しています。ある出版社の雑誌を紹介するためにその雑誌の表紙を紹介誌に掲載することについて出版社から許諾を受けているのですが、この雑誌の表紙をインターネットで紹介することも可能なのでしょうか。


雑誌の表紙もさまざまですが、図案やイラスト、写真、ロゴ等が含まれるのが一般的であり、いわゆる著作物としての創作性を有するのが一般的であると思います。したがって他の著作物同様、著作権者の許諾なしに無断で複製、頒布、販売することはできないことになります。ここでは雑誌の表紙として許諾を得たということですから、出版社とはあくまで雑誌の表紙として利用する範囲において許諾をするという契約がなされたと解釈できます。出版社の許諾意図はインターネットに掲載するということを想定していないことになりますから、契約上利用許諾の範囲を超えているということになります。したがって、インターネットへの掲載にあたっては、別途その許諾を得るための契約が必要になります。
また、ここではこの雑誌の表紙の著作権が出版社にあるという前提でお話をしていますが、出版社もこの雑誌に載せたイラストや、写真について、制作者や撮影者から雑誌の表紙への掲載について許諾を受けている場合も考えられます。そうしますと、インターネット掲載の承諾を出版社から得るのとは別に、自らこれらのイラストや写真の著作者に直接インターネットへの掲載について許諾を得る必要が生じます。さらに、ここでは著作権に限定した話をしておりますが、イラストや写真の中に人物が含まれている場合は、肖像権を配慮して当該肖像の人物あるいは遺族に同様の許諾を得る必要があることにも注意が必要です。(これらの人から、既に出版社が相応の許諾を受けていれば問題ありません。貴社としては出版社に権利の保証をさせることも考えられます。)



デジタルアーカイブ推進協議会ではデジタルアーカイブに伴う契約書を作成されたとのことですが、それはどういう利用が可能なのでしょうか。
 

当協議会では、Q33でもご紹介しましたとおり、権利者(著作権者、所有者)、デジタルアーカイブ構築・運営者双方の立場で検討を加えた契約文例を3類型、すなわち(1)著作権者とデジタルアーカイブ構築・運営者との間の著作物利用許諾契約書、(2)所有者とデジタルアーカイブ構築・運営者との間の使用承諾契約書、及び(3)デジタルアーカイブ構築・運営者と第三者たる利用者との間の利用許諾契約書を用意いたしました。
この契約文例には、一般的にこれらの契約に含ませるべきと思われる項目が盛り込まれており、皆様がデジタルアーカイブを構築・運営される際に、著作権者や所有者との間で締結される契約書や利用者との間で締結される契約書の参考としていただけることを目的としています。ただ、実際の現場で利用していただく場合は、個々のケース毎に状況が異なりますので、そのケースにあった契約項目と契約内容を当事者同士で十分に協議して決定していく必要があります。



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