2002年11月度DCAjセミナー実施報告
 

DICON2002&BCWW2002と韓国のコンテンツ制作状況

 
 
 講師

東映アニメーション(株)東映アニメーション研究所
デジタルアニメーション学科学科長
早稲田大学アジア太平洋研究センター 助手
鷲谷 正史(わしや まさし)氏  

尚美学園大学 芸術情報学部 情報表現学科
助教授
今間 俊博(こんま としひろ)氏


 2002年11月6日より8日までの3日間、ソウルのCOEXで、デジタルコンテンツおよび放送映像コンテンツの国際見本市である「DICON2002&BCWW2002」が開催され、韓国文化コンテンツ振興院(KOCCA)とDCAjは、上記見本市視察およびコンテンツ関連企業訪問ツアーを実施した。

 11月12日(火)、DCAjにおいて上記ツアーの報告会として標記タイトルのセミナーを、ツアー参加者の中から、DCAjが主催している「デジタル映像事業委員会(委員長:東京工業大学 中嶋正之教授)」の委員である鷲谷正史氏、今間俊博氏を講師に迎え開催した。

(1) DICON2002&BCWW2002

 2002年11月6日(水)〜8日(金)にソウルのCOEXコンベンションホールにおいて、デジタルコンテンツおよび放送映像コンテンツの国際見本市である「DICON2002&BCWW2002」が開催された。
 「DICON2002&BCWW2002」の会場となったCOEX
 
 主催は韓国文化観光省で、207社(韓国145社、14カ国)の出展があった。出展企業は韓国が7割を占めていたが、海外からは日本、イギリス、マレーシアなどが続いていた。 
出展者としては、韓国、日本、UKなどの放送局、台湾、マレーシアなどからのバイヤー、企画会社・キャラクターのマーチャンダイザ、オンラインゲームメーカーを中心としたゲームメーカーなどであった。
DCAjは、過去の採択事業等の成果発表の展示を行った。また、DCAjの会員企業としてシャープ株式会社が、専用メガネが不要で、平面表示(2D)と立体表示(3D)を切り替えて利用することができる「3D液晶ディスプレイ」の展示を行った。

 日本のテレビ番組は、コミックスを原作としていることが増えている。コミック、アニメで、先行認知、リッチコンテンツ化がなされているため、海外への進出もしやすいように思えた。
 ただし、コミックスを尖兵として、リッチコンテンツを成功させる事例は日本だけのものではない。例えば「花より男子」というマンガは、東映系で映画化され、東映アニメでアニメ化された。日本での人気は一息ついた感があったが、台湾でドラマ化をされた結果、香港・中国・シンガポールなど中華圏で大人気となった。中国本土では、加熱した人気を心配した政府の鶴の一声で、放送中止になるほどであった。この事例のように、コミックによる先行認知や映画やアニメによるリッチコンテンツ化は、必ずしも日本の企業にだけ有利に働くというわけではないということもいえる。

 注目すべき展示としては、「スタープロジェクト」という韓国発コンテンツのスターを発掘するという目的で、映画振興委員会が、版権を担保に20億ウォンを貸与するものである。103社の応募があり5社(アニメ3、キャラクター1、オンラインゲーム1)を選定した。
選定作品のひとつとして、「ワンダフルデイズ」を紹介する。

 「ワンダフルデイズ」ちらし

 この作品は、250余編の広告を撮影し「チトス」を始めとするアニメ−ションとCG、実写等の合成を実験したことのあるキム・ムンセン監督のデビュー作。情報通信部傘下のソフトウェア振興院と韓国色彩研究所の製作支援を受け、アニメ−ションとしては初めて、映画振興公社の版権担保融資対象に選定された。2003年3月に日台同時公開予定で、日本のエドマーク社とミニマム・ギャランティー250万ドルと劇場、ビデオ、DVDなどで得る収益の50%を受け取る条件で「ワンダフルデイズ」の日本内版権契約を結んだ。これはミニマム・ギャランティー200万ドルに収益を5対5で分ける条件で日本に輸出された「共同警備区域JSA」よりもいい条件である。

 DICONを通じて認識した韓国の国・企業がコンテンツ市場に対してどのような戦略を持っているかについて以下のようにまとめた。
 韓国のコンテンツビジネスを大きく特徴付けているのは、まず人気のあるキャラクターを開発しようというモデルである。フラッシュアニメを公開し、認知が広まり、人気が出たところで、ぬいぐるみなどのキャラクターグッズを販売して利益をあげたマシマロはその好例といえる。サンリオのキティちゃんは、もっとも成功した例といえるかもしれない。
 韓国をキャラクター発モデルというならば、日本はコミック発モデル、アメリカは映画発モデルであると思われる。
 これらのモデルの中では、韓国のキャラクター発モデルが、もっとも、ネットコンテンツと親和性が高いといえるだろう。
 韓国のコンテンツビジネスは、日米との直接対決を避け、ニッチな部分をうまく突いている。ドラマをアジア方面に売り込み、アニメをヨーロッパへ売り込んでいる。規模・金額は大きくないと推測されるが、確実に存在感はある。
 また、韓国の特徴としては、スタープロジェクトなどの助成、各種の規制に端的に現れているとおり、政府の関与姿勢が鮮明だということや、他の国々ではインフラ的に困難なオンラインゲームや、著作権処理的に障害の大きいインターネットブロードキャスティングなどのネットの活用がいち早く進んでいることも挙げられる。

 日本への提言としては、日本のコンテンツビジネスは、その裾野の広さ、底力の強さに自信を持ってもらいたい。デザインフェスタ、コミックマーケット、ワンダーフェスティバルなどに集まっているアマチュア・セミプロのコンテンツはすばらしくレベルが高く、韓国のトップレベルのものに比べても遜色ないものが豊富に揃っている。しかし、日本で
は、世の中に出るまでの要求水準・敷居が高く、メディアやフォーマットが足かせになっているように思われる。メディアが多チャンネルとなってコンテンツが不足気味であり、アマチュア用の映像製作機器でも十分なクォリティが出るのだから、こうした若い人たちへもっとチャンスを与えて欲しいと思う。
 
(2) 企業・施設訪問1(DR MOVIE)
 

    DR MOVIEの鄭社長(写真右)
 DR MOVIEは、1990年11月創業、資本金7.25億ウォンの会社で、ジブリのOEMを請け負ったことで有名となった。
 DR MOVIEの社長は、韓国の下請け企業が嫌がる『茶色のカット袋』[マッドハウスの作業]を進んで引き受けたことを成功の要因と考えていた。
 マッドハウスのアニメは、クリエーターのクリエイティビティやオリジナリティ・プライドを刺激される内容であり、技術の向上、クリエーターの定着などの副次的効用があり、結果的に高い評価を得ることができたとのことであった。
 DR MOVIEでは、売上げのほとんどは、日本とアメリカなど国外からのOEMに依存している。アメリカや日本の映像製作プロダクションの多くは赤字なのに、やっていけるのかという点については、DR MOVIEでも危機感をもっており、原作・キャラクタをネットで確保するためFaper=Flash + Paper[Flashによる新聞]という試みを開始していた。これはフラッシュのアニメを、ネット(www.faper.co.kr)や携帯電話で無料で見ることのできるサービスであり、今後も有料化せず、認知度を高めてマーチャンダイジングで回収することを目的としているとのことであった。
 ディズニー(映画)から手塚治虫(テレビ)に受け継がれたアニメの進化から推測したネットのアニメのスタイルは、少ない枚数の絵による表現で、頻繁に更新され、短く、予算規模の小さいものになるはずで、Faperは、まさにこのスタイルと言うことができる。
 
(3) 企業・施設訪問2(NC SOFT)
 

「NC SOFT」内で、ゲームマスターがゲームをプレイしている様子
 NC SOFTは、1997年11月創業、資本金2億3900万円の会社で、オンラインゲーム「リネージュ」で有名となった。2001年度の韓国オンラインゲームの売上高によるシェア比で、NCSOFTは、42%を占めて首位となっている。
 韓国でオンラインゲームへの課金をスムーズに行うことができたのは、PC房(ネットカフェ)への課金という制度(この11月からは、日本でも、同様の制度が始まる)がうまく機能したからだとNC SOFTでは分析していた。また、一旦軌道に乗ると、徐々に個人による自宅からのアクセスが増えていくとのことであった。

 「リネージュ」は、MMORPG(多人数オンラインRPG)と言われるジャンルに属するゲームで、同時に30万人がプレイ可能である。アクティブユーザーは320万人で、237台79セットのサーバーが稼動している。サーバーは3台で1セットで、OSはWindowsとのことだった。ゲームの特徴としては、城攻略型のシステムで、シンプルで直感的なゲームインターフェースを持ち、オートマチックにゲームをアップデートする。また、ヴァーチャルコミニュティ用に多様なチャットモード持ち、3〜6ヶ月で新しいエピソードをリリースしている。売上は順調に伸びており、今期は156億を売り上げると予測している。
 「リネージュ」は国民の20人に1人がプレイするほど人気が有る。その結果、現実のお金でアイテムをやりとりしたり、ゲームの遺恨による殺人や、熱中による衰弱・心臓麻痺死が起こったりした。その結果、政府より18歳未満禁止措置が言いわたされており、それに対して、現在抗弁中とのことであった。

 オンラインゲームは先行するものも多数あったのに、なぜ、リネージュは成功したのであろうか。
 ひとつには、韓国の通貨危機に伴って、流動化した優秀な人材による高度な技術を活用できたということが挙げられる。アレアハングルという国民的ワープロを作ったメンバーや最高学府ソウル大学のマスター・ドクターが開発には関わったとのことである。
 また、多くの人がプレイすることによって、「みんながプレイしているから」というネットワーク効果が働いていることも見逃せない。
 また、リネージュは、ゲームの内容以外の支払方法やサポート方法などは、各国の子会社や合弁企業などを通じて、いち早くきめ細かい現地化を行っている。こうしたサービスがユーザーに評価されたのだと思われる。またバックグラウンドでは、多くの他のオンラインゲームのサーバー管理やサポートなどもそれぞれの国で行っており、これらを通じて多くのノウハウが蓄積していると見ることもできる。
 日本のオンラインゲームの今後としては、嗜好が多様化している中、一極集中的なヒットは困難なのではないかと思われる。実際、アメリカと日本では韓国・台湾ほどの爆発的なヒットにはなっていないとのことであった。
 開発・運営・サポートと、レイヤーを分けることが成功につながったと見るならば、それは、車台・エンジン・デザインなどの開発をさまざまな国々・別々のブランドで行っている自動車産業のありように近づいていると見ることができるのではないかと思われる。
 日本も日本ならではの分野において、将来のオンラインゲームの国際協業に参画できることがあるのではないだろうか。
 
(4) 企業・施設訪問3(ソウルアニメーションセンター)

ソウルアニメーションセンターは、ソウル市がマンガアニメ産業を支援するために1999年5月に設立した。韓国では、アニメ・マンガの流通が少なく、時期を逃すと手に入れにくく、散逸しやすいことが設立の趣旨とのことであった。
設備としては、劇場、5つの展示室、視聴覚室、教育施設、インキュベーションセンターなどからなる。
インキュベーションセンターには、設立して間もない会社やセミプロの方々が利用する施設で、録音スタジオや編集室などの設備が揃っている。入居は、企画書や将来性、業務内容を勘案して決定され、2年で入れ替えが行われる。3期目をこの冬募集とのことで、第1期の会社からは、3社ほどが成功したとのことである。
 
(5) 企業・施設訪問4(PC房)

 PC房(ピーシーバン)とは、日本のマンガ喫茶のようなもので、今回は、サイベリアという会社のPC房を訪問した。
 サイベリアは、韓国内にPC房を800店舗ほど展開している。当初はフランチャイズ方式でPC房を運営していたが、現在ではフランチャイズ方式を取らず、開発したソフトウェアを利用してもらうことで利益を上げているそうである。
 サイベリアは、日本でも2〜3箇所運営を行っているとのことである。
 
<事務局から>

 今回のDCAjおよびKOCCA主催「DICON2002&BCWW2002視察ツアー」には、14名の方にご参加いただきました。
 上記セミナーにおける鷲谷先生、今間先生のご報告のとおり、韓国のデジタルコンテンツ産業発展のために見本市を開催し国を挙げてアピールする姿勢や、コンテンツ市場に対する企業の戦略、意気込みなどを肌で感じるツアーになったのではないかと思います。
 今後も、特徴のある視察ツアー、セミナーを企画し、当協会のメールニュース等で皆様にお知らせしていきたいと思いますので、奮ってご参加下さい。

(交流グループ 須藤 智明)